世界最大級の無人機の展示会「XPONENTIAL 2025」現地レポート【後編】では、アジア勢の動向ほか、注目の取り組みを紹介する。(全体の概況レポートについてはぜひ【前編】もお読みいただきたい。)
まず目についたのは、米国市場に打って出ようとするアジア各国の企業に勢いがあったことだ。前編で紹介したACSLにも米国向け製品のみではあるがジンバルを提供しているベトナムのGREMSYは、すでにNOKIA、SONYなどとも取引があるという実績と、「NDAA COMPLIANT」「BLUE UAS」「ASSEMBLED IN USA」を明確に打ち出し、米国市場進出への意欲を示していた。ちなみに同社はJapan Droneにも出展予定(6月4日現在)だ。
武蔵精密工業が2025年2月に出資し、共同でe-Mobility向けのバッテリー開発を進めると発表した韓国のBEI Labは、韓国パビリオン内に出展していた。担当者は、従来品と比べて同じ容量・エネルギー量で従来品2kgに対して同社製品は1.2kgと軽量化を実現し、米国企業とのパートナーシップを模索中だと明かした。今回が初出展となる台湾のWistronは、機体やさまざまなペイロードなど多様な製品群を紹介していた。担当者は、これから本格的に米国市場を狙うと話した。
シンガポールのHolywayは、同社初となる国際市場向けモデルのドローン・イン・ア・ボックスをお披露目した。シンガポール国内での主な顧客は電力会社、消防、警察などで、これから米国市場をはじめとする海外展開を加速していくという。担当者は、このモデルの1バッテリー当たりの飛行時間(57分)、着陸後は短時間でバッテリー交換が可能であること、24時間体制でサポートも提供していることなどを澱みなく説明していた。国際展示会への出展は今回が初とのことで今後が楽しみだ。ちなみに日本市場への展開は視野には入れているものの未定とのこと。同社に限らずだが、「商習慣や文化、規制の違いなどから日本市場への進出は未定」と話す企業がこのほかにも複数社あったことも印象的だった。
Holywayの製品もそうだが、韓国のAstroXが紹介した4メートル四方の大型ドローン(展示はパネルとモックアップ)もまた森林火災リスクに備えた製品だった。本機体は消化器を搭載しており、韓国国内では1台販売実績があるという。担当者は、米国内でも森林火災発生件数の多いカリフォルニアやテキサスの公共機関との契約を目指していると話した。「森林管理」は今後のドローン活用の主要なトレンドの1つとして、さらに注目が高まるのではないだろうか。
日本から3年連続出展のスペースワンは、水上ドローン「ARIEL」と専用ソフトウェアを展示していた。1月に行われた世界最大級のテクノロジー見本市「CES」でも多くの反響を得たとのことで、今回も各国の来場者より製品化予定などの質問を数多く受けていた。また同ブースには東北ドローンも初出展。3D CADと3Dプリンターを活用し、ドローンに搭載する部材などの設計・開発・製造・テストを経たうえで“ジャパン・クオリティ”のデータを納品するというサービスを打ち出した。海外にチャレンジする日本企業が増えることは心強く感じた。
最後に、米国企業の中で特に注目を集めていたところを、【前編】で取り上げたBoston Dynamicsともう1社挙げるならば、やはりAmazon Prime Airだろう。担当者は、すでにテキサス州とアリゾナ州の1カ所ずつ、合計2カ所で配送サービスを提供中で、今後数カ月以内に新たな配送拠点を発表予定だと明かした。機体は着陸せずに低空より商品を落下させ届ける仕様になっているため、担当者によると商品によって異なるラッピングマニュアルも整備しているところだという。アマゾンプライム会員の配送料は4.99ドル。