「この度、ソフトバンクコマース&サービスとパートナーシップを組み、ソフトウエアプラットフォームで日本市場にドローン・デプロイが参入することとなりました。ドローン・デプロイはドローン企業のひとつではありますが、ドローン本体は作っていません。ハードウエアではなくソフトウエアに注力した企業です」。

 こう話すのはドローン・デプロイCEOのMike Winn氏。もともとGoogleに勤めていたWinn氏は、2013年にアイルランドからアメリカに移住し、大学時代の友人3人とともにサンフランシスコでドローン・デプロイを創業した。「2012年にDJIのPhantomが発売されたこともあって、これからソフトウエアの面でもドローン向けの市場が伸びるのではないかと思った」からだという。その後5年でドローン・デプロイは急成長を遂げ、現在では100名を超える企業となっている。

ドローン・デプロイについて

 ドローン・デプロイは、ドローンの自動航行、データ収集、そしてデータの分析をワンストップで行えるソフトウエアプラットフォームだ。Winn氏によるとドローン・デプロイは2013年の創業以来、ブラウザベースのNDVI(植生指標)モニタニング機能や、リアルタイムの体積分析といった、常に世界初となる機能をリリースしてきた、ドローン向けソフトウエアのリーディングカンパニーだと自負する。また、ソフトの進化させてきただけでなく、すでに多くのユーザーに利用されてきていることも付け加える。
「ドローン・デプロイにはすでに3万人のユーザー、3000社を超える企業が利用しており、38万カ所を超える地図が作成されています。また、ドローン・デプロイはプラットフォームでもあり、その上で動作するアプリは78を数えるなど、着実に実績を積み上げてきています」。

ドローン・デプロイのもつ機能

 ドローン・デプロイは「飛行」「処理」「分析」という3つに加えて、利用ユーザーのアクセスコントロールといった利用管理の機能を備えている。現在、DJIのMavic Pro、Phantom4シリーズ、Inspire1、Matriceシリーズの4機種に対応しており、ドローン・デプロイを使ってこれらの飛行計画の作成、および実際の飛行管理が可能だ。「フライトは本当にボタンひとつを押すだけで、利用者がほとんどコントローラーを操作することなく自動的にミッションを行える」(Winn氏)という。
 もうひとつの機能が「処理」で、ドローンが撮影した写真をもとにオルソモザイクや3Dモデルの作成をはじめ、さまざまなフォーマットに画像を変換できる。ドローン・デプロイはこの作業を、飛行と同時にリアルタイムで行うことができる「ライブマップ」機能を備えているのが大きな特徴だ。

 これは、ドローンからコントローラーに伝送される720Pの映像をもとに、iPhoneやiPadのようなモバイルデバイス上で、オルソモザイクを逐次作成するというもの。インターネットを通じてクラウドなどの支援を得ることなく、モバイルデバイス単独で処理ができるのが、ドローン・デプロイの最大のメリットだ。これはiPhone XやiPhone 8のようなモバイルデバイスのGPUが大きく進化したことによって実現できたものだという。もちろんモバイルデバイスに通信環境があれば、作成した地図データを共有するといったこともできるのは言うまでもない。

 「ライブマップによって、ドローンを飛行させるのと同時にオルソモザイクの写真地図を瞬時に見ることができます。ほかの製品であれば、ドローンが撮影した写真データをオフィスに持ち帰り、PCに取り込んで処理しないといけません。しかしドローン・デプロイであれば、ドローンを飛ばす現場ですぐにそれを見ることができるため、ユーザーはすぐに行動に移ることができます。現代のビジネスにおいてこのスピードはとても大事なことではないでしょうか」。

 3つめの機能となるのが「分析」だ。これはオルソモザイクや3Dモデルのデータをもとに、撮影した場所の長さや面積、体積ができるほか、地形を等高線や色で表現したり、さらにNDVI(植生指数)として表示する、といった様々な観点でデータを分析することが可能となっている。
「ドローン・デプロイはさまざまな業種で使われていますが、例えば建築分野では、土地造成の段階ではその高低差や土量を計算したり、資材の稼働を毎日確認したりといったことに活用できます。また、作業の昨日と今日の違いがわかるような機能も実装しています」。

ドローン・デプロイのもつ機能

 さらにドローン・デプロイは、こうしたデータをアプリやAPIに受け渡して活用するためのプラットフォームであり、「エアマップやオートデスク、ジョンディアといった企業とアプリマーケットで多くの協業を実現しており、すでに180を超える国で利用されている」(Winn氏)という。

 「ドローン・デプロイのマーケットで一番大きいのはやはり北米です。その次がヨーロッパということになります。また、業種別でみると、建築業がその3割を占めており、次いで農業、測量、不動産といった分野も伸びてきていて、今後もこうした業種のメジャーな企業と組んでビジネスを展開していくつもりです」。

Winn氏が語るドローン・デプロイの展望

 ドローンソリューションの中でもソフト面にフォーカスしたドローン・デプロイ。ハードはDJIのような既存のものを利用しており、「ハードウエアの進化に合わせてドローン・デプロイ自身も進化させていく」とWinn氏。
「現在、ドローン・デプロイが対象にしているのは、上空から写真を撮影するドローンです。しかし今後はビルの上からではなく真横から撮影するようなドローンが出てきます。さらに、自動飛行の技術が確立されるようになると、今は写真を撮るだけですが、例えば農業なら写真を撮りながら農薬散布をするドローンといったものが登場するでしょう。そういった中で、今後はトラクターを自動で動かすようなシステムも手掛けていきたいと考えています。そういう意味でドローン・デプロイのプラットフォームは“Future Proof”、つまり将来を見据えたつくりとなっているのです」。

日本での展開

 このドローン・デプロイの日本における窓口となったのが、ソフトバンクコマース&サービスだ。すでにさまざまなドローンの販売を手掛けている同社では、急成長を遂げる日本のドローン市場を見据えて、今春から産業用ドローンソリューションのひとつとして、ドローン・デプロイを扱うこととなった。
 特に今年はレベル3の目視外飛行が実現するという流れの中で、ソフトバンクコマース&サービスでは、広い圃場や建設現場で目視外の自動飛行が行われるようになってくると見据える。この自動飛行の範囲が広がるのに合わせて、アプリケーションの重要度が高まってくる。そんな日本市場を見据えて、新たにドローン・デプロイをリリースするというわけだ。
 日本市場に導入するにあたり、ソフトバンクコマースではドローン・デプロイのダッシュボードを完全日本語化。また、マニュアルも日本語化すると同時に、メールおよび電話でのサポートも日本市場向けに日本側で行っていくという。

日本展開に向けた対応例
日本展開に向けた対応例

 ドローン・デプロイはあくまでもソフトウエアプラットフォームであり、実際の利用シーンでよりユーザーをサポートするのはアプリだ。このアプリを使えるエコシステムがドローン・デプロイのもうひとつの特徴だといえる。例えば飛行エリアを表示し、フライトプランを作る上で制限をかけるといった、ドローンの飛行に関わるものから、ゴルフ場を管理するためのアプリ、森林の樹木をカウントするアプリなど、英語圏の市場向けには、ドローン・デプロイ上で動作するアプリがすでに数多くリリースされている。しかし、今のところ日本市場向けの日本語アプリは用意されていない。ソフトバンクコマース&サービスでは今後、日本市場向けのアプリを開発するパートナーをリクルートしていくといい、さらに日本で作ったアプリを海外展開していきたいとも今後の展望を示している。
 今回、ソフトバンクコマース&サービスがドローン・デプロイを日本市場にリリースするのに合わせて来日したWinn氏。前述のとおりすでに海外では多くの国、ユーザーに利用されているが、海外からはとかく閉鎖的といわれる日本という市場をどう見ているかを質問すると、決してハードルは高くないという。
「確かにすでに多くの日本のユーザーを獲得している同じようなソフトウエアはあります。ただ、ドローン・デプロイはとにかく使いやすさにフォーカスして作っていることもあって、これまで日本語版はありませんでしたが、英語版を利用していらっしゃる日本のユーザーも少なくなりません。そこが一番の強みだと思っており、これからソフトバンクコマース&サービスと一緒に日本市場に展開することで、さらに伸びが見込めると思っています」。

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 ドローンを飛行させるという点においては、航空法が適用されるなど、やはり規制が厳しい日本。この点については、Winn氏と一緒にドローン・デプロイを創業し、現在バイスプレジデントであるScott Lumish氏が次のように解説する。
「けっして日本だけが厳しいと思ってはいません。確かに日本では、商業用ドローンというものがまだまだ実用的に使われてないこともあり、それがどんどん使われるようになることで、ルールが現実に即した形で改正されていけばいいのではないでしょうか。事実、ここのところ、セキュリティ上のレギュレーション変えたりもしているので、今後ドローンを利用するうえで、良い方向に行くのではないかと思っています」。
 日本でリリースされるドローン・デプロイは、1地図あたりの写真枚数や2D地図の解像度、さらにはクラウドの処理速度といった機能・性能の違いで「Pro」「Business」と、さらにきめ細やかな対応が受けられる「Enterprise」という3つのバージョンがある。また、トライアルとして無料で利用できる「Explore」版も用意されている。「今はやはりトライアル版のユーザーが多いのですが、今後は1社1アカウントではなく、10、20、100アカウントを導入するような企業に向けてアピールしていきたい」とWinn氏は語る。

今後の展望

 最後にWinn氏は、ドローン・デプロイを日本で展開するにあたり、次のように抱負を語ってインタビューを締めくくった。
「日本はドローンというジャンルに置いても、大きなマーケット持っていて、その可能性も大きいと思っています。その中でドローン・デプロイはベストを尽くすことで、日本のユーザーがビジネスで成功できるように頑張りたいと思います」。