2019年2月27日、風力発電設備等の構造物をロープ高所作業を用いてメンテナンスを行うジョインテックとドローンの産業利用を行っている東北ドローンは、専門家の知見を用いて、ドローンによる風力発電設備のブレード点検を30基行い、損傷評価、補修見積り積算を行えるレベルで実施し、風力発電事業者様へ報告書の納品を行った。
 今後の展開として、風力発電ブレードの損傷データを基に機械学習を行い、AIによるサービスをアルビトと協業しサービスを展開する。

なぜ今、専門家とドローンが必要なのか

 国内における風力発電設備導入量は右肩上がり(図1)で伸びている一方、国内の風力発電設備の利用率は平均21%程度(※1)に留まっており、計画時の設備利用率と比べ実績としての設備利用率が低くなっているという課題がある。

 この設備利用率の低下は、日本の気候特性でもある雷被害(特に東北~北陸の日本海側)に代表される外的要因による損傷・故障による停止や補修・メンテナンスに要する時間が主な原因となっている。

 今後も設備の増加が期待される自然エネルギー(風力発電)においては、点検可能な期間内(季節)に“的確に無駄なく”維持・管理を行い、運転停止期間を最小限に抑えるための仕組みづくりが急務である。

※1:RPS 法ホームページ 平成 23 年度の認定設備容量、新エネルギー当発電設備による新エネルギー当電気供給量より算出

図1出典:新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 「日本における風力発電設備・導入実績」

今回の風力発電設備点検におけるポイント

 風力発電設備といった社会インフラに対してドローンを用いるため、「衝突してはいけない物」に対する「安全性の担保」、また、人手で行っていた際にはトレードオフとなっていた「点検作業に要する時間の短縮」と「点検精度の向上」の両立を実現した。

<安全性の担保におけるポイント>
・点検専用機材を採用することにより、離隔距離を保ち撮影が可能に。単独測位ではなくRTK測位によるホバリング性能の向上が可能となる機材を利用し高倍率ズームでもブレの少ない点検写真の撮影を行った。

・風力発電設備点検・補修の専門家の知見を用いることにより、実用に足る撮影データを取得するための専用カメラを選定し、正対目視点検と遜色ない精度が実現可能に。
・高精度ホバリング撮影の為、ドローン本体の移動距離を短くし、点検作業時間の大幅な削減が可能。
・1基3ブレードあたりの点検時間をブレード停止から1時間~1時間半程度で撮影を行える工夫として、ドローンを定点に据えカメラジンバルのみを動かす手法を採用し、移動による時間のロスを削減。

期待効果

 今回の実現内容に伴い、期待されるメリットは主に以下の通り。

<設備保有企業におけるメリット>
・予防保全型の維持管理が行えるため、ライフサイクルコストが削減可能。
・安価に高精度の点検結果を得ることができる。
・点検に要する時間が1~1.5h/基となるため、発電停止時間の低減が可能。
・点検に要する期間が短く、補修計画の立案にゆとりが生じる。

ライフサイクルコストのモデル図

<設備補修・メンテナンス企業におけるメリット>
・詳細点検可能なカメラを使用しての空撮のため、遠望での撮影データに比べ、より詳細な補修計画の立案ができる。

今後の展望

・ドローンにより取得した膨大な画像データとAI等の技術を活用し、ドローンでの撮影時点でリアルタイムに点検結果をレポートとして提供するサービスを開発中である。近日、オープンベータテストにて画像解析をデータアップロードのみで行えるサービスを展開し、機械学習による精度向上を行う。

※3月初旬予定にて、ベータ版のサービスをリリースする。詳細は別途告知。

・点検・補修の専門家の知見を基に、人の作業による判別をなるべく減らすことを可能にし、高水準での点検結果を取得しさらに点検時間を短縮できるようなサービスを研究開発していく。また、このサービスは風力発電施設のみに限らず、ダム、高速道路といった高所作業が必要となっている設備に汎用的に対応できるように拡張する。

・ドローンによる点検撮影時間のさらなる短縮の為、現在のズームカメラ以外の機材を利用した撮影方法の研究を風力発電所事業者と協力し、より効率的に安全な撮影手法を研究開発を進めていく。