写真:3機のドローンが展示されたブース

 香港をはじめ、中国、イギリス、ポーランド、アメリカで事業を展開するAccuverは、幕張メッセで開催された「Japan Drone 2025」において、AIを活用したインフラ点検ソリューションの「SIVION(シヴィオン)」シリーズを展示した。同シリーズは、橋梁や建築物、建設現場における従来の人手による点検作業を、より安全かつ効率的に代替するインテリジェントモジュールとして開発されたものであり、国土交通省が公開している「点検支援技術性能カタログ」にも掲載されている。

 SIVIONは、回転式LiDARを使った自動制御モジュールやドローンを使ったデータ取得、AIを使った画像解析などがパッケージとなったソリューションを指す。回転式LiDARをドローンやロボットなどに搭載して自動制御を実現している。

GPS非対応環境でも高精度点群データをリアルタイム取得

写真:ドローンの正面部分
SIVIONシリーズには、それぞれLiDARモジュールとSLAMを採用。機体正面の中央にSLAMが搭載されている。

 SIVIONの最大の特長は、回転式LiDAR(ライダー)とSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術を活用することで、非GPS環境下でも周囲の障害物などの情報を把握し、リアルタイムに高精度な3D点群データを取得できる点にある。取得したデータは、クラウドベースのシステム「SIVION Web」で即座に確認が可能だ。

写真:モニターに表示された橋梁の3D点群マップ
「SIVION Web」の画面。地図上で点検箇所の飛行ルートの指定や自律飛行管理、点群データの可視化をリアルタイムで実行することができる。

 担当者は「飛行中にセンサー(LiDAR)が常時回転し、周囲の3D点群マップをリアルタイムで作成します。データは自動的にクラウド上のサーバーに送信され、即座に処理してモデルを生成します」と説明している。

タブレットで直感的に操作、遠隔からの点検指示にも対応

 SIVIONは現場での直感的な操作性にも優れている。最初にドローンで橋脚などの点検被写体物を手動で一周飛行させると、そのデータをもとにマップが生成される。その後は、タブレット上で点検したい箇所を指定するだけで、最適な飛行ルートが自動生成される仕組みだ。

「例えば、橋脚を対象にし、高さ5~25mの範囲をサークル(被写体を中心に円を描いて飛行)というタイプで指定すれば、自動的にその条件に応じたルートが作成されます」と担当者は説明する。

 また、現場での操作だけでなく、オペレーターが遠隔地から指示を出すことも可能で、機体の持参及びドローンの飛行前点検を行う人員を現場に配置すれば、点検業務をリモートで実施できるという。この柔軟性により、複数拠点の点検を同時に実施し、地上管制システム(Ground Control System)で一括管理・監視する体制の構築も可能である。

AIによる損傷検出と多様なデータ出力形式に対応

 取得した点群データは、Windowsベースの解析ソフトウェア「SIVION Editor」によって三次元モデル化され、さらに生成した三次元モデルを二次元のデータへ変換して管理することも可能である。そのほか、点検に役立つ機能として、AIがひび割れの幅や長さなどの損傷を自動で識別する機能も備えている。識別した結果は報告書(Word形式)として出力することができる。

 さらに、解析結果をCAD図面形式で出力し、既存の図面と比較・保存する機能も備えており、アーカイブとして保存していくことで過去と現状の比較が可能になる。このように、点検業務の記録と分析がより高度かつ効率的になる構成だ。

飛行時間の異なる複数の機体ラインナップを展示

 展示会場では、SIVION WebおよびSIVION Editorの実演に加え、各種機体の展示も実施された。飛行時間40分に対応する「SIVION Wing」、さらなる軽量化により飛行時間55分を実現した「SIVION Wing2」、および屋内点検を想定した小型ドローン「SIVION Lite」など、用途に応じた製品群が紹介された。

写真:「SIVION Wing」外観
施設やインフラの点検用ドローン「SIVION Wing」。機体上部にSONY製のカメラ、下部にSIVIONインテリジェントモジュール(LiDAR)を搭載。風速12m/sに対応し、飛行時間は約40分。
写真:「SIVION Wing2」外観
新製品となる「SIVION Wing2」。軽量化により飛行時間を約55分に向上している。
写真:「SIVION Lite」外観
屋内や狭小空間での運用を想定した「SIVION Lite」。

 来場者の反応について、担当者は「橋脚調査に携わる企業や自治体職員が明確な目的を持って当社ブースを訪れていました。特に、自動ルート生成・自律飛行機能に対して高い関心と驚きが寄せられました」と語る。地方ではドローン操縦士の人材確保が難しいケースも多く、自動化の利点が評価されているという。

 今後の展開としては、「新型機体の点検支援技術性能カタログへの掲載を目指すとともに、JRや高速道路事業者への導入実績を実現したいと考えています。国土強靱化を背景に、橋脚のひび割れ検査にとどまらず、建物の定期調査や土砂災害リスク箇所のモニタリングなど、幅広い用途での応用も見据えています」としており、三次元データの活用による新たな点検ソリューションの普及を狙う。国土交通省が定める5年ごとの橋梁点検義務化も追い風となっており、今後は自治体向け営業を強化していく構えだ。

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