世界最大級の無人機の展示会「XPONENTIAL 2025」が2025年5月19日から22日の4日間、米国テキサス州ヒューストンで開催された(展示は20日からの3日間)。今年も、AUVSI(The Association for Uncrewed Vehicle Systems International・国際無人輸送システム協会)とメッセ・デュッセルドルフ・ノースアメリカが共同で主催した。現地レポートの前編では全体の概況をお伝えする。

写真:受付の様子
ジョージRブラウンコンベンションセンター受付の様子
写真:Frontier Precisionのブース

 今年は米ドローン関連企業の出展数が減少傾向で、Skydioも1社の代理店による機体紹介にとどまっていた。また一見したところでは、迷彩服姿の来場者もかなり少なく、昨年のような軍事色の強さがだいぶ抑えられた印象を受けた。会場の中央にはWiskの4人乗りエアタクシーが据えられ、多くの来場者が代わるがわる試乗と記念撮影に興じていた。

写真:展示されたWiskの黄色いボディのエアタクシー。
写真:Wiskのエアタクシー
写真:Wiskエアタクシーの解説パネル
写真:Wiskのエアタクシー
Wisk

 もちろんWiskほどではないが、搬送用やさまざまな機器を搭載できるやや大きめなVTOL機も目立った。これらのブースには連日にわたり特に多くの来訪者が足を運んで賑わっており、Skywaysの担当者は日本との取引を開始したことも明かした。

写真:SkywaysのVTOL機
Skyways
写真:HoneywellのVTOL機
Honeywell
写真:STARLINGの展示ブース
STARLING
写真:AIRBUSの展示ブース
AIRBUS
写真:ZenaDroneのVTOL機
ZenaDrone

 全体的には各国のパビリオンや米国各州のパビリオンが充実しており、米国市場への進出ムードが強まっていたように感じる。国としての出展は、ドイツ、スペイン、韓国、台湾が目立ち、州としてはニューヨーク、首都ワシントンD.C.に隣接するメリーランド、ラストベルトに含まれるオハイオやミシガン、西部カリフォルニアに隣接するオレゴン、今回の開催地であるテキサスに隣接するオクラホマが出展した。なかでも台湾は特に熱心で、2カ所でブースを出していた。こうしたパビリオン内には、国産化や量産化に欠かせないモーターやバッテリーなどのパーツ、3Dプリンターでフレームなどを製作する技術を提供する企業も少なくなく、NDAA準拠を大きく打ち出す企業もあった。

写真:スペインのパビリオン
写真:韓国のパビリオン
写真:台湾のパビリオン
写真:FlytBaseのブース
写真:GENIUS NYのブース
写真:メリーランド州のパビリオン

 存在感を放っていた企業の1社が、米Boston Dynamics社だ。自社ブースで四足歩行ロボット「Spot」の実演を行っていたほか、複数の企業がSpotを会場内で歩かせ人目を引いていた。Boston Dynamics社の担当者は、XPONENTIAL展示会初日に合わせてAIを活用した「Spot & Orbit 5.0」新機能をリリースしたと話した。既存のSpotミッションを利用して施設のデジタルツインを作成できるという。また少し離れたところでは、Boston Dynamicsと特許訴訟で争っていた(今年1月に和解)GHOSTROBOTICSも四足歩行ロボットを絶えず稼働させていた。(https://bostondynamics.com/news/boston-dynamics-and-ghost-robotics-resolve-patent-lawsuits/

写真:Boston Dynamicsの展示ブース
写真:Boston Dynamicsの四足歩行ロボット「Spot」
Boston Dynamics
写真:GHOSTROBOTICSの展示ブース
写真:GHOSTROBOTICSの四足歩行ロボット
GHOSTROBOTICS

 このほかに3DR、Esri、QUALCOMM、CubePilot、Holybro、ModalAI、Cyberhawkなどお馴染みの顔ぶれも。日本でも注目が高まりつつあるASCENT AEROSYSTEMSもずらりと製品を並べており、新製品となる小型機体もお披露目していた。しかし米機体メーカーであるAURELIA AEROSPACEやAuterionも不在だった。

写真:QUALCOMMの展示ブース
写真:CubePilotの展示ブース
写真:ModalAIの展示ブース、デモ飛行を行うドローン
写真:ASCENT AEROSYSTEMSの展示ブース
写真:スティック状でプロペラを備えた手のひらサイズの小型ドローン

 ACSLの展示では主に米国の警察向けに新たにリリースされたという新たなカメラが紹介されていた。赤外線機能は前モデルの2倍、可視光カメラは64メガピクセルに向上し、ズーム機能も向上したほか、ワンタッチ切り替えが可能になったという。ジンバルの一部でベトナムのサプライヤーを利用することでコストダウンを図っていると担当者は説明した。

写真:ACSLの展示ブース

 日本との違いという点で細かいところだがご紹介しておくと、水中ドローンの展示では水槽に濁った水しか入れていないところが目についた。「実際の水中業務ではほとんど見通せないほど視程が悪いところもある」という共通認識が、すでに根付いている様子がうかがえた。

写真:Deep Trekkerの展示ブース、濁った水が入った水槽の中の水中ドローン
写真:濁った水が入った水槽の中で稼働する水中ドローン

 これは余談だが、15時を過ぎると、会場内で提供されるお酒を手に談笑する姿も増えて、和やかムードが漂っていた。会場の隅一角にはSTEMエリアがあり、小学生から高校生まで幅広い年齢の多くの学生が集まっていた。展示コーナーの設置やドローンレースへの参加で盛り上がっており、産業界の次世代教育に対する意欲とニーズの高さを感じさせた。また、水中ドローン機器を使ったSTEM教育を米国を含むグローバル4カ国で提供している団体RoboNation(旧AUVSI Foundation)や、開催地であるテキサス州お膝元にあるテキサスA&M大学も出展した。後編では、アジア勢の動向や出展切り口のトレンドなどもお伝えしたい。

写真:Drones in Schoolのブース
写真:STEMエリアの展示
写真:STEMエリアの展示
写真:Drones in Schoolのドローン飛行スペース