2023年5月18日、興農GPSSインベストメントマネジメント(以下、KGIM)は、ふもとっぱら社と、静岡県および中部地域においてデジタル技術や先進技術を活用した林業事業基盤を創成する共同事業を行うことで合意したと発表した。

 ふもとっぱら社は、静岡県富士山麓の毛無山に24ha(東京ドーム5個分)を超える広さのキャンプ場を運営する企業で、隣接する総面積719haにおよぶ森林を管理する林業事業も手掛けている。

 KGIMは、デンマーク国民農学校を模範とし、1929年4月に静岡県沼津市にて開校した私立農学校を起源とする興農学園と、再生可能エネルギー事業を数多く手掛けるGPSSグループとの合同会社である。

静岡県ふもとっぱらキャンプ場

共同事業の骨子

1. ふもとっぱら社の持つ森林資産のカーボンクレジット事業
 ふもとっぱら社が所有する森林資産を対象として、人工衛星とドローンのLiDAR測量を通じて得たデジタルデータによりカーボンクレジットの組成、並びに森林伐採と植樹計画のモニタリングを行う。今回組成するクレジットは、J‐クレジットだけでなく、欧州基準のモニタリング基準をクリアするため厳格な管理基準を適用している。

2. 林業基礎オペレーションとデジタル測量を担う人材育成事業
 ふもとっぱら社の森林事業部は、林業を通じた山の保全と循環に取り組んでいる。次世代を担う若者への林業基礎教育に、カーボンクレジット組成やICT測量に必要なデジタル測量ノウハウを付加し、林業従事者の事業多角化と就労者の賃金向上につながる仕組みを目指す。

3. 重量物搬送用ドローンによる機材搬送と林業オペレーション効率化
 ふもとっぱら社の森林事業部と共同で、山間部への資材や工具搬送をドローンで行うオペレーションの実証を行う。林業従事者の業務効率化と安全確保を目指しながら展開する。

 KGIMでは広範な森林面積を短時間でデジタルデータ測量し、森林伐採と植樹計画の進捗を定期的に把握しながら、林業の効率的経営を支援するだけでなく、デジタルデータによるエビデンスを整備しつつ欧州基準をクリアし、グローバルにトレーディングできるカーボンクレジット事業の組成を行う。林業就職を希望する若者にデジタル測量ノウハウを伝え、林業担い手の給与水準向上を目指すだけでなく、カーボンクレジット事業における収益を林業へ還元し、国内林業における安定雇用促進を目指す。

 また、遠隔地や高地における危険な作業をサポートするため、デジタル測量用と資材運搬用に2種類のドローンを導入し、協調飛行を通じて100kg近い重量物を運搬するオペレーションにも取り組む。

 これら共同事業の成果については、中部地域全体の林業人材育成のため、静岡県や近隣森林事業関係者と共有するとしている。