2024年4月22日から25日に米国カリフォルニア州サンディエゴで開催された世界最大級の無人機の展示会「XPONENTIAL」で、米国の航空宇宙工学会社であるSwift Engineeringはテイルシッター型の「SWIFT CRANE(スウィフト クレーン)VTOL」を展示した。

 Swift Engineeringは、レーシングカーの設計・製造を主事業として1983年に創業。オーナーは、パナソニック創業者の孫で元レーシングドライバーのヒロ松下氏がつとめる。

 同社は、2000年代に入って航空宇宙産業への多角化を図り、無人機の開発と製造も手がけてきた。2009年には、同社が開発した「Killer Bee」というUAV製品ラインの設計・販売権を、Northrop Grumman(ノースロップ グラマン)社が買収、「BAT UAS」と改名されている。また同社は、無人システムの操作ソフトウェアの開発にも早期から力を入れている。

 今回展示した「SWIFT CRANE(スウィフト クレーン)VTOL」は、商用および防衛用途で開発されたもので、担当者によると「すでにバハマ国諸島の警備に活用されている」という。

 機体は、テイルシッター型と呼ばれる、尾翼を下に向けて垂直に離陸し、離陸後に水平方向に機体を傾けてから前進飛行する、完全電動の固定翼機だ。離陸後に、左右の翼の後方部を動かすことで、水平飛行に移行する。また担当者によると、「着陸時などに約2分間はホバリングも可能」だという。

固定翼の左右に1つずつ、前方と後方にも1つずつ、合計4つのローターを搭載
下に向いた状態の尾翼

 ペイロードは、電気光学/赤外線(EO/IR)デュアルセンサーまたはマッピング用のカメラを搭載でき、モジュール化することで工具不要でのペイロード交換を実現したという。特許取得済みの「X-blade Technology」を活用、カーボンファイバー使用による軽量化も特徴だ。担当者は「最長で2時間の航続時間を達成した」と話した。

 同社開発のオートパイロットシステムで自動飛行し、垂直離陸のため船上などの限られたスペースからでも運用できる。暗号化もAES 256まで対応し、情報漏洩リスクに備えた。商業分野では、送電線などのインフラ点検、都市での配送サービスなどの用途が見込まれるという。

船上での離着陸の様子
対象物をトラッキングする様子

 ちなみに日本にも、Swift Xiという関連会社がある。本体であるSwift Engineeringと、神戸情報大学院大学が共同出資して立ち上げた。同法人は、NEDOの「産業DXのためのデジタルインフラ整備事業/3次元空間情報基盤に関する研究開発」に、宇宙サービスイノベーションラボ事業協同組合、LocationMind、ゼンリン、Intelligent Styleと共同事業者として採択され、現在も取り組み中だという。今後も、国内外における活用の進展に注目したい。

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