産業用水中ドローンを中心に据えたNJSの展示ブース

 上下水道などの総合建設コンサル企業NJSは、メンテナンス・レジリエンスTOKYO 2023にて、産業用水中ドローン「WATERi(ウォーターアイ)」とトレーニング用シミュレーター「FFバーチャル(仮)」などを展示した。デモ展示した開発中の最新機ウォーターアイFF2は、連続稼働時間が現行機の2倍超の約9時間と大幅にパワーアップ。上下水道施設の劣化・損傷確認だけでなく海洋調査や船底点検などの分野での本格活用も視野に入れたハイグレード機で、今年度中の発売を目指している。

 NJSは、同社のドローン開発部門から派生したドローン点検調査会社「FINDi(ファインドアイ)」とともに出展。実機展示ブースでは、現行の産業用水中ドローンウォーターアイFF1と、開発中のハイエンドモデルFF2の2機を紹介した。
 ウォーターアイは、機体の天面だけを水面上に出す深度で水中を潜航することにより、水中と水面上の両方を一度に撮影できるのが特徴。有線ケーブルをつないだ状態でマンホールから上下水道に投入することで、作業員が管路内に立ち入らなくても地上から操縦や点検、調査が行える。
 従来、管路内を点検するには、水を抜くか、水が抜けない場合は潜水用機体と水上走行用機体の2機を用いて水中と水面上を別々に撮影する必要があった。ウォーターアイは、2つのFPVカメラを両方にそれぞれ設置しているため、水中と水面上を一度に撮影することができる。
 特に、天面にはマルチプラットフォームと呼ばれる外付けカメラ用のマウントが装着されており、用途に応じて市販のカメラを自由に固定できるフレキシブルさも魅力の1つ。これにより、アクションカメラGoProや4Kカメラ、広角カメラ、360°カメラなど、用途に合わせて自由に撮影機材をカスタマイズすることができる。マウントの自由度は高く、例えばカメラの搭載に合わせてLEDライトの角度なども自由に調整することができる。

上部マウントの自由度が高いのもウォーターアイの特徴の1つ

 全周音響ソナーも搭載しており、視認性の悪い濁った水の中などでも構造物の形状や位置を把握することが可能。水中撮影用の下部FPVカメラは上下のチルト動作にも対応しており、取得したデータから3Dモデルを生成することもできる。
 FF1は長さ457mm、幅575mm、高さ330mmで、バッテリーを含めた重量は約16kg。最大深度100m、最大速度は3ノットで、約4時間まで連続稼働が可能となっている。

現行型のFF1

開発中のFF2は大幅パワーアップ/船底点検等での活躍を目指す

 開発を進めているハイエンドモデルのFF2は、長さ612mm、幅478mm、高さ374mm。現行機のFF1より長さと高さが一回り大きく、重量も24kgと現行機から約1.5倍重くなっている。FF1はバッテリーが1つなのに対し、FF2では3つのバッテリーを搭載したことで連続稼働時間は現行機の約4時間から9時間へと大幅アップ。海洋での本格的な利用も見込んでおり、最大深度も300mと現行機の3倍に深化し、最大速度も+1ノットの4ノットに向上している。

FF1より一回り大きいFF2だが、FF1と同じくマンホールから投入可能なサイズに収まっている

 同社が期待している用途の1つが船底調査。通常、船の保守点検などで船底を調査する場合は、陸に上げて直接確認するか、ダイバーを雇って海の中で調査する必要がある。しかし、船を陸に上げると費用が莫大になるほか、ダイバーによる点検でも天候次第で潜れなかったりそもそも高齢化で人材が確保できないなど、多くの課題があるという。今後こうした用途でFF2の導入を進めることにより、船を陸に上げずに海中から船底状態を点検することが可能となり、コスト削減など多くの課題解決につながる可能性がある。
 海洋シーンでは、このほかにも堤防や岸壁の調査などを検討。さらに、川であれば護岸調査、ダムであれば設備点検など、幅広い用途での活用を目指している。担当者は「水中ドローンは海外製も少なくない中、国産ならではのサポートやメンテナンス体制も訴求していきたい」と話した。

トレーニング用シミュレーターで独特の挙動を体験

 同社は、オペレーターの操縦技量を向上させるべく、トレーニング用シミュレーターの開発も進めている。「FFバーチャル(仮)」は、ウォーターアイの実際の挙動を体験できるシミュレーターソフト。水道を想定し、水中での前進・後退や上昇下降などの基本操作が体験できるほか、構造物の損傷や配管の点検シーンにおいて、どのような角度で近づくとどのような撮影ができるかを直観的に学ぶことができる。実機と同じゲーム機用のコントロ―ラーを操作して動かす仕組みで、画面には方角や傾きといった位置情報などが表示される。

シミュレーター上で配管の様子などを確認する担当者

 機敏に動く空中ドローンとは違い、水中ドローンは独特の挙動がある。会場では、シミュレーターの操縦体験も開催しており、参加者は独特の動作に最初は戸惑いながらも操縦を楽しんでいた。同社は今後もシミュレーターの開発を進め、より訓練で活用しやすくするという。

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