屋内点検用ドローン「ELIOS」や警備用ドローン「T-FREND」を使ったサービスを提供するブルーイノベーションは、12月5日に保険とドローン飛行支援地図サービスを組み合わせた「SORAPASS care」をリリースした。これは2016年5月から同社がWebサイトとして提供している飛行支援地図サービス「SORAPASS」をスマートフォン用アプリの形にして、さらに今実際に飛行しているドローンの位置などの情報がリアルタイムで見られるようにしたもの。さらに、このアプリに損害保険ジャパン日本興亜が提供する損害賠償保険を付帯することで、事故の予防と事故後のケアをカバーするサービスだ。
ブルーイノベーションでは2015年12月10日の航空法改正を受けて、その1か月後からSORAPASSの試験運用を開始。同サービスは地図上に人口集中地区や飛行場といった飛行禁止区域を表示するとともに、上空の風速・風向や雲量といった気象情報や立体地図を提供(気象情報と立体地図の機能は有料)するほか、飛行申請をサポートする機能を提供している。2016年5月に正式なサービスを開始し、2018年11月現在で約33000人の会員を有するまでになっている。SORAPASS careの説明に立ったブルーイノベーションの熊田雅之専務取締役によると、「日本のドローンパイロットの数は約6万人ともいわれており、その中でSORAPASSの会員は3万人と、多くの人が利用していることがわかる」という。
今回、そんなSORAPASSをスマートフォンのアプリという形で提供し、さらに保険を付帯するサービスとしたのは、「事故を未然に防ぐことと事故の被害を最小限にとどめること」(熊田氏)のためだ。まず、“事故を防ぐ”というためには、SORAPASSをアプリにしてパイロットが飛行現場で使えるようにした。このことで、スマートフォンのGNSSから位置情報を取得し、その場所をアプリがサービスに送出する。アプリの地図上では自分の飛行エリアとしてその位置が表示されると同時に、同じように操作した他の会員の飛行情報が地図の上に表示されることで、会員が飛ばしているドローンのフライトエリアの干渉と、機体の衝突による事故を未然に防ぐことができるという。
もうひとつの“事故の被害を最小減にとどめる”という部分は保険が担うことになる。この保険は損保ジャパン日本興亜がSORAPASS careの会員向けに提供するもので、ドローンの業務利用時とホビー利用時の両方をカバーするのが大きな特徴だ。業務利用に対しては施設賠償責任保険が、ホビー利用の場合は個人賠償責任保険が適用され、事故につき1億円の基本保証のほか、業務利用の際には作業対象物保障、人格権侵害賠償、事故対応特別費用、操縦訓練費用、第三医療費用の支払いが受けられる。保険の主体はSORAPASS careの加入者および加入者が所属する法人および個人事業主であり、対象となる機体は特定しない。
SORAPASS careはアプリの形でサービスが提供され、iPhoneはAPP Storeから、AndroidスマートフォンはGoogle Playからダウンロードできる。サービスへの加入はアプリから行う形で、サービス利用料金は年額5000円となっている。この利用料金の中には賠償保険の保険料が含まれており、また、Web版のSORAPASSでは有料だった気象情報や3D情報の提供も受けることができる。
今回の発表会では冒頭に一般社団法人日本UAS産業振興協議会の千田泰弘副理事長がスピーチを行い、「現在のドローンの飛行は原則として目視飛行を前提としている。目視の場合、操縦者とドローンの距離は500mが限界といわれており、そういう意味でもSORAPASS careは半径300mの範囲にいるほかのドローンの位置を共有できるためとても意義がある」と紹介。また、「今年度からレベル3の目視外飛行が始まっているが、目視飛行と目視外飛行では技術や法制度も違ってくる。そのため今後はSORAPASS careの中に、目視と目視外で飛ぶドローンの情報が共有されるといった進化するものと考えている」と期待を語った。
また、SORAPASS careの保険部分を担う損保ジャパン日本興亜の秋保宏之企画開発部長も登壇。同社では2015年7月からドローン専用保険を発売しており、ドローンの機体のリスクや賠償リスクに対して近年非常にニーズが高まっているという。こうしたニーズを受けて、今回日本で初めての業務とホビーの両方をカバーする形の保険をSORAPASS careに提供することとなったと紹介。現在は1事故につき1億円の基本保証だが、今後ニーズがあればより大きな補償も検討する必要があると説明した。
「目標としてまずは3000件の加入を目指していきたい」というブルーイノベーションの熊田専務。「SORAPASS careは一人でも多くのドローン操縦者が加入して、自機位置の情報を発信することで安全性が高まる。一人でも多く加入してもらって使ってもらうことが大事なだけに、この内容の保険が付いて年額5000円というサービスに魅力を感じて利用してもらいたい」と話した。