2025年6月23日、東興ジオテックとエアロセンスは、法面吹付用の大型有線給電ドローンと吹付工法を共同開発したことを発表した。
エアロセンスの有線ドローン技術を取り入れ開発した法面吹付用の大型ドローンによる植生基材吹付工法(以下、グリーンインパルス)は、大型ドローンでありながら有線給電により長時間の施工が可能。これまで作業員が行っていた法面での吹付作業をドローンが担うことで、安全性の向上と労働力不足の解消を図る。
また、ドローンで法面へ吹き付けを行う際、クレーンやバックホウ(ショベルカー)などの重機を利用することなく、かつ高所でも施工が可能となり、法面から山腹崩壊地をはじめとする災害復旧工事まで施工範囲が大幅に広がる。
従来の法面への吹付施工は、作業員がロープでぶら下がりノズルを持って行う人力施工が主流で、重労働かつ高所作業で危険を伴っていた。また、作業員の平均年齢が高く後継者不足も課題である。グリーンインパルスを運用することで施工現場のオートメーション化を図る。
今後、山腹崩壊地などこれまで機械施工が困難だった現場の完全無人施工を目指し、吹付厚さのリアルタイム計測技術の充実と機体改良による完全自動航行(施工)技術を検討する。将来的にはこのドローン技術をモルタルの吹付施工などに活用していくことも視野に入れる。
東興ジオテックは、従来の植生基材吹付工法では施工が困難だった法面垂直高80m以上の現場を吹付可能にしたハイグリーンショット工法(長距離高揚程植生基材吹付工法)と、通常の植生基材吹付工法で必要な吹付前に法面全面に金網を張り付ける工程を省略できるノンラスグリーン工法をベースに、ドローン施工を組み合わせる新しい吹付工法を「グリーンインパルス」と命名。山腹崩壊地をはじめとする長距離高揚程圧送が必要な現場の新たな技術として活用を目指す。
グリーンインパルスのドローンによる施工システムは、材料供給ホースと給電ケーブルをドローンに接続し、ドローン操作システムを用いて吹き付けを行う。ドローン機体は6つのプロペラを有し、ペイロードは約40kg、ホースを装填した状態で最高約30m上空まで飛行できる。地上の電源装置とドローンを車に積載することで山間の現場でも運用が可能。地上からの吹付厚さのリアルタイム計測技術を備えているため、吹付厚さの計測作業を地上から実施できる。
東興ジオテックでは、現在開発中の全自動施工プラントを組み合わせることで、将来的には通常5人程度必要な作業員(監督者を除く)を2人に削減し、従来の約6割の省力化を見込む。
植生基材吹付工法(または厚層基材吹付工法)は、法面緑化工法のひとつで、植物が発芽・生育するための生育基盤をエアーの力で圧送して法面に吹き付ける。この工法は、東興ジオテックが1974年に開発して以降、50年以上作業員がロープにぶら下がりながらノズルを持って生育基盤を吹き付ける施工を行ってきた。
法面施工にも機械化やICT技術の活用が図られつつあるが、吹付作業は重機を使った機械化にとどまり、近年頻発している豪雨災害や地震災害で生じた山腹崩壊地など、重機が搬入できない現場では人力施工を行っている。また、生物多様性国家戦略2023-2030において、法面緑化工事における外来種等の使用回避・拡散防止の具体的施策も示されている。
東興ジオテックは、独自の在来種子貯蔵出荷施設(RSセンター)を保有しており、これまでの法面緑化に加えて地域生態系に配慮する必要がある地域等において在来種による自然回復緑化をグリーンインパルスで展開する方針だ。