Terra Droneは4月28日、防衛事業に関する進捗を発表。同社の欧州拠点であるオランダ子会社を通じて、ウクライナの迎撃ドローン企業WinnyLab(ウィニーラボ)へ出資したことを明らかにした。出資額は非公表。WinnyLabは、ロシアとの戦闘において軍などに対し電動の固定翼型ドローンを供給してきた実績を持つ。

 Terra Droneは3月31日、ウクライナのAmazing Dronesへの出資および業務提携を発表しており、同国企業への投資は今回で2社目となる。実戦環境で技術が磨かれるウクライナ市場への関与を強めることで、防衛分野における事業基盤の強化を図る狙いだ。

 Amazing Dronesへの出資と業務提携では、垂直発射(ロケット)型の迎撃ドローン「Terra A1」の開発・生産・販売に乗り出す方針を示している。これに対し、今回のWinnyLabへの出資は、水平発射型の固定翼迎撃ドローン「Terra A2」の開発・生産・販売を目的としたものだ。すなわち、異なる発射方式と運用コンセプトを持つ2機種を軸に、防衛用途におけるドローンのプロダクトポートフォリオを拡張する戦略と位置付けられる。

固定翼型迎撃ドローン「Terra A2」
水平発射の固定翼型迎撃ドローン「Terra A2」。最高速度は攻撃型無人機「シャヘド」を上回り、ウクライナ戦争で多く用いられるシャヘドを迎撃できることを強みとしている。(出所:Terra Drone)
攻撃型無人機「シャヘド」の外観、概要
多く使用されている「シャヘド」の概要。(出所:Terra Drone)

 両機の性能にも明確な役割分担が見て取れる。Terra A2は電動固定翼機で、飛行時間は40分以上、最高速度は312km/h、航続距離は75kmとされ、広域監視や長時間哨戒、長距離迎撃といった前線域での運用を想定する。一方、Terra A1も電動で、飛行時間は15分、最高速度は300km/h、飛行距離は32kmとされ、拠点防護や最終迎撃といった近距離・即応性重視の任務に適している。

 Terra Droneは、固定翼型のTerra A2を「前段防衛」、ロケット型のTerra A1を「最終防衛」と位置付け、段階的に脅威へ対処する“多重防衛”コンセプトを掲げる。

多重防衛の概念図(Terra A1は短距離、Terra A2は中距離)
「Terra A2」と「Terra A1」による“多重防衛”の概念図。(出所:Terra Drone)

 今回、Terra A2の飛行映像が公開されたほか、2026年3月に発表され実戦配備されたばかりのTerra A1が、ロシア軍の攻撃型無人機「シャヘド」を迎撃する様子も紹介された。実戦環境における運用実績を前面に打ち出すことで、同社製品の信頼性と即応性をアピールした格好だ。

写真:話をする徳重氏
防衛事業進捗発表会にて、「Terra A1」の模型を前に質疑に答えるTerra Droneの徳重徹社長。

 Terra Droneの徳重社長は、自社の国際的な事業展開力とWinnyLabの技術を組み合わせることで、「実戦で検証された信頼性ある技術を世界へ届け、国際社会の安全と安定に貢献します」と述べた。また、WinnyLabのオルハ・ビハンCEOも「このパートナーシップは重要な第一歩であり、ウクライナで開発・実証された技術を世界市場に展開していきます」と協業への期待を示した。

小型迎撃ドローン市場を主戦場に据える戦略

 発表会ではあわせて、ウクライナ戦争や中東情勢の緊張などを背景とした防衛用ドローン市場の構造変化についても言及があった。徳重社長は、ドローンが低コストで戦況を左右する“ゲームチェンジャー”であるにもかかわらず、既存の防衛産業は150kg未満の小型ドローンに対する関心が限定的であると指摘。その結果、「各国とも小型ドローン領域はスタートアップに依存する傾向があります」と分析した。その上でTerra Droneとして、「150kg未満の小型ドローン分野でナンバーワン企業を目指します」と明確な目標を掲げた。

 防衛用ドローンは、前線での偵察を担う「FPVドローン」、飛来する航空機や無人機に対処する「迎撃ドローン」、さらには海上で運用される「無人ボート」などに分類される。Terra Droneはこのうち迎撃ドローンを主軸とし、短距離領域(20~30km)はTerra A1、中距離領域(70〜100km)はTerra A2でカバーする体制を構築済みである。今後はさらに、150〜200km級の長距離迎撃を可能とするエンジン推進型固定翼ドローンの開発を進め、製品ラインアップの拡充を図る方針も示された。

「スピード」と「自律性」が競争軸に

 徳重社長はまた、従来型兵器とドローン開発の本質的な違いとして「開発スピード」を挙げた。急速に変化する世界のドローンメーカーとの競争を優位に進めるには、短期間での設計・実装・改良サイクルが不可欠であり、これが競争優位を左右する要素になるという認識だ。

 その上で、今後グローバル市場で競争に勝つための要件として、①実戦における有効性と信頼性、②価格競争力、③AIの活用と自律機能――の3点を提示した。特に自律機能については「いまだ決定的な優位を確立したメーカーは存在しません」と説明し、開発の加速が不可欠との見方を示した。

 ウクライナ企業との連携強化と製品ラインアップの拡張を通じて、Terra Droneは防衛ドローン市場における存在感を一段と高めつつある。実戦で鍛えられた技術を取り込みながら、グローバル市場への展開を見据える同社の戦略は、小型無人機が主導する次世代防衛産業の潮流を象徴する動きといえそうだ。