飛行数は1000機を突破!ドローンショーの機体数はどこまで増えるのか?

──御社では最大何機のドローンショーを開催できるのでしょうか?

佐々木氏:試験飛行では3000機の飛行を成功しました。実際にイベントとしてドローンショーを実施した最高台数は1500機です。

──中国では1万機を飛行させ、ギネス記録を取得したと発表がありました。

佐々木氏:機体数を増やすことはそれほど難しいことではありません。当社が提携しているハイグレート社も「1万機の飛行は技術的に可能です」と言っています。一方、ビジネスとして考えた場合、費用対効果的には1万機を飛ばす必要はありません。テレビの4K放送同様に、一定以上の解像度を超えると差があまり感じられなくなります。ドローンショービジネスはギネス記録のような話題作りが目的ではないので、コストパフォーマンスと依頼の要望のバランスが重要です。

──機体数が増えることで機体の制御も難しくなるのでしょうか?

佐々木氏:ドローンの制御は100機でも1万機でもパソコン1台で行い、技術的に難易度が大きくあがるわけではありません。ただし、台数が多いと通信接続でエラーが発生したり、アニメーション制作の修正が増え、工数が増えてしまいます。一方、アニメーションの表現の自由度が高まるメリットが挙げられます。

写真:屋外でドローンを配置する様子
現場の運営は現場監督とオペレーター2名、機体配備とバッテリー交換などはアルバイトらが担当している。

──何機くらいの依頼が多いのでしょうか?

佐々木氏:現在の日本では500機でも大規模と言えます。今後は、1000~2000機程が一般的なドローンショーになるのではないでしょうか。世界では、1000~2000機のイベントが多く見受けられます。

「大規模イベント」で「クリエイティブ」を追求する

──御社の事業戦略上、重視していることを教えてください。

写真:話をする佐々木し

佐々木氏:ドローンショーを実施する場所は非常に重視しています。また、「大規模なイベントで飛ばす」ことに、非常に価値があります。広告主も、知名度がある花火大会や、来場者が多いイベントで実施したいと考えており、有名な花火大会で5年間のスポンサー契約を結ぶことで毎年実施できるように取り組んでいます。

 もうひとつがクリエイティブです。同じ1000機のドローンショーだとしても、ハイクオリティに仕上げるには、アニメーションの品質、表現力や演出が必要になります。そこで、当社は外部の複数の演出家と連携しており、ヒアリングした要望を踏まえてアサインしつつ、魅力的なストーリーを作り上げています。また、アニメーターの採用にも力を入れています。アニメーターは、3DCGソフトを使ってモチーフを描き、最後の飛行ファイルの書き出しまで行います。その多くはゲームのキャラクラーを作っていた方や、不動産のパースやCG映像を作っていた方などが活躍しています。

──花火大会をドローンショーに置き換えるというトレンドもあり得るのでしょうか?

佐々木氏:世界的にはSDGsの文脈でドローンショーが選ばれることも多くなっています。一方、花火大会は日本の伝統であり、花火大会を持続可能にするためにドローンショーを活用いただきたいと当社は考えています。私自身、花火大会で有名な秋田県の出身ですが、コロナや物価高騰の影響で協賛金が集めづらくなったという話を聞きます。今までの花火大会は、協賛しても社名の読み上げやパンフレットの記載のみで、PR効果を得にくい仕組みでした。ドローンショーを導入して、協賛企業のロゴを出すなどの新しい手法を用いることで、多くの企業に「これなら協賛したい」と言ってもらえるようになりました。

──スポンサー企業からの評価はどうでしょうか?

佐々木氏:「他の施策に比べ、ドローンショーは最高クラス」と評価をいただくことが多いです。広告がスキップされる時代に、ショーのために多くの人が集まり、15分間釘付けにしてしまう。さらには感動して動画で拡散してくれる。ドローンショーは本当に顧客の体験価値が非常に高いプロモーションだと思います。

“LED以外”のドローンショー確立と、アニメーションでの海外進出

──8月には、日本ドローンショー協会が設立されました。目的や活動内容を教えてください。

佐々木氏:現在の日本において、ドローンショーはルールが曖昧な部分があります。そこで、事業者同士や国と協議や相談をできる場として設立しました。また、ドローンショーで必要な監視員の人数、保安エリアの考え方、目視内・目視外の考え方、機体登録が全機必要なのかどうかなど、ルール作りについても一社ではなく業界団体として意見交換できるとよいと考えています。

──今後の展望についてお聞かせください。

佐々木氏:1つ目は、花火を搭載したドローンショーをはじめ、レーザー発光やカラースモークを使うなど、演出の幅を広げたいと考えています。夜間でのドローンショー開催に留まらず、昼の産業を目指すなど常に新しいことの開拓者でありたいと思っています。

10月に開催した1000機のドローンショーでは、花火搭載ドローンを用いたショーが行われた。

 そして、2つ目がアニメーションデザインの品質を活かした海外進出です。ドローンショービジネスに参入した時から「アニメーションが重要」だと考えていました。世界各国のドローンショーをリサーチする中で、規模では勝てないけれど「コンテンツ力なら勝機がある」と思うようになりました。

 世界でも1000機や2000機、大規模なものでは3000機以上も主流になったいま、これから先はコンテンツ勝負になります。日本にはゲームやアニメの文化があるので、アニメーターのスキルが非常に高く、職人気質な部分もアニメーションに現れてきます。実は、海外の企業からも「レッドクリフのアニメーションは品質がいい」と評価いただき、具体的な案件も動き始めたところです。今後は、アメリカ、中国、ドバイなど、ドローンショーが多く実施されている国のプレイヤーと連携して、「レッドクリフに頼めば高品質なアニメーションができて、世界中の国で同時にプロモーションできる」といったことも行う予定です。ドローンショーは地形データを使用せず空間情報で制御できるので、アニメーションのデータがあれば海外でも同じショーができるのです。今後は積極的に海外展開を目指していきます。