NTTコミュニケーションズ(現NTTドコモビジネス)は、2025年6月4日から6日まで幕張メッセで開催された「Japan Drone 2025」に出展し、インフラ点検・巡視分野に向けた最新のドローンソリューションを展示した。

「docomo sky」ブランドを軸に、米国Skydio社との提携による自動運用ドローンシステムと、LTE上空通信を活用した遠隔運用プランを紹介した。同社は、社会課題の解決を目的にドローンの普及を進めている。

docomo skyが提案するインフラ点検・巡視ソリューション

 今回の展示は以下の2つを中心に構成された。

  • Skydio X10対応ドローンポート「Skydio Dock for X10」
     Skydioの最新機種「Skydio X10」に対応した充電機能付き自動離着陸ポート。ポートを据え置くことで、ドローンを遠隔地から完全自動で運用できるため、インフラ点検や巡視業務の省人化を実現する。
  • 「LTE上空利用プラン」の拡大
     2025年4月15日から料金タイプや対応機体を拡大した新プランが登場。LTE回線を使うことで目視外飛行でも安定した通信を確保でき、運用エリアの制約を大幅に軽減する。
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これまでLTE上空利用プランは、120GB/月とされていたが、ドローンの利用頻度に応じてプランを選ぶことができるようになった。また、無制限プランも追加された。

Skydio Dock for X10による国内初のレベル3.5飛行を福島で実現

 特に注目を集めたのは、福島県昭和村で実現した国内初(※1)の「レベル3.5飛行」の事例である。2025年4月、NTT e-Drone Technology社と昭和村が共同で実施したこの実証実験では、「Skydio Dock for X10」を活用し、完全無人かつ遠隔監視下での飛行に成功した。

※1 Skydio Dock for X10によるレベル3.5飛行では国内初。

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自律飛行と遠隔運用を支える「Skydio Dock for X10」。レベル3.5飛行の実証でも活用され、将来の完全無人ドローン運用を見据えた中核装置。

 実証の詳細は以下の通りだ。

  • 計184回の飛行を24時間体制で実施
  • 夜間飛行を含む完全無人運用を実現
  • 災害対応、インフラ設備の点検、山間部の巡視などへの応用を想定

 この成果は、労働力不足や安全確保など、インフラ管理における社会課題の解決を後押しするものとして高い関心を集めた。また、夜間を含むドローンの無人運用において、Skydio Dock for X10が非常に有効であることが確認された。

セルラードローンで実現する広域・安全な遠隔点検

 担当者は「docomo skyは2020年からサービスを展開しており、すでに多数のユースケースがあります」と説明する。最大の特徴は、セルラードローンとしてLTE通信を利用する点だ。

「LTE通信により距離の制約を解消し、遠隔地から広範囲のエリアで安全に運用できます」と強調。Skydio X10は防水防塵性能(IP55)、昼夜対応カメラ、最大4000万画素の高解像度映像取得など高いスペックを備え、LTE対応によりリアルタイム映像を遠隔地に共有できる。

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米国Skydio社製「Skydio X10」は、LTEによる通信に対応。高性能な自律飛行機能を備え、点検・巡視ソリューションの中核を担う。

映像が乱れないドローン通信、国内初『パケット優先制御』を実装

 通信面では大きな進歩もあった。2025年6月3日に発表されたのが、国内で初めて成功した「上空LTE通信でのパケット優先制御」の検証だ。

 担当者によれば、「特定のSIMに優先的にパケットを割り当てることで、混雑するエリアや時間帯でも通信を安定化できます。優先制御がない場合は映像が乱れてしまいますが、制御下では鮮明な映像を維持でき、実証では約5倍の通信速度向上が確認されました」という。

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「パケット優先制御」非対応(左)/対応(右)の映像品質比較。制御なしでは映像が乱れるが、制御下では鮮明な映像伝送を実現し約5倍の通信速度向上を達成。

 この技術は、目視外飛行時にドローンのカメラ映像で地上の安全確認を行うために不可欠だ。「機体ベンダーがハードウェアを進化させる中で、我々はネットワーク側の安全性向上を担っています」と同社の役割を明確にした。

SIM差し替えだけで利用可能、2025年夏に商用化予定

「パケット優先制御」は基地局側で処理される技術で、ドローン側は対応SIMを差し替えるだけで利用できる。担当者は「国内キャリアで初の技術で、対応ドローンも豊富にあることが我々の強みです」と実用性をアピールした。現在は検証を終えており、2025年夏頃をめどに法人向けの特別契約として商用提供を開始する予定だ。

 Japan Drone 2025での来場者の反応について、担当者は次のように語った。
「官公庁から民間企業まで幅広く来場いただきましたが、特に無人巡視への関心が高いと感じました。『Skydio Dock for X10』を展示していたこともあり、レベル3.5飛行や導入方法についての相談が多かったです。映像品質を重視するお客様も多く、『パケット優先制御』の重要性を理解いただけたと感じています」と手応えを語った。

 今後の戦略としては、インフラ分野を重点ターゲットに据える。構造物を保有する事業者の人手不足など、社会課題解決が最大の目標だ。担当者は「無人化や遠隔操縦のニーズはますます高まっており、安定した映像品質やテレメトリー取得の重要性が増しています。我々のモバイルネットワーク技術を活かして社会に貢献していきたいと考えています」と意気込みを示した。

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