6月4日から6日にかけて幕張メッセで開催された「Japan Drone 2025」にて、manisoniasは自社開発の水難救助用ドローン「SAKURA(サクラ)」を公開した。展示はGMOインターネットグループのブース内で行われ、水難救助における新たな可能性を提示した。

水中捜索用ドローン登場 ― ドローン×映像処理の安全ソリューション

写真:会場に設置されたプールに浮かんだ「SAKURA」
海難・水難レスキュードローン「SAKURA」。膨張式救命浮環の投下、シーマーカー投下、GPS位置特定機能を搭載した人命救助特化型ドローン。

 SAKURAは、人命救助に特化した多機能ドローンであり、以下のような機能を備えている。

  • 膨張式救命浮環の投下機能
  • 海水を着色し視認性を高めるシーマーカー
  • GPS搭載カプセルによる位置特定
  • 複数人同時救助への対応
  • スピーカーを用いた呼びかけ機能
  • 着水可能なフロート脚
写真:機体上部に設けられた4つの救命浮環収納スロット
SAKURAの救命浮環収納スロットは4つ。複数の浮き輪や海水を着色するシーマーカーを搭載する。

 会場では実際に浮き輪を投下する実演が行われ、来場者は次世代の水上人命救助技術を体感した。

 あわせて、同社は以下の技術も展示した。

  • 水中・低視界下でも映像を鮮明化する「画像鮮明化装置IVCS」
  • アームを装着した海難事故捜索用の水中ドローン
写真:コントローラーを操作する手元、その向こうのモニターに映る水中の映像
画像鮮明化装置「IVCS」。水中・低視界下映像をリアルタイムで高精細化し、コンパクト設計で船上などの現場使用に対応。
写真:高輝度水中ライトと遠隔操作アームを搭載した水中ドローン
水中ドローン海難事故捜索仕様。高輝度水中ライトと遠隔操作アームを搭載し、IVCSとの組み合わせで海中探索を強化。

 これらの技術は、ドローンと映像処理技術を融合させた総合的な海上安全ソリューションとして提案されている。

 これらの開発の背景には、過去の悲しい経験がある。manisoniasの橋本代表は「約5年前のコロナ禍でライフセーバーの活動が制限される中、海水浴場を見守る活動を始めました。その3年後に鎌倉市由比ガ浜で高校生3人が流される事故が発生し、弊社チームも現場に向かいましたが、到着までに時間を要してしまい、1名が帰らぬ人となりました。このような悲劇を二度と繰り返さないため、ドローンで即座に救助できる仕組みを構築したいと考えSAKURAを開発しました」と語る。

写真:プールに浮かぶ浮き輪
SAKURAから投下された浮き輪。

 開発は神奈川県の「2024年度ロボット実証実験公募事業」の支援を受けて行われ、神奈川県藤沢市の外注加工業者との連携で進められた。manisoniasの本社は福島県にあるが、藤沢市にも開発拠点を持つ。

機体自体が浮力を確保!複数人救助を想定した設計思想

 SAKURAは、救命浮環を複数搭載し、足りない場合には機体自体が浮く構造となっており、着水したSAKURAに捕まることで救助を行う。橋本代表は「複数人がバラバラに流される状況では、浮環3つでは足りないことがあります。フロートによって機体自体に浮力を持たせ、捕まってもらう設計にしており、人命を最優先に考えた冗長性の高い構造にしました」と述べた。

 今後の展望として、2025年夏に最終的な耐久試験を実施し、猛暑下での運用性や信頼性を確認したうえで、2026年度中に製品としてリリースする計画である。

 manisoniasは、ドローンを活用して地域課題の解決を目指しており、すでに「鳥獣被害対策」や「中山間地域への医薬品配送」といった事業も展開している。橋本代表は「水難事故は神奈川県でも深刻な課題であり、全国的にもレスキュー人員が不足しています。少子高齢化が進む地方では、こうした支援技術がますます求められています」と語る。

 同社は、石破首相が推進する地方創生2.0のモデルプラントとして福島県で面談を受けた実績もあり、地域密着型のドローンソリューションを通じて社会課題の解決に貢献していく姿勢を明確にしている。

#Japan Drone 2025 記事