2025年6月4日から6日にかけて幕張メッセで開催された「Japan Drone 2025」において、NTT e-Drone Technologyは、農業・産業・防災分野におけるドローンの実運用支援から機体の開発・調達、人材育成までを一貫して提供する包括的な取り組みを紹介した。

NTT製×欧米製ドローンが集結、安全保障対応で注目集める

写真:アームが折り畳まれた「AC102」
NTT e-Drone Technologyの国産フラッグシップモデル「AC102」。重量6.1kgの小型軽量化を実現し、軽トラックでの運搬を可能にした。

 展示された機体は、経済安全保障および情報セキュリティリスクへの配慮から、すべて自社製もしくは欧米製で構成されている。主力製品として注目されたのが、自社開発の農業用ドローン「AC102」である。機体重量は6.1kg、液剤タンクとバッテリーを含めて最大14.6kgまで積載可能。軽量かつコンパクトな設計で、飛び地が多い日本の農地でも軽トラックで容易に移動できる可搬性を重視している。

写真:全天候型ドローン「Spirit」
米国ASCENT AEROSYSTEMS社製全天候型ドローン「Spirit」。過酷な悪天候でも飛行可能なため、台風時の河川監視など災害対応への活用を想定している。

 測量業務用としては、「AC101」をベースにレーザー測量機を搭載した「EC101」が展示されたほか、米ASCENT AEROSYSTEMS社製の全天候型ドローン「Spirit」、米Skydio社製の「Skydio X10」「Skydio 2+」、仏Parrot社製の「ANAFI Ai」など、日本で活躍している海外製ドローンも並んだ。

鳥獣害から台風対応まで、現場課題を解決するドローンの実力

写真:アームを折りたたんだ「AC102」鳥獣害対策モデル
鳥獣害対策モデルのAC102は、レーザー照射装置を搭載。写真はレーザー光を照射している場面で、関東エリアの養鶏業者でカラス被害軽減の実証実験を実施し効果を確認している。

 AC102にはレーザー照射装置を搭載した鳥獣害対策モデルも用意されており、「畜産業者との実証で効果を確認しています」と担当者は語る。

 また、「Spirit」については「強風や大雨にも耐え、過酷な気象条件下でも安定した飛行が可能。日本ではまだ販売されていませんが、今年度から自社での運用を計画しています。台風接近時など河川の氾濫が懸念される状況で、職員が危険な場所に赴かずに状況確認が可能になります」と災害時の活用の可能性を示した。

 フライトコントローラーをはじめとする主要部品はNTT e-Drone Technologyが独自に開発を進めており、「バッテリーを除く主要コンポーネントは中国製ではありません。安全保障上の懸念を払拭できます」と、担当者は自社製品のセキュリティ面での優位性を強調する。

国家資格対応スクール「E.R.T.S.」で実践人材を育成、運用力も強化

 同社は国土交通省登録講習機関としてドローンスクール「E.R.T.S.(e-Drone Technology Remote Training School)」を運営し、国家資格「二等無人航空機操縦士」の取得に対応した実践的訓練を提供している。人材育成においても、ドローン利活用の基盤づくりを支えている。

 同社は、NTT東日本の営業エリアを中心に、北海道から山梨・長野まで500名を超えるパイロットを擁し、地域密着型の運用体制を構築。「地域で何かあった時に、地元のパイロットが即座に対応できる体制を自治体や民間と連携し展開しています」と、同社の強みである全国展開力をアピールした。

展示会での反響と今後の展望

 展示会では、災害対策やインフラ点検への関心の高まりを感じたといい、「NTTグループという信頼感もあり、自治体や警察・消防と連携するケースも増えています。特にこれから国内で運用を開始する『Spirit』は来場者の注目を集めました」と、担当者は手応えを語る。

 今後は橋梁やダムなどのインフラ点検分野でのユースケース拡大を目指し、機体の販売だけでなく点検請負業務の強化にも取り組む。中でも農業分野は引き続き大きな需要があり、「規模に関わらずドローン導入の効果が出せます。人手不足や猛暑期の負担軽減といった課題解決にも貢献できると考えています」としている。

 創業から5年目を迎え、NTT e-Drone Technologyの取り組みは、着実に認知を広げつつある。

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