積層セラミックコンデンサをはじめとした電子部品メーカーとして知られる村田製作所は、同社のLF(長波)帯RFID用アンテナコイルの技術を応用し、高精度なドローンの位置制御技術のアイデアを公開していた。

磁界を利用した高精度測位とドローンの自律着陸

 村田製作所では自動車のスマートキーやTPMS(タイヤ空気圧監視システム)向けに、LF(長波)帯のアンテナコイルを供給している。こうしたLF帯RFIDでは電磁誘導方式が用いられているが、この磁界の強度によってアンテナまでの距離を精緻に測定することができる。同社のブースでは、このLF帯RFIDの測位性能を利用して、センチメートルレベルのドローンの測位を行う実験をデモンストレーションしていた。

村田製作所のLF帯RFID用アンテナコイルの製品。

 デモは床に設置した3つの送信アンテナから出るLF帯の磁界から、ドローンが各アンテナとの距離を測り、各アンテナから等距離となる中心を測位して着陸するというもの。ドローンは最初に最も強い磁界を出すアンテナの方向を、機首を少しずつ回転させながら探す。機首がそのアンテナの方向を向いたらそちらに進み、次に3つのアンテナから送出される磁界を検知し、三角測量の要領でその中心を目指して移動。正しい位置に到着したら、着陸するというものだ。

3つのアンテナから送出される磁界から、その位置を特定する概念を示した映像。
デモンストレーションで使われた装置。床に立てられた黒い棒状のものが送信アンテナ。写真の周囲から離陸したドローンは、アンテナから送出された磁界でマットの中心を探しながら、中央の四角いマットの上に着陸する。

 各アンテナからの距離は、磁界の強度は送受信間距離の-3乗に比例するため、アンテナに近づけば近づくほど正確に測定することが可能。また、周波数が125kHzのLF帯は波長が非常に長いため反射や回折の影響が少なく、マルチパスや人体をはじめとした物体による遮蔽の影響を受けにくいというメリットがある。

LF帯RFIDの受信タグ。左上の黒いチップが受信アンテナとなっている。
ドローンの上部に搭載された受信タグ。

 実験に使用したドローンに搭載したシステムの位置分解能は20cmとなっているため、必ずしも目標位置の真ん中に着陸、というわけにはいかなかったが、「LF帯では±5~10cm程度の精度が出ている」(説明員)という。事実、ドローンは着陸を繰り返しても約50cm四方のマットの上にきちんと着地していた。

 今回はあくまでも村田製作所のLF帯RFIDアンテナ技術のデモンストレーションとしての位置づけであり、具体的なドローン向けの製品というわけではない。しかし今後、ドローンポートでの着陸誘導や、非接触式充電の位置誘導といったものに利用できるとしている。

デモンストレーションの様子。離陸したドローンはいったん送信アンテナを探し、方向を定めたら着陸地点を探しながら移動する。


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