2023年8月4日、ナイルワークスは、東京都産業労働局による「令和元年度未来を拓くイノベーションTOKYOプロジェクト」に採択され、3年3カ月をかけて開発してきた「生育調査システム」について発表した。

 同プロジェクトは、都内ベンチャー企業や中小企業等が、事業会社等とのオープンイノベーションにより事業化する革新的な製品・サービス等を対象に、東京都がその開発、改良、実証実験および販路開拓を行うために必要な経費の一部を補助する事業。

 ナイルワークスは、農業用ドローンをセンチメートル精度で完全自動飛行させる技術や、作物の生育状態を診断する技術を開発しており、このプロジェクトでは地球規模の気象変動に対して、農作物の収量品質を安定化させることを目的とした生育調査システムの開発に取り組んだ。

生育調査システムの構成
1. 自動運転の生育調査ドローン
2. ドローン自動発着と充電ができる軽トラック(軽トラ母艦)
3. 生育調査から得られた情報をもとにした最適栽培支援技術

 同社は生育調査システムとして、水稲・大豆・小麦の収量予測・品質予測、生育監視ドローンの開発を推進した。評価ポイントは、ドローンによる高精度なセンシング技術、解析技術、作物の生育シミュレーターや微気象シミュレーターを活用したソリューションの精度の高さ。また、フィールドワークとデータ量も評価ポイントであり、農家や研究者などの声も技術開発に取り入れたという。

開発した技術の一例:作物の近接画像解析の精度向上
 作物の葉の大きさは、作物の窒素同化速度と光合成速度に大きく影響する。画像解析により葉の領域(大きさ)を正確に検出することは、作物の生育過程を解析する上で非常に重要な要素であり、この精度を向上させることに成功した。

 生育調査システムの開発詳細は、同プロジェクトのオフィシャルサイトで公開されている(https://mirai-innovation.metro.tokyo.lg.jp/project/detail_r1_1/)。

 同社は、生育調査システムの基本技術・ノウハウを活用した、アグリ・アシストサービスを2023年8月に開始する予定。圃場や作物の生育状況を分析、シミュレーションすることにより、品種や地域、土質に即した栽培体系の確立・生育管理を支援する。また、これらのデータを農業プラットフォーム「NileBank(ナイルバンク)」(※1)に集約し、農業生産法人・流通・小売り・消費などにおいて、作物の需給を最適化していく仕組みの提供を目指すとしている。

※1 農地のデータや生育診断の結果を生産者に提供するプラットフォームサービス。