オリジナルの測量用LiDARシステムやドローンを開発・販売するアミューズワンセルフは、2026年4月に産業用ドローン「GLOW.L Rev.2.0」と「GLOW.H Rev.2.0」を発売した。同社が独自に開発して販売してきた「GLOW」シリーズを大幅に改良・進化させたモデルで、従来機と同様、バッテリー仕様の「GLOW.L」と、エンジンハイブリッド仕様の「GLOW.H」という2モデルを展開。“Rev.2.0”としてバッテリーモデルとハイブリッドモデルの主要コンポーネントを共通化したことで、リーズナブルな価格を実現した。これまでGLOWシリーズを運用してきたユーザーの声を反映させ、ユーザービリティやデザイン性を大幅に引き上げている。この新しい「GLOW Rev.2.0」の開発の狙いについて、同社代表取締役社長の冨井隆春氏とレーザー開発責任者の冨井天夢氏に聞いた。

価格を抑えて手軽に使える“かっこよくて使いやすい”国産ドローン

 「10年前はドローンが飛んだら皆『おっ!』と驚いていたが、それが5年前には“何を積むか”によってドローンを選ぶようになり、今はドローンで取ったデータをどう処理するか、という時代になった。しかし今なお現場はドローンの取り扱いに翻弄されて、ドローンを飛ばす目的である高品質なデータの取得まで至らないことが多い」。

 こう語る冨井隆春氏は、GLOWシリーズを改良するにあたって、価格を抑えて手軽に使えるようにすることと、“かっこよくて使いやすい”ドローンにすることに力を注いだという。

株式会社アミューズワンセルフ 代表取締役社長CTO 測量士/土木施工管理技士 博士(工学) 冨井 隆春氏
株式会社アミューズワンセルフ 代表取締役社長CTO 測量士/土木施工管理技士 博士(工学) 冨井 隆春氏

 まず、価格を抑えるためにGLOW.LとGLOW.Hのフレームやローターをはじめ、ほとんどの部品を共通化した。前作ではGLOW.Lが6ローター、GLOW.Hが4ローターと、そもそも機体の構成が大きく異なっていたが、Rev.2.0では機体の胴体に当たる部分の上部を、GLOW.Lではバッテリーベイに、GLOW.Hではエンジンと燃料タンクとしてモジュール化して作り分けるという設計により、大幅なコストダウンを実現している。

GLOW.H Rev.2.0
GLOW.H Rev.2.0
GLOW.L Rev.2.0
GLOW.L Rev.2.0

現場の負担を軽減する「可倒式ローターアーム」と「可変スキッド」

 ローターアームは可倒式としたことで、コンパクトに収納が可能になった。アームは斜め上に折りたたまれる作りで、格納時の小型化を実現した。格納式のため機体の収納箱をより小さくすることができ、現場でクルマに積み下ろしするような場合でも、より作業がしやすくなっている。

4本のローターアームは折りたたみ式で、隣のアームの付け根に重なるように、やや“斜め上”にたたまれるため、収納状態はとてもコンパクトになる。
4本のローターアームは折りたたみ式で、隣のアームの付け根に重なるように、やや“斜め上”にたたまれるため、収納状態はとてもコンパクトになる。
ローターアームを折りたたんだ状態。
ローターアームを折りたたんだ状態。
小型のバンにも無理なく収まるサイズ。実際は専用の収納箱に入れて運搬するが、ここでは機体サイズの比較(スケール感)をわかりやすくするためにそのまま載せている。
小型のバンにも無理なく収まるサイズ。実際は専用の収納箱に入れて運搬するが、ここでは機体サイズの比較(スケール感)をわかりやすくするためにそのまま載せている。

 また、機体の下部左右に装着されるスキッド(降着脚)は脱着式で、その取り付け方向を90度変えて取り付けることもできる。天夢氏は、「機体に搭載するペイロードの形状に合わせてスキッドを取り付けてもらえばいい。また、点検作業などで機体を対象物に沿って前進させながら左右の対象物を撮影するような時にも、スキッドを前後に取り付けるといった使い方もできる」と語る。

株式会社アミューズワンセルフ 開発課 レーザー開発責任者 冨井 天夢氏
株式会社アミューズワンセルフ 開発課 レーザー開発責任者 冨井 天夢氏

 なお、その脱着はスキッドの両側を外に引き広げて外し、マウントの穴に差し込むだけとシンプルだ。しかし、自動着陸でハードランディングしてもスキッドが外れたりしないようにマウント部の構造には工夫が凝らされている。また、一見華奢に見えるデザインだが、「機体の最大離陸重量と同じ鉄板にスキッドを取り付けて、自動着陸の降下速度と同じ加速度で、何度も落として壊れないことを確認している」(隆春氏)という。

スキッドは脱着式となっていて、脱着はスキッドをやや広げて機体下面の支持部に差し込むだけと簡単。それでも飛行中に不用意に外れることはなく、また十分な強度を持っている。
スキッドは脱着式となっていて、脱着はスキッドをやや広げて機体下面の支持部に差し込むだけと簡単。それでも飛行中に不用意に外れることはなく、また十分な強度を持っている。

こだわりの素材と造形で機能をデザインに昇華

 機体は最新の3Dプリンターによる造形や、マグネシウムダイキャスト製のアームマウント、カーボン製のローターアームなど、それぞれの部位に隆春氏が最適と考える素材を使用。ドローンのローターアームは一般的に「3K」と呼ばれる、カーボン繊維を交互に織ったものが使用されるが、GLOWシリーズのアームは「UD」と呼ばれる繊維が1方向に並んだものを重ねて使用。「繊維の折り目が見える3Kに対して真っ黒なUDのカーボンはかっこいい」(隆春氏)とデザイン性にもこだわった。

 GLOWシリーズは随所にこうしたデザイン性が追求されており、GLOW.Hを象徴づける燃料タンクは、単に燃料を入れる容器としてだけでなく、機体のフォルムを形作るアイコンだといえる。さらに前方にはエンジンの冷却ファンの導気口も設けられているなど複雑な形状であり、そのために専用の金型で真空成型されている。また、目視でもガソリンの残量が直感的に把握できるデザインは、現場で役立つ実用性の高さを備えている。

GLOW.Hの燃料は市販の混合ガソリンを使用。
GLOW.Hの燃料は市販の混合ガソリンを使用。
半透明の燃料タンクを採用。外部からガソリン残量を一目で確認できる。
半透明の燃料タンクを採用。外部からガソリン残量を一目で確認できる。

 また、GLOW.HのエンジンはO.S.Professional(小川精機)のUAV用レンジエクステンダーを採用。スターター一体型の発電機を採用しており、飛行中であってもエンジンを始動できるのが大きな特徴となっている。さらにGLOW.Hに搭載するにあたって、サイレンサーの排気口が真上に向くようにレイアウトした。これにより同機が飛行中に地上で聞こえるエンジン音を大幅に低減させたほか、サイレンサーの下部に配置された電子基板冷却用のファンが吹き上げる風により、排気が拡散されて目立たないようにも工夫されている。

GLOW.Lはインテリジェントバッテリーを採用しており、脱着はワンタッチで可能。ラッチの音にもこだわりが注がれている。
GLOW.Lはインテリジェントバッテリーを採用しており、脱着はワンタッチで可能。ラッチの音にもこだわりが注がれている。
GLOW Rev.2.0はいずれも機体側面にサブバッテリーを搭載。GLOW.Lの場合、メインバッテリーを交換中も機体やLiDARに電源が供給される。
GLOW Rev.2.0はいずれも機体側面にサブバッテリーを搭載。GLOW.Lの場合、メインバッテリーを交換中も機体やLiDARに電源が供給される。
エンジン始動時は排気が目立つが、マフラー周辺を強制換気することで排気が拡散され、すぐに目立たなくなる。
エンジン始動時は排気が目立つが、マフラー周辺を強制換気することで排気が拡散され、すぐに目立たなくなる。

レベル3.5飛行を見据えた「通信・センサー・カメラ」の進化

 近年は測量をはじめとした産業用途での飛行では、レベル3.5に代表される遠隔地からのモバイル通信や衛星通信を使った操縦が中心になりつつある。こうした動向を踏まえてGLOW Rev.2.0シリーズでは、コントローラーと機体間の直接通信だけでなく、モバイル通信や衛星通信機能をオプションで用意した。

 また、レベル3.5飛行に欠かせないFPVカメラは高画質のカメラセンサーを採用し、さらにジンバル付きのものとしている。「ドローンの用途の多くが空撮。そのため単にFPV用としてだけでなく、撮影用途にも耐えられる高画質のカメラを採用した」(隆春氏)という。また、前方90°の範囲の障害物を検知するセンサーを搭載したほか、下方に向けて対地距離センサーを装備して自動着陸ができるようにするなど、自動飛行を見据えた仕様となっている。

FPV用のカメラはジンバル付きで、撮影用途にも耐える性能を備えている。可動式で、必要に応じて真正面から真下まで任意の方向に向けることができる。
FPV用のカメラはジンバル付きで、撮影用途にも耐える性能を備えている。可動式で、必要に応じて真正面から真下まで任意の方向に向けることができる。

自社開発がもたらすサプライチェーンへの信頼

 ここまで紹介してきたGLOWシリーズは、アミューズワンセルフという大阪発の企業が企画・設計・製造を手がける国産のドローンである。独自のフライトコントローラーやEMU(エンジンマネジメントユニット)といった主要な電子回路は自社で開発している。

 機体を構成するハードパーツは3Dプリンターを使って製造するほか、一部の部品は日本製の工作機械を使用する中国以外の地域の工場で生産されている。電子基板には200以上の部品が実装されているが、万が一こうした部品の供給に支障が発生しても、すぐに基板の設計を変更して対応できるのが自社開発の強みだという。

 隆春氏は、「近年、ドローンの導入においてサプライチェーンリスクに対する関心は高い。こうしたリスクには部品供給とデータセキュリティの観点がある。データセキュリティに関係ない部品については、やはり価格と性能面で中国製に一日の長があり、GLOWシリーズでもモーターやプロペラといった部品で採用している。こうした部品の供給については常に市場動向を注視すると同時に、十分な在庫を確保している。一方、データセキュリティについては、とりわけ飛行やミッションをつかさどるコントローラーが課題だ。ドローンのいわば“脳”に当たる電子回路に、万が一でも不審なプログラムが紛れ込むリスクは看過できない。GLOWシリーズはGCSのソフトをQGC(QGroundControl)ベースで自社開発し、映像伝送も含めてコントローラーの画面で確認できる。今後はOSの国産化やハードも含めた自社開発製品を供給していきたい」と語る。

広大な敷地内にキャリブレーション環境を整備したドローンフィールド

 そんなアミューズワンセルフは、大阪府北部の能勢町に独自の飛行フィールド「AOS(Amuse OneSelf)ドローンフィールド」を2026年春に開設した。

 もともと同社は、能勢高原ドローンフィールドをはじめ、一般開放されているドローン飛行場で飛行試験などを行っていた。しかし、製品の開発においては特許取得のために飛行試験などを秘匿する必要があるため、自社でテストフィールドを開設することに踏み切った。「ドローンを開発する中で、風や雨といった気象条件をはじめ、どういう状況で飛行させたかというエビデンスが求められる。そのためには気象計をはじめとした試験機器が必要になり、そういった機器を常設できる場所が欲しかった」(隆春氏)という。

AOSドローンフィールドの入り口
AOSドローンフィールドの入り口

 さらにフィールド内には、ドローンレーザー測量の精度を左右する「ボアサイトキャリブレーション」に必要な基準点が5つ設置されている。測量機器は定期的にキャリブレーション(機器のセンサー調整)を行う必要があり、その際に基準点を用いて精度を検証する。そのため、UAVレーザー測量を実施する作業機関は、常設の基準点のある施設や、測量に基づいてわざわざ基準点を設置して機器のキャリブレーションを行わなければならないが、結構な手間がかかってしまう。しかし、本フィールドにはあらかじめ高精度な基準点が常設されているため、その手間を大幅に削減できる。

 アミューズワンセルフでは、ドローン用レーザースキャナの「TDOT」シリーズも展開しているため、今後、このフィールドを活用し、顧客の依頼を受けてキャリブレーション代行や、希望するユーザーに対して施設の利用サービスを提供する予定だ。

離着陸を行う敷地にはボアサイトキャリブレーションに必要な基準点が5つ設置されている。
離着陸を行う敷地にはボアサイトキャリブレーションに必要な基準点が5つ設置されている。

 2026年4月の取材時には、フィールド敷地の造成と基準点の設置が終わったばかりの状態であったが、今後、ユニットハウスを設置してトイレやGNSS受信機、気象計などを整備していくという。このAOSドローンフィールドは「この敷地を離発着場所にして、周囲の山林上空を最大1km先まで飛ばせる」(隆春氏)広大なフィールドとなっており、より実践的な運用試験が可能だ。

 GLOW Rev.2.0シリーズは、第一世代のモデルのユーザーの声を随所に反映した形で設計された。同社製品を取り扱う代理店は全国に14社あるが、一部代理店は1年に3回程度、ユーザーとのミーティングを開催している。この場でメーカーとユーザーが直接話をする中で、ユーザーの声をすくい取り、製品開発にフィードバックさせているという。

 前述のGLOW Rev.2.0の機体各部にちりばめられた工夫の数々は、こうした声を反映させたものだ。また、コントローラーのGCSも、「操縦者の負担を軽減するとともに、飛行中は操縦者が機体の状態を直感的に把握できるように、わかりやすいユーザーインターフェースを心掛けている」(隆春氏)という。さらに、作業の自動化、効率化も追及しており、ドローンの飛行後に記載が義務付けられている飛行日誌をPDF形式で出力したり、UAVレーザー測量の帳票類も自動で出力したりできるようになっている。

オリジナルのGCSソフトは、飛行後、飛行記録を法定の書式のPDFで出力することができる。
オリジナルのGCSソフトは、飛行後、飛行記録を法定の書式のPDFで出力することができる。

 「デザインや形が汚い測量機器は絶対性能が悪い。だからこそアミューズワンセルフの製品は、機能だけでなく見た目にきれいなものを作る」(隆春氏)というのがアミューズワンセルフのモノづくりに対するスタンスだ。GLOW Rev.2.0は徹頭徹尾この哲学が貫かれたドローンとして、この春、世に送り出される。

お問い合わせ先

株式会社アミューズワンセルフ
〒530-0004 大阪市北区堂島浜1丁目2番1号 新ダイビル24階 2401
https://amuse-oneself.com/
info@amuse-oneself.com