「docomo sky」ブランドでドローンソリューション・サービスを展開するNTTコミュニケーションズ(NTT Com)は、米Skydioのドローン「Skydio」シリーズを中心としたブースを展開していた。中でもJapan Drone 2024開幕直後の5日午前10時15分から行われた、アメリカにある「Skydio X10」を日本から操作するという飛行デモンストレーションは、大勢の来場者を集めていた。

Skydio X10のデモンストレーションの様子。

カメラやペイロードを交換できるSkydio X10

 Skydio X10は昨秋米Skydioから発表され、NTTコミュニケーションズもほぼ同時に日本市場への展開を発表している。Visual SLAMによる自己位置推定と障害物への衝突を防ぎながら飛行できるという特徴は、従来のSkydio2やSkydio X2を踏襲しつつ、撮影用カメラを交換式としたほか、さまざまなペイロードを搭載できる機構を備えている。さらにSkydio X10では、新たに4G LTEと5Gのモバイル通信による機体の制御にも対応した。

NTTコミュニケーションブースに展示されたSkydio X10。
日本初公開となった挟角カメラ「VT300-L」。5000万画素の1インチセンサーを採用した広角カメラとLEDのフラッシュライトを装備している。
Visual SLAMによる夜間飛行を可能にするLEDライト・ペイロード。
Skydioが並ぶ一角には田仲氏の私物だという、Skydio初の製品である「Skydio R1」も置かれていた。

日本からアメリカへ8200kmの遠隔操縦に成功

 この日午前に行われたデモンストレーションは、このモバイル通信を経由して、日本から約8200km離れた米カリフォルニア州サンフランシスコ近郊のサン・マテオにあるSkydio X10を操縦するというもの。デモが始まるとブースの大型ディスプレイには、サン・マテオのSkydio本社の屋上で待機するSkydio X10のカメラが撮影した映像が映し出された。

デモンストレーション飛行はJapan Drone 2024会場のPCからSkydio Cloudを介して、約8200km離れた米カリフォルニア州サン・マテオのSkydio X10を操作する。

 飛行に関する操作とテレメトリーのモニターは、PCのブラウザから「Skydio Cloud」を経由して行う。アプリケーション上のリモートIDのチェックが完了すると、ダイアログの「Launch」をクリックして離陸。機体の操作はすべてPCのキーボードで行う。

 今回は太平洋を挟んだ約8200kmの距離を専用線で結んでおり、通信の途絶や大きな遅延も見られることなく、サン・マテオのSkydio X10は飛行。コマンド操作により、挟角・望遠の画角の切り替えや、サーマルカメラとの切り替えといった操作も、日本国内で飛行させているかのようにスムーズに行われていた。

 この日の飛行はアメリカでのドローンの飛行に関する許可の関係上、サン・マテオの日没時刻となる20時30分(夏時間・日本時刻12時30分)までに終える必要があり、5日10時台に2回のみ実施されるという貴重な機会となった。

Skydio X10が映し出したサン・マテオのSkydio本社。
サンフランシスコ湾の向こうにそびえるディアブロ山と、サンフランシスコ空港に着陸する飛行機。
最大で128倍のズームカメラでサンフランシスコ湾にかかるサン・マテオ・ヘイワード橋を撮影した様子。
サーマルカメラで約270m離れたサン・マテオ大学のグラウンドをサーマルカメラで撮影した様子。
機体やカメラの操作は、すべてPCのキーボードのコマンド入力で行う。

日本でのSkydio X10のモバイル通信対応と将来のユースケース

 NTTコミュニケーションズでは、日本におけるSkydio X10のモバイル通信対応について、NTTドコモのSIM活用に向けた検証をすでに進めているという。なお、今回のデモでは機体側の通信に5Gのモバイル通信が利用されたが、「アメリカではセルラードローンには5Gが使われることが多い」(田仲氏)ためだといい、今後日本向けのSkydio X10での通信方式については6月上旬時点で未定だ。

「モバイルネットワークとSkydioの自律飛行は相性がいいと考えている。ひとつはモバイルネットワークを利用することで、場所に依存することなく巡視・点検ができる。そんな操縦者から機体が見えない飛行でも、Skydioの障害物回避技術があれば、安全に自律的に回避できる」と田仲氏は説明する。

デモンストレーションを説明するNTTコミュニケーションズプラットフォームサービス本部5G&IoTサービス部ドローンサービス部門の田仲秀行氏。

 Skydio X10とNTTドコモのモバイル通信の組み合わせにより、今後、河川巡視や送電線の点検、人の探索といった用途が考えられるとしている。2020年1月にNTTドコモとSkydioが協業検討を合意して以来、Skydioのドローンを使ったさまざまなユースケースの検証を行ってきており、NTT Comブースではその一部も紹介されていた。

NTTコミュニケーションズのブースでは、Skydioを使った自動巡回ソリューションやVTOL型ドローン、UGV、ドップラーライダーといった、NTTドコモのモバイル通信を使った取り組みが紹介されていた。

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