スカイマティクス、ドローンと人工衛星を活用し情報を得る必要性を強調
スカイマティクスで提供しているクラウド型測量サービス「くみき」は、国土交通省が使用を推奨する新技術情報提供システム「NETIS」に掲載され、30業種・5万現場以上で導入された実績を持つ。また、地図上に情報をタグ付けしていく「GIS」にも対応。地形の3次元画像データとオルソ画像の作成も進めており、その生成面積は日本の国土の約50倍に当たる2000万平方kmにのぼる。
スカイマティクスはドローンと人工衛星を組み合わせた測量を得意とする。ドローン測量では限られた場所で解像度が高い画像を即時に撮影することが可能という強みがある。一方、人工衛星は100平方kmという広い範囲を一度に撮影できるだけでなく、同じ場所を周回するという人工衛星の特性から、まったく同じ場所を同じ画角で撮影を繰り返すことができるという強みがある。いわばドローンと人工衛星は補完関係にあり、うまく組み合わせて測量に役立てることが大切だと主張し、この考えをもとにドローンと人工衛星による測量を行うサービス「くみきSAT」をリリースしている。
ドローンと人工衛星を組み合わせた例として、能登半島地震に関する事例が紹介された。地震発生後の能登半島付近における人工衛星測量のデータをもとに土砂崩れ等が起きているとみられる道路を見つけ、ドローンによる詳細な現地調査を行ったという。また偏波による解析を行うSAR人工衛星で得られたデータをもとに地盤沈下等の状態を把握し、発災前の情報と照らし合わせて今後の防災に役立てることが大切だという。ドローンだけに依存せず、人工衛星などほかの技術やソフトウェアを統合的に利用して、真に必要な情報を得るべきと呼びかけた。
リベラウェア、点検ドローンとソフトウェアでBIMマネジメントを事業化へ
リベラウェアは小型点検ドローン「IBIS」シリーズを開発。福島第一原発の内部調査や、埼玉県八潮市の道路陥没事故現場で落下したトラックのキャビンの発見など、大きな実績を積んできている。
最新モデルである「IBIS2 Assist」はToFセンサーやIMUセンサーなどを活用してホバリングがしやすくなり、操作性や安定性が向上した。会場ではまったくドローンに触れたことがない操縦者がIBIS2 Assistを飛ばした際のカメラ映像が上映されたが、画面上に大きな揺れなどは見られず、安定した飛行を行っていると実感できた。今後はビルやマンションの天井内点検などは、ドローン操縦に特化した人ではなく営業マンなどが出かけて対応することも可能になりそうだ。
また、現在はJR東日本と設立した合弁会社カルタと共同開発したソフトウェア「トランシティ」を活用し、地図上にさまざまな3次元データをアップロードし活用できる仕組み作りを行っている。Googleとも連携しており、同社が持つ3Dデータもトランシティ上に表示が可能だ。
同社ではIBISシリーズやトランシティ等のソフトウェアを活用して、様々な建物や設備のBIM(Building Information Modeling)化を推進したいとしている。とくに古い建物などは図面が残っていないことが多く不都合が生じており、今後の点検等のためにも現状をBIM化することは欠かせないという。今後リベラウェアとしては、BIMのデータを作成し維持管理をマネジメントするという仕組みの事業化に取り組んでいきたい考えだ。
ドローンが重機の一種のように使われる事例を紹介
伊藤氏はドローンを使ったソリューション提供を行うエアロダインの日本法人代表を2018年から務め、退任後は日本の技術を海外に紹介したり、海外の技術を日本に導入したりするといった活動を行っている。「ドローンビジネス調査報告書【海外動向編】」などへの執筆にも取り組む。
建設現場でのドローン活用事例として目を引いたのは大型ドローンによる運搬事例だ。2024年に30kg程度が運搬できる「DJI FlyCart 30」が日本市場にも投入されて以来、国内でもドローンによる物資輸送がいよいよ本格的にスタートする機運が高まっているが、中国では重機の一種のように投入されており、重いものを運ぶのに活用され、現場を効率化している事例を紹介した。
伊藤氏によれば、ドローン業界に勝者はまだいないという。その根拠として開発されるドローンが市場にフィットする、いわゆる「PMF(プロダクトマーケティングフィット)」の状態になっていないことを指摘した。例えば米スカイディオのドローンはもともとホビー用として市場に投入されたが、非GPS環境下での対物センサーが秀逸だったため、インフラ点検に転用したところ多大な成果を得た。現在では同社はホビー用のコンシューマ機の開発を中止し、産業用途のエンタープライズ機の開発・販売に特化している。このように、メーカー側にはエンドユーザー(利用者)の産業に対する知識が不足しており、この溝を埋めれば、ドローン業界で勝てる見込みが立ってくるという。
効率化にはドローン・テクノロジーの活用が大いに有効
今回登壇した6事業者からはいずれも、効率化・省人化のためにドローンやソフトウェア、最新テクノロジーを活用するべきという提案がなされた。どのプレゼンテーションもドローンありき、テクノロジーありきではなく、建設業界の各プレイヤーたちが抱える課題の解決のために自分たちの技術を活用してほしいという、各事業者たちの意図や熱意を汲み取ることができた。
建設業界には職人がこれまで積み重ねてきた暗黙知が多くある。これらをドローンメーカーやサービサーと共有することで、建設業界の各プレイヤーが新たな機体やソフトウェアの開発・実装に取り組む。そうして人手不足や担い手の高齢化といった課題を乗り越えることが、建設業界とドローンのお互いに利益となる取り組み方になるのではないだろうか。
