写真:飛行する「DJI Air 3S」

 コンシューマー向け新製品発表が続くDJI。その第二弾は、空撮用ドローンのハイコストパフォーマンスモデルとして人気のAirシリーズの新型「DJI Air 3S」だ。先日、DJI JAPAN オフィスにて発表会が実施され、その驚きのアップデート内容が明らかになった。一部機能においては、コンシューマーフラッグシップ機である「Mavic 3 Pro」をも凌駕するその高性能な機体を紹介する。

1インチセンサー搭載デュアルカメラ

 何と言ってもAir 3Sの最大の特徴は、メイン広角カメラに1インチセンサーを搭載したデュアルカメラだ。サブカメラとして1/1.3インチセンサー搭載の中望遠カメラ(3倍相当)を備える。4K/60fpsのHDR動画を撮影可能なほか、14ストップのダイナミックレンジ(カメラが捉えることができる最も明るい部分から最も暗い部分までの輝度の範囲)を実現し、より美しい映像を撮影することができる。Mavic 3 Proが12.8ストップなので、フラッグシップ機を超えたダイナミックレンジを実現していることになる高画質カメラだ(1ストップで2倍のダイナミックレンジ)。

写真:正面から見たAir 3S
旧Air 3を踏襲したスタイリッシュなデザイン
写真:折りたたんだAir 3SとRC2(送信機)
折りたたむとかなりコンパクトになる。重量は724gしかなく、420gのDJI RC2と組み合わせても1kg強しかない
写真:Air 3Sのカメラ部分
一回り大型化されたメイン(35mm換算で24mmの焦点距離をもつ広角レンズ)に1インチセンサー搭載のカメラ(下)。上のレンズは中望遠カメラ(1/1.3インチセンサー、35mm換算で70mmの焦点距離)

 DJI Air 3S・旧Air 3・Mavic 3 Proのカメラ / 動画撮影について下記の表に比較してみたが、DJI Air 3Sは旧Air 3から格段にバージョンアップしていることがわかる。また、Mavic 3 Proと比較しても引けを取らず、一部機能は上回っているところもあるのが驚きだ。

 ただ、カメラの絞り機能がないことと、望遠カメラがないこと、D-Log撮影ができないことがDJI Air 3SとMavic 3 Proの大きな差にもなっているので、このあたりのニーズの有無が機体選択のポイントにもなりそうだ(価格差を考えるとAir 3Sがいかにコストパフォーマンスが高いかがわかる)。

Air 3SAir 3Mavic 3 Pro
イメージセンサー広角カメラ:1インチCMOS、有効画素数50MP

中望遠カメラ:1/1.3インチCMOS、有効画素数48MP
広角カメラ:1/1.3インチCMOS、有効画素数48MP

中望遠カメラ:1/1.3インチCMOS、有効画素数48MP
Hasselbladカメラ:4/3型CMOS、有効画素数20MP

中望遠カメラ:1/1.3インチCMOS、有効画素数48MP

望遠カメラ:1/2インチCMOS、有効画素数12MP
レンズ広角カメラ
FOV:84°
焦点距離(35mm判換算):24mm
絞り:f/1.8

中望遠カメラ
FOV:35°
焦点距離(35mm判換算):70mm
絞り:f/2.8
広角カメラ
FOV:82°
焦点距離(35mm判換算):24mm
絞り:f/1.7

中望遠カメラ
FOV:35°
焦点距離(35mm判換算):70mm
絞り:f/2.8
Hasselbladカメラ
FOV:84°
焦点距離(35mm判換算):24mm
絞り:f/2.8~f/11

中望遠カメラ
FOV:35°
焦点距離(35mm判換算):70mm
絞り:f/2.8

望遠カメラ
FOV:15°
焦点距離(35mm判換算):166mm
絞り:f/3.4
最大動画解像度4K/60fps HDRまたは4K/120fps4K/60fps HDRまたは4K/100fps5.1K/50fps
動画フォーマットMP4(MPEG-4 AVC/H.264、HEVC/H.265)MP4(MPEG-4 AVC/H.264、HEVC/H.265)MP4/MOV(MPEG-4 AVC/H.264、HEVC/H.265)

MOV(Apple ProRes 422 HQ/422/422 LT)
※Cineバージョンのみが、ProResでの撮影に対応
撮影モードノーマル / D-Log M / HLGノーマル / D-Log M / HLGノーマル / D-Log / D-Log M / HLG
ダイナミックレンジ14ストップ※非公開12.8ストップ

前方LiDARセンサー新搭載の安全性

 新型DJI Air 3Sでは、機体の安全性についてもバージョンアップが図られている。中でも特徴的なのは、産業機も含めたDJI機で初搭載となる前方赤外線LiDARセンサーだ。各方向のビジュアルセンサー(全面・背面・下面に各2個)や下方赤外線センサーと組み合わせて全方向の障害物検知が可能となっているほか、これまで最低でも15ルクス(家庭内の薄暗い照明)必要だった環境光も1ルクス(都市部から離れた場所での星明かりのない曇った夜程度)でも作動できるため夜間や暗所での障害物検知も可能だ。

写真:機体正面のLiDARセンサー部分
Air 3Sの特徴ともいえる中央の赤外線前方LiDARセンサー。両脇のカメラは魚眼レンズ式の障害物検知センサー
写真:機体の後ろ面
機体後方にも2個の魚眼レンズ式の障害物検知センサーを搭載する
写真:機体の下面
機体底部には2個の広角レンズ式の障害物検知センサーと中央の赤外線ToFセンサーが2個(黒)、1個の補助LEDランプ(黄色)が装備される

 また、LiDARセンサーにより取得した障害物などの周辺地図情報をもとに、GPSなどのGNSSがない屋内にもRTH(リターン・トゥ・ホーム、自動帰還)させることができるようになっているのもDJI Air 3Sの独自機能だ。

 前方LiDAR搭載以外にも、以前より搭載されていたVision Assist機能(障害物検知用のビジュアルセンサーを監視カメラとして使う機能)もバージョンアップ。メインカメラでは見えない側面や背面をサブ画面で見えるようにした便利な機能だが、機体下方が見えるようになったため、下方の障害物の確認や着陸時に正確な着陸場所を映像で確認することもできるようになった。

写真:ドローンからの映像画面の左下に表示された、機体下方の白黒映像
画面左下に表示されるVision Assist機能。障害物検知センサーの映像をリアルタイムで合成し、任意の方向(後方、左右側面、下方)を補助的に確認できる。上記画面は新搭載された「下方」を確認しながら飛行しているところで、下降しながら撮影するときなどに下方の障害物を確認することができる