三菱重工業は、2025年6月に開催された「Japan Drone 2025」で、ペイロード200kg、航続距離約200kmというドローンの中でも異例のサイズとなる大型ハイブリッド型ドローンを展示した。

Japan Drone 2025で異彩を放つ、全長6mの国産大型ドローン

写真:展示された三菱重工業のドローン
三菱重工業では国際的な基準に照らして、本機を中型ドローンと呼称している。

 全長は約6m、最大離陸重量は650kgに達するスケールで、会場に並ぶ他のドローンとは異なり、ひときわ存在感を放っていた。黒く塗装されたボディには複数のリベットが輝き、6本のアームの先端には上下2枚ずつの大型ローターが取り付けられている。

ヤマハ発動機と共同開発、エンジン×モーターのシリーズ式ハイブリッドを採用

 この巨大な機体は、三菱重工業とヤマハ発動機による共同研究の成果である。三菱重工業は同じサイズで電動の大型ドローンを開発してきたが、それとは別に長距離飛行用の大型ドローンとしてヤマハ発動機と共同で開発している。

 最大の特徴は、モーターとエンジンを組み合わせたハイブリッド方式を採用している点だ。機体下部に搭載したエンジンで発電し、その電力を用いてローターを駆動する。これは鉄道車両や一部の自動車で採用される「シリーズ式ハイブリッド方式」に近い仕組みで、エンジンで直接ローターを回すのではなく、発電した電力でモーターを駆動することで、ローターの回転を繊細に調整できるメリットがある。

写真:機体下部に鳥t蹴られたエンジン
機体下部に取り付けられているのがエンジン。排気筒は煙を下に向かって排出する構造。

 しかし、エンジンを搭載することで新たな課題も生じる。まず、エンジンから発生する熱を処理するために水冷によるラジエーターなどの冷却機構が必要であり、その分重量も増加する。また、発電システムの安定性を確保するためには、発電による電流が過電流にならないようにモニタリングし、制御する必要がある。構成部品が増えることで整備性も複雑化するため、こうした課題を解決しつつ機体の完成度を高めていくことが求められる。

写真:ドローンを横から見た様子
1本のアームが取り付けられた側面が2面。残りの2面はアームが2本ずつ取り付けられている。

 開発はまだ初期段階にあるが、2025年4月中旬には三菱重工業内の研究施設で約1分間のホバリング飛行に成功した。担当者は「もともと1分間の飛行を目標としたフェーズであり、計画通り」と説明しており、今後は段階的に飛行時間や飛行距離を伸ばしていく構想だ。

写真:三菱重工の無人機を紹介するパネル
4月の実験の様子がパネルで写真掲示された。

 また、ヤマハ発動機との共同開発について、三菱重工業の担当者は「このサイズのハイブリッドドローンは、我々が知る限り国内外でも数が少なく、かなり挑戦的なテーマです。ヤマハ発動機が持つエンジン開発の知見は非常に有効です」と語っている。

写真:パーツや配線などが取り付けられたドローン機体下部
電動タイプのドローンと比較すると、配線などが複雑に配されている印象の機体下部。

災害輸送や建設現場での活用を見据える

 展示会場では、自治体や建設業者から「災害時の物資輸送に活用したい」「山間部の建設現場に投入したい」といった具体的な引き合いも寄せられていた。三菱重工業は、全長約6m、ペイロード200kgの電動中型ドローンや、エンジンで2時間飛行できるヘリコプター型の小型ドローンも開発しているが、今回のハイブリッド型は航続距離・ペイロードともに高いスペックを誇り、特に期待が集まっている。

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