SkyDriveと西日本高速道路(NEXCO西日本)は、「サービスエリア(SA)・パーキングエリア(PA)における空飛ぶクルマ活用事業に関する連携協定」を締結した。NEXCO西日本が管轄するSA・PAに空飛ぶクルマを導入し、高速道路インフラと次世代エアモビリティを結びつける取り組みであり、地上交通と空の移動をシームレスに接続する新たなモビリティ基盤の構築を目指す。
4月24日に実施された締結式には、NEXCO西日本 代表取締役社長 芝村善治氏と、SkyDrive代表取締役CEO 福澤知浩氏が出席。SA・PAを単なる通過拠点から、空と地上を結ぶハブへと進化させる構想が示された。
万博レガシーとインフラ戦略が合致、広がる社会実装の現実性
今回の連携の起点となったのは、SkyDrive側からの提案だ。背景には、昨年2025年に開催された大阪・関西万博でのSkyDriveによるデモフライトや、大阪港に整備されたバーティポートの存在がある。これらの実証を契機に、NEXCO西日本が参画する関西経済連合会でも「先進技術を社会実装し、万博のレガシーとして継承していく」という方向性が共有され、協議が具体化した。
NEXCO西日本側にとっても、この連携は戦略と整合する。同社は2025年に策定した中期経営計画「MOVE!2030」において、以下のような方針を掲げている。
- SA・PAの付加価値向上
- 自然災害への対応力の強化
- 次世代モビリティの導入
空飛ぶクルマの導入は、これらを横断的に実現し得る施策であり、「新たな価値を創造し、地域とともに発展する」というビジョンとも一致する。芝村氏は「国内で最も社会実装が進んでいるのはSkyDriveだと認識しています。すでに複数の自治体やインフラ企業とも連携を進めており、そこに当社も加わります」と評価し、今後は具体的な導入エリアや活用方法の検討を共同で進めるとした。
一方、SkyDriveの開発状況も着実に進展している。山口、愛知、大阪の試験場で年間200回規模の飛行試験を実施し、極端な気象条件下での検証も完了。さらに直近半年では都市部3地点でデモフライトを実施しており、福澤氏は「飛行性能はほぼ完成段階にあります」と説明する。
加えて、社会実装の鍵を握る型式証明についても、5段階中3段階をクリア。JR九州や大阪メトロといった複数の鉄道事業者との連携も進行しており、2028年頃のサービス開始を見据えた具体的なロードマップが描かれている。
SA・PAを観光拠点・防災拠点に転換、広がるユースケース
今回の協定における最大の特徴は、「高速道路×空」の融合という点にある。現時点では、SA・PAの遊休地を活用し、バーティポート機能を併設する構想が検討されている。
具体的な活用イメージとしては、単なる移動手段にとどまらない多面的な価値創出が想定されている。
- 観光を目的とした遊覧飛行の提供
- 観光地へのアクセス手段
- SA・PAの目的地化(“旅ナカ”拠点化)
- 災害時の情報収集・緊急輸送拠点
とりわけ注目されるのが、防災インフラとしての役割だ。災害発生時には、被災状況の迅速な把握や復旧支援に活用される可能性があり、高速道路ネットワークとの親和性は高い。NEXCO西日本は今後、事業開発部を中心に段階的な検証を進める方針だ。バーティポート設置に必要な条件や運用モデルについては前例がなく、「検討と学習を並行して進める段階にあります」と芝村氏は話す。
一方で、すでに具体的な候補も浮上している。JR九州との連携が進む九州エリアでは、別府湾サービスエリア(標高約380m)を拠点とした遊覧飛行の可能性が示されており、観光資源との結びつきが期待される。
インフラ連携が鍵を握る「モビリティ革命」の実装フェーズ
福澤氏は、「100年に一度のモビリティ革命を牽引するというミッションのもと、SA・PAを“感動的な空の体験に出会える目的地”へと進化させていきます」と意欲を示した。
空飛ぶクルマの社会実装は、機体開発だけでは成立しない。インフラ、交通事業者、自治体といった多層的な連携が不可欠であり、今回のNEXCO西日本との協業はその象徴的な一歩といえる。空飛ぶクルマの実装には多方面との協力関係が必要なことから、今後も協定締結によって取り組みが加速していくとされる。
