2024年4月22日から25日に米国カリフォルニア州サンディエゴで開催された世界最大級の無人機の展示会「XPONENTIAL」では、日本の国産ドローンメーカーACSLがSkydioやAuterionと同等の広さの展示ブースを構えて、蒼天(SOTEN)の飛行実演を実施して来場者を惹きつけていたことも印象的だった。
そこで初日と2日目、現地を訪れて顧客対応に追われていた鷲谷CEOに、現地で急遽インタビューを実施。米国市場で感じている手応えを率直に聞いた。
──米国における脱中国の流れは日本企業にとって追い風だが、米国の企業ではなくACSLへの期待はどこにあるのか。
鷲谷氏:電力会社にヒアリングすると、2025年末までに中国製ドローンをリプレイスする方針を打ち出していたりする。しかし米国市場の多くのドローンメーカーにとって、最大の市場、顧客はやはり軍事だ。このため電力や点検、警察や消防といった分野からの要望にもしっかりと応えるメーカーの存在が切実に求められている。我々に期待される価値提供とは、顧客からのフィードバックを迅速かつ柔軟に製品に反映させる開発力や対応力にあると考えている。
──主な分野は電力とのことだが、日本と米国の市場を比較して最も大きな違いは?
鷲谷氏:まずは圧倒的な規模の違い。当社調べでは、日本全国で1年間に行われる鉄塔点検の総量が、カリフォルニア州のある一社の電力会社の年間点検総量に匹敵していた。それが50州あるという規模感だ。次に実用化のフェーズも違う。すでに実用化されているだけでなく、どうすればドローン点検をより効率化できるかを各社が検討している。だから「このボタンを2回押すと効率が悪いからこうして欲しい」など要望がリアルだ。
──顧客からの蒼天(SOTEN)に対する評価はどうか?
鷲谷氏:もちろん完璧ではない。中国製には正直届いていない。だが、点検に資する画像を取得できるか、業務における操作性、ピントや影などの取得画像の品質など、彼らが求める性能はクリアできていることや、価格が競合と比べて安価である点は、評価がとても高い。
──米国での事業推進体制は。
鷲谷氏:General Pacific(GenPac)が総合代理店となり、修理やアフターサポートも全て対応できる体制を整えた。西海岸、中央、東海岸の各タイムゾーンに対応できるよう全8社(GenPac含む)の代理店を設置し、全米をカバーできる体制もいったん整ったところだ。
──米国市場事業推進の中心人物は。
鷲谷氏:かつてDJIやAuterionでエンタープライズVP of salesを務めていたシンシア。彼女は米国市場を知り尽くしている上、「自分が売ってきた中国製ドローンの代替として、蒼天ならいける」と、お客さんに対しての責任感がすごく強い。実は過去に出展したときに彼女はAuterionにいてブースが隣同士で仲良くなったご縁から今日に至っている。本当に熱意を持って米国市場で事業を推進してくれている。
──日本の企業であることも強みになっているか?
鷲谷氏:それはすごく感じる。日本企業への信頼はまだすごくある。さらに「日本企業がNDAA適応している」という点も強みだ。機体だけという他社メーカーもあるなか、当社は機体とコントローラーともにNDAA適応しており、確実に競合優位に働いている。このように米国は我々の強みが最も発揮される市場であり、市場規模も世界最大級だ。「ちゃんとやれば、ちゃんと勝てる」と手応えもある。米国市場でシェアを獲得し、会社としてさらに成長していきたい。