実際に飛んで見せることにこだわった
今回実施されたデモ飛行について、担当するANAホールディングス未来創造室モビリティ事業創造部の保理江裕己氏とLead, Strategic Business Relationshipsの小早康之氏に話を聞くことができた。(インタビューは10月5日時点のもの)
──デモ飛行は計画通りに行われたのでしょうか。
保理江氏:デモ飛行の内容に関しては、4月3日に日本国際博覧会協会が公表してから内容に変更はありません。夢洲会場ポートを拠点に湾岸周辺エリアを飛行し、運航時期は9月下旬から閉会(10月13日)までとなっています。空飛ぶクルマの社会実装に向けて立ち上げられた「空の移動革命に向けた官民協議会」(以下、協議会)の中にロードマップがあり、大阪・関西万博での飛行に向けては2023年度末までに様々なルールや規制が整備され、我々は24年から準備を進めて今回のデモ飛行を迎えました。
今回使用したのは量産試作機のうちの1機で、性能としてデモ飛行を行うのは全く問題ないものの日本では型式証明を受けていないので、実際に飛ばすには飛行許可が必要でした。そうした調整を航空局など関係者のみなさんとしながら、お客さまにしっかり見ていただけるように考えて、飛行ルートが決まったという流れです。飛行に必要なアセンブルやテストを行うために、9月上旬から会場に入って準備を開始し、予定通りに行うことができました。
小早氏:日本でのデモ飛行は去年11月に行ったのに次いで2回目。本社がある米国カリフォルニア州以外では韓国とドバイで飛行実績があります。今回は本社で行ってきた試験飛行に比べれば非常に簡単なフライトなので特に問題はないのですが、毎日同じ時間に飛ばすというのはやっていないので、高頻度運航の予行練習にはなった感じはします。
──今回のデモ飛行では何が目的とされていたのでしょうか。
保理江氏:8月5日に発表(※1)していますが、ANAとJobyは日本でエアタクシー事業合弁会社を設立して本格的な準備検討を開始しています。実装には社会需要性が求められるため、今回の主な目的は機体のデータ収集というよりは、離着陸時の飛行の安定性や離陸してからスーっと巡航に入る速度の速さ、上空ではもっと上を飛んでいるヘリの音は聞こえるのにJobyは聞こえないという静かさを実際にみなさんに体感してほしいというところが大きいです。
小早氏:Jobyとしては、日本で将来的な商用運航を見据えた動きがある中で議論に参加するところからスタートして、現時点では試験機を一時的に飛ばす条件が整ったというだけですが、決められたルールに沿って実際に飛ばすのが目標だと言えます。
また、エアタクシーとして乗っていただくわけですから、お客様にとって利便性の高いところに離着陸するのは非常に重要で、静かさは大前提になります。そこは本当に力を入れていて、プロペラの設計からモーター、バッテリー、機体の形状やソフトウェアも含めて全て自分たちの中で開発してきたからこそ完成できたもので、そこにJobyのユニークさがあります。
──実施にあたり法整備や規制などの調整は大変でしたか?
保理江氏:空飛ぶクルマと一括りにされますが、Joby S4は翼にプロペラが付いた(ベクタードスラスト)タイプです。関西などでデモ飛行しているイーハン184やSkyDriveはマルチコプタータイプで、飛行する場合に細かい点で条件が異なります。それぞれ必要な書類があるといったことは協議会のワーキンググループ内で積極的に発言して働きかけ、盛り込んでいただいたというのがあります。
他にも具体的な話で言えば、バーチポートのような離着陸場はどういう設計でどういうスペックにするのかといった明確なガイドラインを整備してきた結果、我々はここでデモ飛行が行えたと言えます。
小早氏:Joby S4は米国ではパワードリフトというカテゴリーですが、日本では小型飛行機に分類されるといった基本的な考え方がまとまってきたので、そういう意味ではいろんな環境が整ってきたと思います。
──今後の動きについて教えてください。
小早氏:機体に関しては、まずFAA(米連邦航空局)の型式証明を取って、それから国土交通省の型式証明を取るという2ステップになると考えています。FAAの型式証明プロセスとしては簡単に言うと今は第4フェーズにあり、来年にはFAAのパイロットによる試験をスタートできると思ってます。日米連携で進めていますが、日本に導入できるタイミングは審査次第ということです。
保理江氏:型式証明に関してはトヨタ自動車も関わっていて、まさにチームでマニュファクチャリングとかサーティフィケーションを最終フェーズに向けて進めているところです。事業を進める上で、安全安心なモビリティと感じていただけるのかどうかが一番大事になるので、今回の経験を次のサービスにつなげていきたいと考えています。
──今回のデモ飛行は日本の業界にとって大きなスタートラインになりそうです。
小早氏:Jobyとしてはエアタクシーを世界展開していきたいですし、いろんな所で需要があると考えていますが、新たな需要があるからというだけで市場導入するわけにはいかず、やはりその国々の環境整備や法整備、パートナーがいるかを総合的に検討する必要があります。今は米国がリードしていますが、日本でも関係者やパートナー企業に高い関心を持っていただいているので、グローバルで見てもマーケットとして整いつつあると思っています。
日本での導入に向けてはANAさん主導でいろんな企業とパートナー作りをしてきましたし、今回のデモ飛行を通じて将来の事業として投資しましょうと感じていただけると思います。政府の方もこれまでの取り組みはこのためだと実感してもらえることで、環境整備もまた前進できるかと思います。
保理江氏:デモ飛行を見た方たちから、あれは空飛ぶクルマじゃない、ドローンの延長線でもない、というコメントをいただいていますが、飛行機ではありますけれど移動手段としては本当に全く新しい乗り物です。いろいろ情報を見て想像いただいていると思いますが、やはりリアルに勝るものはありません。実際に目の前にしないとその先を想像できなかったりするので、とにかく実物を飛ばして見ていただくことにこだわってここまでやってきました。ここから次の発想も出てくるし、その先の動きにつながる1歩にはなったかなとは思っています。
※1 8月5日、ANAホールディングスとJoby Aviationは日本におけるエアタクシーサービス提供に向けて、合弁会社設立の本格検討を開始すると発表。次世代エアモビリティ「eVTOL」(電動垂直離着陸機、通称 “空飛ぶクルマ”)を将来的に100機以上導入し、首都圏をはじめとした日本各地への展開を目指す。
https://www.anahd.co.jp/group/pr/202508/20250805-3.html
【参考記事】ANAHDとJoby、エアタクシー事業合弁会社設立の検討開始 - ドローンジャーナル
https://drone-journal.impress.co.jp/docs/news/1187606.html
ベテランパイロットも日本の快適な飛行を実感
デモ飛行は9月30日に報道公開した後、一般公開が10月1日から13日まで11日間に1日2回(一部運休や時間変更あり)行われ、計24回の総飛行時間は約4時間となる。中止したのは雨天が続いた4日と、地上側の電波が一部不安定だったため点検を行った1日の午後回のみ。雨で開始時間が延期することもあったが、安全面を重視しつつも可能なかぎり飛行を行おうとしていたことがわかる。
インタビューした保理江氏は最終回の際、参加者が集まるポート前で飛行状況説明をしており、現場と一緒になってデモ飛行を盛り上げていた。終了後のコメントでは「着陸した時に自然と拍手に包まれ、本当にやってよかったと思った。ありがとうという言葉に勇気づけられ、これから事業化していくにあたり大きな自信になりました」と述べた。
小早氏も「何事もなく安全に飛べて、多くのみなさんに私たちの乗り物を見ていただけて感無量ですし、ほっとしています」とコメント。今回のフライトは何点だったかという質問に対しては「機体は問題なく計画どおりだったが、雨で飛べない日があり申し訳なかったので98点ぐらいと思っている。今回は試験機なので残念ながら乗客を乗せて飛べなかったが、次回日本に来る時は美しい日本を低空域の空から見下ろせる体験ができるよう、引き続きがんばっていきたい」と述べた。
さらに最終飛行の後、今回のデモ飛行を担当したJobyのチーフ・テストパイロットであるJames “Buddy” Denham氏に万博でのフライトについて感想を聞いたところ、以下のようにコメントした。
「万博でのフライトはたくさんの人たちに飛んでいる姿を見てもらうことができて、とても素晴らしい体験だった。今回飛ばした機体は量産試作機だが性能としては全く問題なく、安定した飛行ができた。
これまでに何度もテスト飛行を行っているが、飛行条件はそれぞれ違う。例えば、暑いドバイではラジエーターやモーターの調子を見ながら高温でも上手く飛行できることを確認している。本社があるカリフォルニア州(の飛行試験施設)はマリーナが近いので万博と似ているけどだいぶ涼しい。気象条件で言えばここはその中間で、エアコンが付いていない試作機でも気持ちよく飛ぶことができた。
今後、実装化される時にはさらに快適に飛べるようにエアコンも含めて機能が追加されるはずなので、サービスの実現に向けて引き続きテストを重ねていくつもりだ」
万博で大きな注目を集めたANAとJobyが日本でエアタクシー事業をどのように進めていくのか、引き続き注目していきたい。
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| ISBN | 978-4-295-02359-3 |
| URL | https://research.impress.co.jp/report/list/cishidaieamohirite-i/502359 |
