2025年6月25日、Liberaware(以下、リベラウェア)は、マレーシアを拠点とするAerodyne Geospatial(以下、Aerodyne Group)と包括的な業務提携に関する覚書(MoU)を締結したと発表した。海外市場への事業拡大、収益基盤の多角化を推進する。

 この提携はリベラウェアが経済産業省に採択された「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」を通じて実現したもの。ドローンを用いたインフラメンテナンスのデジタルソリューションによる現地完結型エコシステムを構築することを目標に、Aerodyne Groupの人材育成事業を通じた小型ドローンIBISシリーズのパイロット人材育成や、現場でのOJT(On-The-Job Training)実施のほか、マレーシアでIBISやリベラウェアのデジタルソリューションを活用できる人材を育成する。マレーシア市場で新たな事業機会を創出し、アジア地域全体への展開を視野に入れた協業体制を構築する。

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 リベラウェアは、「狭くて、暗くて、危険な」「屋内空間」の点検・計測に特化した小型ドローン開発と運用を行っている。東京電力福島第一原子力発電所の原子炉格納容器内や下水道管路内、JR東日本グループをはじめとする大手企業のインフラ設備でIBISによる点検を行ってきた。

 Aerodyne Groupは、ドローンテック、データテック、DXの3領域を統合した「DT3」モデルに基づくインフラ支援サービスを提供してきた。多種多様なドローンを活用し、AIによるデータ解析と独自プラットフォームによる点検・可視化を通じて、世界45か国以上で事業を展開。人材育成の面でもマレーシア政府と連携した国家的スキームを推進している。

 両社は、マレーシアにおける持続可能な人材育成と、その他の海外拠点で現地完結型ソリューションの提供体制の整備が可能と考え提携に至った。

提携目的

 この提携は、経済産業省のグローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金の支援を受けて実施するもので、リベラウェアのIBISおよび関連デジタルソリューションの運用が可能な高度スキル人材をマレーシアで育成することを主目的としている。

 Aerodyne Groupが運営する訓練機関「Aerodyne Flight Institute(以下、AFI)」で、IBISに特化した教育プログラムを新設し、現地での訓練、実フィールドでのOJT、高度人材の育成を通じて、マレーシア国内で業務が完結するエコシステムを構築する。育成した人材を活用し、海外展開も視野に入れる。

主な提携内容

AFIへのIBISカリキュラム設置

  • 日本国内で運用中のIBISトレーニングセンターをモデルに、同様の機能をマレーシア国内に構築
  • IBISインストラクター資格を有する技術者の育成、トレーニング教材・各種マニュアルの英語化

顧客フィールドにおけるOJTの実施

  • カリキュラムを履修した現地人材に対し、日本の操縦者監修のもと、実環境でのOJTを実施
  • IBISの操作技術に加え、対象プラントや工場設備の基本知識を習得

育成された高度人材の海外展開支援

  • 両社のグローバルネットワークを活用し、育成人材が海外の顧客現場で活躍できる機会を創出
  • マレーシアを起点とした人材育成・派遣モデルを他国へも展開可能なスキームへ発展
Aerodyne Flight Institute開会式の集合写真、エアロダイン社の外観

 提携を通じて、リベラウェアはグローバルサウス未来志向型共創等事業を、Aerodyne Groupはマレーシア政府が推進する「Shared Prosperity Vision 2030」の目標、特に「マレーシアを高所得国家へ導く新たな人材育成」「第4次産業革命(IR4.0)分野への若年層の参画促進」といった方針を、両社で補完しあいながら実現していく構えだ。

 また、今回の取り組みを通じて、マレーシアの高度人材を東南アジア地域の諸外国に派遣することで、日本国内のグローバル企業の顧客に対して、円滑かつ高品質なサービス提供が可能となる体制を構築できると見込む。

 Aerodyne Groupが有する広範な顧客基盤に対してIBISの有効性を提案していくことで、短期的にはマレーシア市場での成功事例の創出を図り、中長期的にはそのノウハウを同社の45か国に広がる海外市場へ拡大していくことも想定している。