ブルーイノベーションは、「実証から実装へ」というテーマを掲げて、最新のさまざまな取り組みを紹介した。ブース中央あたりには、能登半島地震で実際に現地で運用したというドローン自動巡回システム「BEPポート」が設置されていた。石川県輪島市において、河川上流の土砂ダム決壊の危険性を定期監視したという。今年の展示では、稼働する様子は見られなかったものの、“現場帰り”のボディにはところどころ傷跡も見られ、災害現場での実装を十分にリアルに想起させた。
ポートのすぐ横にはモニターがあり、テレビ番組で取り上げられた様子が放映されていた。「災害現場において、完全自動で定期的に発着するのは、わが国初」とのコメントには、多くの人が見入っていた。
6月5日より、BEPポートを活用したドローン自動巡回システムのトライアルサービスを提供開始したとのことで、災害時ドローン活用への自治体の意欲が非常に高まっているなか、どのような進展があったのか、今後に注目だ。
ブースコーナーのやはり目立つ場所には、6月5日に発表した「板橋ドローンフィールド」のジオラマが展示された。この施設は、三井不動産、日鉄興和不動産が2024年9月に竣工する予定の街づくり型物流施設「MFLP・LOGIFRONT 東京板橋」に併設される予定の広大な実証実験場で、JUIDAとブルーイノベーションが施設の監修と運営を担う。
狙いは、スタートアップ、大手企業、ソリューションプロバイダー、さまざまなビジネスサイドの顔ぶれが気軽に集い、アカデミアや公共機関との連携も図りながら、新たなソリューションの共創、実証、実装をノンストップで実現するためのインキュベーションセンターとしての活用だ。三井不動産らとの新たなコラボレーションが、2024年度下期以降どのように開花するのか注目だ。
このほか、球体点検ドローン「ELIOS 3」のデモフライトや、送電線ドローン点検のシミュレーター体験など、まさに実装フェーズに入っている製品・サービスの紹介が目立って打ち出されていた。
2023年より注目度の高いDJI Dockや、ブルーイノベーションが早期から手がけてきた人材育成ほか幅広いドローン運用支援サービスについてもしっかりと紹介されていた。
また、ユニークだったのは、6月5日に戦略的技術提携に関する覚書(MOU)を締結した九電ドローンサービスのブースと、自由に行き来できるしつらいだったこと。両社で共同開発した「導水路(洞道)の自動点検ソリューション」の説明パネルや自動走行ロボット、ブルーイノベーションが代理店をつとめるELIOS 3の実機も展示されていた。
機種別ライセンス新設の真意
他方、展示ブースのなかでは触れられていなかったものの、6月5日に発表した「機種別ライセンス新設」も、Japan Drone 2024ではあちこちで話題を呼んでいた。これは、日本国内で販売されているドローンの機種ごとの操縦技能および安全運用スキルをパイロットがきちんと保有していることを客観的に評価・証明するための新たな民間ライセンスで、参画したのは、ACSL、イームズロボティクス、リベラウェア、プロドローンと、名だたる国産ドローンメーカー4社と、JUIDA、それからサービサー企業としてはブルーイノベーション1社となる。本誌ドローンジャーナルは、本戦略的提携(MOU)締結の狙いについて、熊田社長に緊急インタビューを行った。
──機種別ライセンス新設の目的は。
熊田社長:国産機体をはじめいろんなタイプの機体と、それを安全にきちんと運用できるスキル、この両方がセットで揃って初めて、市場拡大につながると考えている。というのも、国家資格で証明できる技能だけでは、いろんなタイプの機体を使いこなすだけのスキルが十分に担保されているかというと疑問も残る。また現状では、各メーカーさんが自社機体の講習を独自に開発して顧客向けに自社で提供しているが、本来であればそれはメーカーさんの本業ではなく負荷低減も必要なのではないか。エンドユーザー側も、各社がそれぞれに自社内の運用実績を積み重ねることで知見を溜めていくという、導入に負荷のかかる状況がある。もっというと、メーカーさんごと、機種ごとに、操作性も含めて標準化を図ることで、顧客体験の向上を図ることも可能になるが、そういった横断で情報共有や議論をする場がこれまでになかった。機体製作と人材育成が足並みをそろえることで、より現場の方が使いやすく、より社会実装の後押しになると考えている。
──JUIDAさんが入られている意義は。
熊田社長:2021年に国際標準化機構(ISO)が、JUIDAが提案したドローンの操縦訓練に関する国際規格を発行(現在はISO23665:2023に引き継いで再発行)しており、JUIDAは世界標準に準拠した講習内容を策定して指導する力がある。各メーカーさんが協力し、JUIDAが機種別講習を作成し、ライセンスを発行する仕組みが整えば、海外へ打って出る時にも非常に有用性があるだろう。
──ブルーイノベーションの役割と狙いは。
熊田社長:上場後すぐにインタビューしていただいたときにもお伝えした通り、当社の強みは幅広い産業分野のエンドユーザーと、直接コミュニケーションを図れる立場にあるということ。つまり橋渡し役になることだ。
例えば、昨今、大手電力会社では、点検業務の発注元となる本社がPoCを実施してさまざまな機種の導入効果を測っていたフェーズから、「これは使えそうだから、実業務で活用を進めてほしい」と発注先に明確に伝えるという、実装フェーズに移行しつつあるが、このときにやはり「その機種を安全にきちんと運用できるスキルの有無」について、客観的に証明できるものがあれば、発注側も受注側も安心して契約を履行できるため、案件も増えやすくなると考えている。他方で、当社は発注元の企業に対し、ドローン運用のガイドラインのコンサルティングを行うことなどもある。これは、より円滑なドローンパイロットの運用を目的とした取り組みだが、機種別ライセンスにおいても、エンドユーザーの実務やニーズに合ったものになるよう、現場のパイロットが本当に安心してさまざまな機種を活用できるよう、橋渡し的な役割を担っていきたい。
また、本新制度の管理システムの提供も行っていく。他方、当社ではドローンをはじめ産業用の多様なロボットを動かすためのプラットフォーム「BEP」を開発している。こういったソフトウェアとさまざまな機種との連携、いずれはデータ解析領域でも取り組みを加速していきたい。機種別ライセンスの取り組みを機に、国内外の多くのメーカーさんとこのように横断して連携を図れることは、サービサー企業である当社にとっても非常に有意義だと考えている。