2026年4月16日、JISDA(日本技術安全保障戦略機構)は、電磁環境と無人機運用を地図上で統合的に可視化・分析できるブラウザベースのシミュレーションプラットフォーム 「EMAQI」 を発表した。

JISDA、電磁環境と無人機運用を可視化する統合シミュレーションプラットフォーム「EMAQI」を発表

 高解像度の衛星画像を背景とした2Dマップ上に、通信ノード、レーダー、センサー、ジャマー、デコイ、UAVなどの各種アセットを配置し、それらの相互作用を時間軸とともに観察・比較することが可能。通信妨害やレーダー探知・追尾、受動探知、GPS妨害・欺瞞といった要素を画面上で関連づけて把握できる。

 装備や個別システムの再現だけでなく、現代の複雑な運用環境で生じる事象や相互作用を、教育・訓練・シナリオ比較・状況説明の観点から理解しやすくするための可視化基盤となる。

 3年間にわたるウクライナ現地調査の知見をもとに、通信や妨害の状況が短時間で変化しうる現場の複雑性を直感的に扱えるよう設計している。

 教育ツールにとどまらず、概念の説明、運用条件の整理、設計上の論点確認、想定シナリオの比較などを、可視化された状況に基づいて進めることで、関係者同士の認識のすり合わせを支援する共通基盤でもある。

 また、地図やアセット配置、状態変化、ログ、時間経過を統合的に扱えるため、デジタルツイン的な発想での利用も可能だ。特定エリアの監視配置や通信環境、無人アセット運用の関係性を地図上で俯瞰しながら、条件変更による影響を比較できるため、教育や訓練だけでなく、災害対応、警備、重要施設周辺の監視計画など、多様な現場での検討基盤としての活用が期待される。

EMAQI表示画面

 無人アセットの活用が進み、現場では個々の装備や機能だけでなく、相互の関係性や、どのような条件下で優位・劣位が変化するのかを全体として把握する能力が重要となる。一方、時間の経過や配置の変化、周波数の選択、運用方法の違いによってこれらの要素は変動する。教育や訓練、初期検討の場面では、こうした複雑な変化を体系的に理解する手段が十分ではなかった。

 JISDAは、通信、探知、受動探知、GPS、欺瞞、移動といった要素を「個別の技術トピック」としてではなく、「同じ空間と時間の中で変化し合う関係」として可視化できる環境を目指し、EMAQIの開発を進めてきた。

 EMAQIの設計思想には、JISDAが3年にわたり継続してきたウクライナ前線での現地調査の知見が反映されている。現地では、地理条件や時間経過、通信条件、監視手段、妨害の有無などによって状況が短時間で変化する。こうした複雑性を構造的に理解し共有できる装置であり、利用者は、通信妨害、探知・追尾、受動探知、GPS異常、デコイ効果などの配置や距離、向き、帯域、状態変化、ログ、時間経過を通してその背景を理解できる。

 また、防衛・安全保障だけでなく、災害・警備・重要施設対応にも活用が可能。複数要素の関係を俯瞰するための共通理解形成ツールとして機能する。

主な特長

 高解像度の衛星画像や地図を背景とした2D空間上で複数のアセットを配置し、その相互作用を時系列で観察できる。利用者は、地図上の位置関係だけでなく、タイムラインやイベントログ、通信状態、探知状態、GPS状態などを同時に確認しながら変化の流れを把握できる。これにより、「どこで何が起きたか」だけでなく、「いつ」「なぜ」「どの条件で」状況が変わったのかを読み取りやすくする。

EMAQI表示画面

 EMAQIは、電子戦の主要概念を理解するための教育・訓練基盤であると同時に、運用側と開発側が会話を進めるための共通基盤としても機能する。現場では、運用要件、技術制約、配置条件、監視範囲、通信品質、異常時挙動など、議論すべき論点が多岐にわたるが、文章や口頭だけで共有すると前提認識にずれが生じることがある。EMAQIでは、アセット配置、時間経過、状態変化、ログ、可視化レイヤーを共有できるため、「どの条件下で何が起きるのか」「何を前提に設計・運用判断をしているのか」といった点を具体的にすり合わせやすくする。これにより、教育用途だけでなく、仕様検討、初期構想、運用設計、説明資料作成といった場面でも有効な基盤となる。

 通信妨害、レーダー探知・追尾、受動探知、デコイ、GPS妨害、GPS欺瞞といった複数の要素を、同じシナリオの中で一体的に扱える。これにより、現場で起こる事象を個別機能としてではなく、相互に影響し合うものとして理解することができる。

 UAVを含む無人アセット運用を前提に設計されており、通信ノードやレーダー、受動探知センサー、ジャマー、デコイ、UAV、施設など運用上相互に関係するアセットを組み合わせて配置し、シナリオとして扱うことができる。UAVについては、ウェイポイントに基づく移動、GPS依存度、搭載ペイロード、シグネチャ特性などを通じて、より現実に近い意思決定文脈を考慮したシミュレーションを行える。

 空間・移動・監視・通信・異常状態をまとめて扱う統合的な運用理解プラットフォームとして、教育現場における概念説明のほか、複数アセットの役割分担や配置の考え方を共有したい場面でも機能する。

 地図やアセット配置、状態変化、時間経過、ログをひとつの画面上で扱えることから、デジタルツイン的な発想による活用も可能。特定エリアの監視配置、通信カバレッジ、移動ルート、異常時の影響範囲などを、現実空間に対応したかたちで俯瞰しながら条件変更による違いを比較できるため、複数の関係者が現実の地理条件を踏まえたシナリオを共通の画面で確認しながら議論できる。

EMAQI表示画面

 有事に関する教育・訓練用途だけでなく、災害対応、警備、重要施設監視、無人アセット運用訓練、計画説明、シナリオ比較といった幅広い場面での活用も見込む。教育現場では、複数の概念を口頭説明だけでなく地図と時間軸を伴う形で提示できるため、受講者にとって理解しやすい教材となる。組織内でも、専門性の異なる関係者が同じ画面を見ながら議論できるため、初期検討や共通理解形成の基盤としても有効だ。

 今後、シナリオテンプレートの拡充、教材モードの強化、イベントトリガー機能、ヒートマップ表現、シナリオ比較機能などを順次拡張していく予定。これにより、講義・訓練・説明用途にとどまらず、より高度なシナリオ設計や比較検討にも対応できる環境を目指す。また、現場の知見を取り入れた機能改善も継続して進めるとしている。

代表取締役CEO 國井翔太氏のコメント

 私たちは、ドローンを単に航空機運用の延長として捉えるべきではないと考えています。ドローンの実用性は、機体性能や飛行効率だけで決まるものではありません。どの周波数を使うのか、どの変調方式を選ぶのか、どのように拡散・ホッピングさせるのかによって、到達距離、映像品質、通信の安定性、妨害への耐性は大きく変わります。

 特に有事・災害時においては、ドローンの有効性はエネルギー効率や飛行性能以前に、通信の特性や電波の制御方法に強く依存します。その意味で、ドローンのコア技術は空を飛ぶこと自体よりも、むしろ電磁波領域にあるといえます。技術的な観点に立てば、作戦・戦術レベルでのドローンは、航空戦の一部というより、電子戦の構成要素として捉える方が実態に近いと考えています。

 そして、ドローンへの対処も同じです。探知、妨害、追尾、欺瞞、航法への介入といった論点は、いずれも電磁波領域の理解なしには語れません。その上この領域は、民間インフラと有事の脆弱性が重なりうる、非常にデュアルユース性の高い領域です。だからこそ、一部の専門家だけでなく、運用側と開発側を含む関係者が共通の前提のもとでシナリオを検討し、対話できる基盤が必要です。

 EMAQIは、そうした共通基盤をつくるための取り組みです。私たちはEMAQIを通じて電子戦や電磁波領域への理解を支援するとともに、より実践的な検討と認識共有を支えていきます。