9月24日から25日の期間、「第4回ドローンサミット」が愛知県名古屋市港区の「ポートメッセなごや」で開催。大阪・関西万博で空飛ぶクルマ「SKYDRIVE」のデモフライトを成功させ、注目を集めるSkyDriveが出展した。しかし、同社が空の移動だけでなく「空の物流」にも取り組んでいることは、業界関係者の間でもあまり知られていない。

災害対応から地域物流まで――重量物輸送ドローン「SkyLift」

写真:展示された「SkyLift」
最大30kgの荷物を搬送可能な「SkyLift」。機体はサービスとして提供されており、用途や飛行場所など、案件に応じて対応している。
写真:機体のバッテリー挿入口
バッテリー挿入口。2本のバッテリーを入れられる。

 SkyDriveの運搬用ドローン「SkyLift」は、従来は人が運んでいた40~50kg級の重量物をドローンで搬送可能にするために開発された。最大2t/日の輸送能力を持ち、災害時や山間地での物資輸送を想定している。

 2024年1月の能登半島地震では、陸上自衛隊と協力して被災地の偵察飛行や孤立地区への緊急物資輸送に従事。現地では道路寸断や通信断絶の影響を受けながらも、空路での救援ルート確保に寄与したという。また、瀬戸内地域では観光促進の一環として、サイクリング利用者の自転車を中継ポイントから返却ポイントまで空輸する実証も実施。重量物輸送ドローンの社会実装可能性を多方面で検証している。

水素発電との連携デモ――“自立型物流ドローン”の構想

 9月25日、SkyDriveと自動車部品メーカー・アイシンが共同で、水素燃料発電機とSkyLiftを組み合わせた飛行デモンストレーションを実施した。

写真:展示された水素燃料発電機
SkyDriveのブースの隣にはアイシンが出展。水素燃料発電機のサイズ(縦×横×高さ)は496mm×654mm×512mm、質量は37kg。


 山間部など無電化地域での運用を想定し、ドローン用バッテリーの現地充電を水素発電で補う仕組みを検証するものだ。

 現在、現場ではガソリンエンジン式発電機を用いて充電しているが、騒音や排気ガスの発生、そして可搬性の面で課題が多い。これに対し水素燃料発電機は静音・無排気で、燃料となるボンベ接続による連続発電が可能。今回の試作機にはキャスターが取り付けられており、現場での移動も容易だ。

 ドローンの最大飛行時間は約20分。SkyDriveでは「中継地点ごとに発電機を設置し、充電と飛行を繰り返すリレー運用」を構想しているという。デモ飛行では、ドローンが水素燃料電池に見立てたダミー物資(約10kg)を吊り下げ、中継地点に届ける様子を再現した。

 物資を吊り下げた機体が離陸し、そのまま一度海上へ出てひと回り。その後、離陸地点に戻り物資を地面に接地させると、物資が自動で切り離された。吊り下げ用のフックは、テンションが緩むと物資が外れる独自の機構になっていた。

 SkyDriveの担当者は、「現場では1日1.5〜2tもの物資を運びます。大量のバッテリーを充電する手段として、水素発電機はドローンでも運搬可能。騒音や環境負荷の少ない電源として、現場オペレーションの効率化が大きく進むと考えています」と期待する。

写真:荷物を吊り下げて飛行するドローン
9月25日に行われた飛行デモでは、10kg程度の荷物を機体に吊り下げて運搬する様子が公開された。写真は離陸直後のシーン。このあと、画面左側の海面の上空を往復し、荷物を降ろした。

ドローンショー事業の拡大とスピンアウト

 SkyDriveはドローン物流だけでなく、ドローンショー事業でも急速に存在感を高めている。

 2025年1月、愛知県蒲郡市のテーマパーク「ラグーナテンボス・ラグナシア」で開催されたイルミネーションイベントでは、500機によるショー演出を担当。前年同時期と比べて来場者数が約3倍に増加するなど、集客にも寄与した。

 担当者によると、使用された機体「DAMODA V3」を国内で導入しているのは同社のみで、離着陸スペースを従来の約1/3に抑え、撤収まで平均1時間という効率の高い運用ができる。「他社ではスペースの制約で開催できなかった場所でも、弊社なら対応可能です。運営コストを大幅に削減できるのも強みです」と担当者は説明する。

 なお、SkyDriveは2025年7月に新会社「AlterSky」を設立し、ドローン事業を分社化。SkyDriveの子会社としてAlterSkyがドローン関連サービスの開発・運用を担っている。従来の“自社製機体によるサービス提供型”から、“顧客の課題に最適な機体を世界中から選定・提案するドローンサービサー”へと進化を遂げた。

 担当者は、「AlterSkyでは、開発経験を持つエンジニアが機体を“目利き”し、最適なソリューションを提供します。現在は台湾メーカー製の物資輸送ドローンを中心に検証を進めています」と方針を語った。

空の産業化に向けた2本柱――物流とエンターテインメント

 AlterSkyは今後、物資輸送とショー演出の2事業を両輪として展開する。9月30日には、北海道占冠村の「星野リゾート トマム」で12月から全国初となる長期常設型ドローンショーの実施に取り組むことを発表。常設インフラ化により、ドローンショーが観光資源として持続的に運用されるモデルケースを示すことになる。AlterSkyは物資輸送とショーの2本柱で、日本のドローンビジネスに新しい風を吹き込むことになりそうだ。

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