2025年5月30日、神奈川県は、県庁版社内ベンチャー制度を活用し、水中ドローンによる簡易かつ低コストの藻場のモニタリング手法の開発と、ブルーカーボンクレジット申請に関するモデル事業を開始すると発表した。
県庁版社内ベンチャー制度とは、自らが解決したいと思う社会的課題について効果的な方策を企画・提案した職員が、民間のアドバイザー等から助言・指導を受け、提案をブラッシュアップしたうえで実証・効果検証を実施し、その結果を踏まえて事業化の検討を行うもの。
神奈川県内の藻場は、地球温暖化による海水温の上昇等に伴い約30年で半減しており、漁業団体等による藻場の保全・再生の取り組みが進められている。こうした取り組みを拡大する仕組みとして、ブルーカーボンクレジットの活用が期待されている。
一般的な藻場のモニタリングは、人が潜って測定しているため、費用面・時間面での負担が大きい。また、漁業団体にはクレジット申請に関する書類提出等の手続き面のハードルが高く、県内のクレジット申請は2024年度については2件に留まっている。
ブルーカーボンクレジットの活用を円滑に進めることができれば、藻場再生の取り組みの資金源として活用できるため、同県は水中ドローンを活用した簡易かつ低コストの藻場のモニタリング手法の開発と、クレジット申請に関するモデル事業を開始する。
実証について
1. 自律・操縦切り替え型水中ドローンおよび海藻種別判定AIモデルの開発
神奈川県の令和6(2024)年度HATSU起業家支援プログラム(HATSU鎌倉)(※1)による支援を受けた起業家による県内ベンチャー企業(BlueArch)と連携し、自律操縦切り替えが可能な衛星誘導式水中ドローン(ハイブリッドAUV)により、操縦者の操縦熟練度に依存しない計測手法の確立を目指す。また、慶應義塾大学総合政策学部古谷研究室と連携し、水中ドローンで撮影した複数種の海藻で構成される藻場の画像を解析し、種別ごとに被度の検出が可能なAIモデルを開発する。
※1 HATSU起業家支援プログラム:県内の3拠点(鎌倉、厚木、小田原)において、起業を目指す人を対象に、有望な起業準備者に対する集中支援プログラム(チャレンジャー制度)を実施するとともに、かながわ発の起業家の創出と各地域における起業家コミュニティの形成を目指す取り組み。
2. ブルーカーボンクレジットの申請
藻場保全活動に取り組む江の島(江の島・フィッシャーマンズ・プロジェクト)および城ヶ島(三和漁業協同組合城ヶ島支所)において、同システムを活用したブルーカーボン調査を実施し、AIを活用した撮影データの分析やCO2吸収量の算定業務を効率化するクレジット申請によって、認証基準を満たすかを検証する。
今後、神奈川県は、同事業により簡易かつ低コストなブルーカーボンの測定手法および申請モデルを構築し、持続可能な藻場保全活動の仕組みづくりにつなげるとしている。