KDDIおよびKDDIスマートドローンは2025年10月16日、石川県能登半島の輪島市と七尾市において、遠隔操作で運用可能なAI搭載ドローン「Skydio X10」と専用ドローンポート「Skydio Dock for X10」を組み合わせたドローンポート・システムを4カ所に配備したと発表した。
この取り組みは、平時のインフラ点検と災害時の被害確認を両立する“デュアルユース運用”を目的としたもの。配備に先立つ15日には、東京など遠隔地から災害モードへ移行する実証実験も行われ、その様子が公開された。
輪島・七尾の4拠点に配備、1対多運航の実証も実施
今回ドローンポートが設置されたのは、以下の4カ所である。
- 輪島市「中屋トンネル」
- 輪島市「輪島消防署」
- 七尾市「和倉温泉お祭り会館」
- 七尾市「七尾市西部水質管理センター」
いずれの拠点もトンネルや橋梁、海岸などの重要インフラが近接しており、平時は構造物点検や監視、災害時には被害状況の確認やスピーカーを使った避難呼びかけに活用される。
15日に行われた遠隔実証実験では、東京・KDDI高輪本社から能登エリアのドローンを制御。中屋トンネルと能登島大橋を点検中の2機が飛行中に地震が発生した想定で、能登島大橋上空のドローンはそのまま被害状況を確認。さらに七尾市の和倉温泉護岸崩壊の通報を受け、別の1機が自動離陸して護岸の調査を実施した。
この運航は、パイロット1名が2機を同時に操作する「1対2運航」で実施された。さらに、県からの要請を受けて能登市沿岸の津波被害確認を行うため、3機目のドローンが投入され、北海道新十津川町の「KDDIスマートドローンアカデミー新十津川校」から遠隔操縦が行われた。地理的に離れた複数拠点が連携し、同時に災害対応を行う運用実証として注目を集めた。
地域復興・防災連携のモデルへ、全国1000カ所展開を構想
石川県とKDDIは2024年10月、地域活性化と能登半島地震からの創造的復興を目的に包括連携協定を締結している。これまでにも七尾市のコンビニエンスストア「ローソン」にドローンを配備し、行方不明者捜索など警察活動を支援する「地域防災コンビニ」モデルを実現しており、今回の4拠点配備もこの枠組みに基づくものだ。
さらにKDDIスマートドローンは、同日に能登で行われた会見でドローンポートを活用した「ドローン巡回サービス」の拡充を発表。これまで工事現場などで平日日中のみ実施していた巡回を24時間365日体制に拡大する。運用メニューは、定期的に飛行を行う「定期運航サービス」と、災害発生時などの緊急対応に向けた「スポット運航サービス」の2つを提供していく。
また、建設業界向けには測量からデータ納品までを一括提供する「測量パッケージ」を展開。ドローンで取得した3D点群データなどを短期間で提供できる仕組みを整えた。
会見で博野雅文社長は、「石川県での配備を皮切りに、ドローンポートを活用した遠隔運用を全国に広げたい」と述べ、「人手不足や防災対応などの社会課題解決に向け、全国1000カ所へのドローンポート配備を目指す」と意欲を示した。
能登半島での配備は、単なる復興支援にとどまらず、平時の産業利用と有事の防災運用を融合する“新しい地域ドローンインフラモデル”として注目されている。KDDIグループの取り組みは、今後の地方自治体との連携やドローンポート普及戦略の試金石となりそうだ。
