(3)機体管理・運用

 機体管理では、WEB版Mission Plannerが発表された。Mission Planner(ミッションプランナー)とは、地上局といわれるGCS(Ground Control System)。これをウェブインターフェースでやりとりできるようにした。

2期卒業生で講師も務める川村剛氏による、「WEB版Mission Planner」

 WEB版Mission Plannerなら、タブレットが1台あれば、パソコンを持っていかなくても現場で操作ができる。また、SIMが解禁されてドローンがネットに繋がるようになると、クラウド経由で遠隔地から複数台のデバイスで機体を管理・運用できるようになる。

 機能は、地図の表示、ミッションのウェイポイントの表示、GoogleMapに室内Mapをオーバーレイできる機能も備えた。ミッションの読み書き、機体のパラメーター確認、フライト後のログのダウンロードもできる。

楽しみながら着実にユーザビリティ向上を図る川村氏の開発マインドと笑顔は印象的だった

 さらに、T265の映像をストリーミング・録画する機能も開発した。これは、ランディ氏も聞いたことがないそうで、「世界初」の試みだという。次の改良ポイントは、ストリーミング時の画像処理で、「CPUを効率的に使う」などの具体的な打ち手もすでに描かれていた。

1期卒業生の中島幸一氏による、ドローン用自動充電装置

 機体運用において役立つ、ドローン用充電装置も発表された。すり鉢状の自動充電装置で、ドローンが着陸すると下からのセンサーが働いて電極を出し、ドローン側の電極に接触して充電できるという仕組み。

 機体が多少ずれても、傾斜に沿ってローラーで斜めに滑っていき、位置決めの装置を使うことなく、電極に位置が合うという、とてもシンプルな構造だ。

(4)複数機体によるミッション遂行

 複数機体を組み合わせて、ミッションを遂行する試みも披露された。

7期卒業生の藤川秀行氏による、「親子ドローン」

 ArduCopterに、マイクロドローンが乗って運ばれている。マイクロドローンは、狭所の点検や災害時の被災者発見など、幅広い用途が期待されているが、駆けつけだけでバッテリーを消費してしまうという課題がある。ArduCopterがマイクロドローンを適切な場所まで運び、ミッションを終えたら回収するという構想だ。マイクロドローンを回収する機構の装備や、長距離伝送の仕組みは、今後の課題だという。

4期卒業生で講師も務める我田友史氏による、DroneKitを使った2機同時制御

 テレメトリアンテナをコプターとローバーそれぞれに接続して常に位置情報を取得し、コプターが着陸すると、ローバーが自動的に発車して、コプターの着陸地点付近まで走行する仕組み。アンテナの代わりに、Wifiで通信できる仕組みを構築すれば、接続台数を飛躍的に増やせるという。

例えば、護岸での人命救助など、陸海空のドローンが各位置情報を連携して動くことが求められる場面で有用

 今回は、コプターの高度が5mまで下がったら、ローバーが発車し、コプターから半径いくつ以内の位置で止まる、という制御をDroneKitを使って行った。

扇氏の「海洋ゴミ回収船」が千葉県銚子市で実験を行なった様子

 扇氏の「海洋ゴミ回収船」は、ArduPlaneと組み合わせたソリューション化を検討中とのことだ。まず、ArduPlaneでどこに海洋ゴミがあるかを探索し、その位置情報を頼りに船やローバーが現場に駆けつけてゴミ回収する。海ではゴミが少しずつ動くので、その動きをシミュレーターで検知することで、船が直接、回収現場へ向かうことを目指す。

ハードとソフトがともに進化

 ランディ氏は、「ハードとソフトが両方一緒に進化している」とArduPilotの最新動向を伝えた。例えば、フライトコントローラーのメモリやCPUの性能が向上したおかげで、ArduPilot にLuaScriptをインテグレーションでき、それにより「歩くロボット」など細かな制御が可能になってきたという。有人機の位置情報を検知できるADS-Bを装備したり、ノイズが少なく温度の急変にも強いIMUを搭載するなど、フライトコントローラーの進化は目覚しい。

 ランディ氏とともにドローンエンジニア養成塾を立ち上げた、ドローン・ジャパン春原氏は、「ArduPilotの魅力は、自律で動くとはどういうことかを、技術者が原理を理解しながら、自由にドローンソフトウェアの開発ができ、技術者がワクワクできることだ。世界中のワクワクした技術者が、新しい技術をどんどん開発している」と話した。今後は、陸海空のドローンによるトライアスロンイベントを企画中とのこと。ArduPilotによるどのような機体やソリューションが誕生するか、引き続き注視していきたい。