フォースウェーブの設立と韓国軍への貢献
FourthWave(フォースウェーブ)は2019年に設立された韓国のドローンメーカー。今回、日本市場への進出を目指しジャパン・ドローン関西に出展した。同社はもともとドローンやヘリコプター、自動車に強い関心を持つ人々が集まり、同好会的な活動からスタート。技術力を有するメンバーが多く、設立から1年後の2020年には、韓国陸軍向けに独自開発した軍事用ドローンを160台納品し、本格的な開発・製造・生産体制を確立した。最初に手掛けたこのドローンは夜間偵察用および追跡訓練用だった。続けて韓国海軍や韓国空軍にも機体を納入しており、軍事分野における信頼と実績を築き上げているようだ。
ブースには海軍に納品した偵察用ドローン「Mutal」を展示。アームは4本だが、モーターがアーム1本につき2個付いており、1個がダウンしても飛行を続けられるように冗長性を高めている。カメラは開発しておらず、中国製やイスラエル製のものを調達し、装備させているとのこと。10倍ズームまで対応している。
軍事用ドローン「Mutal」を中心にした製品ラインナップ
ブースに掲出されたポスターでは同社が開発・製造する6種類の機体が紹介された。そのうち3種類はトレーニングドローンと銘打ち、韓国陸軍の偵察訓練に使用されるタイプや、韓国空軍の操縦訓練に使用されており、現在は合計260機が運用されていると紹介されていた。残りの3種類は「K Defense・Extreme Conditions Mission Drone」。この中には先述したMutalが含まれるほか、艦艇の活動をサポートする「Guardian」や、爆弾投下に対応した「Black Swan」といったモデルがあった。このようなラインナップを取り揃えているものの、実際には顧客のニーズに合わせて機体やソフトウェアをカスタマイズして納品しているため、ワンオフ的な生産にも対応しているとのこと。
蜂の巣駆除ドローン:民生用ドローン市場へのアピール
軍事用ドローンの展示や紹介はジャパン・ドローン関西ではユニークであったため、来展した人々の関心は高かった様子。だが、フォースウェーブとしても商談や取引に発展するのは難しいと考えていたそうで、民生用ドローンとしてアピールしていたのが蜂の巣駆除ドローンだ。
約2年前から開発を進めている蜂の巣駆除ドローンは、蜂の巣に直接ドローンをぶつけ、巣を撤去する仕組み。ドローンのプロペラの回転によって蜂の駆除も期待できるという。日本でも蜂の巣の駆除には大きな需要があるが、人間の手による作業に頼るところが大きい。ドローンに吸引装置をつけて蜂や巣を吸収する仕組みも考案されているが普及には至っていない。フォースウェーブが展示した蜂の巣駆除ドローンは韓国の消防団体で徐々に導入が進んでいる。作業の安全性と効率性が大幅に向上することを踏まえると、日本でも導入を検討する余地がありそうだ。
取材の最後に、日本のドローンやユーザーに対する印象を聞いてみた。23歳だという担当者は「韓国の場合、平日の午前中の展示会にはほとんど来場者がいません。ジャパン・ドローン関西は朝から活気に溢れていてびっくりしました」と笑顔で感想を語ってくれた。会場を観察していると、関西では数少ないドローン専門の展示会ということで関心が高い人々が集まっていたと、記者はとても感じられた。そのような人々にアピールできたのであれば、フォースウェーブにとっても実りある出展となったであろう。