2023年1月16日、ファンリードとエアロセンスは、マレーシアのサンウェイ大学とともに、APT(アジア・太平洋電気通信共同体)によるドローン・AI技術を活用したマングローブ分布・生育マップ作成技術実証の「ICTパイロットプロジェクト2022」(Category II)に共同提案し、2022年末に採択されたことを発表した。プロジェクトの実施は、2023年1月~11月を予定している。

 ファンリードとエアロセンスがサンウェイ大学と共同実施したAPT「国際共同研究プログラム2021」(Category I)におけるドローン・AI技術を活用した、マングローブ分布・生育マップ作成技術実証の成果が評価されたことによる採択で、技術実証成果を踏まえた事業化実証(Category II)を目的としている。

 ファンリードとエアロセンスは今回のプロジェクトを契機に、マレーシアでマングローブの再生・保全に向けた協力を継続し、ブルーカーボン関連事業の参入・展開を目指すとしている。

 サンウェイ大学がプロジェクト責任者となり、エアロセンスがドローンによるデータ取集・解析を実施、ファンリードが4K RGBおよびハイパースペクトルデータ分析(ハイパースペクトルセンサー提供を含む)を行う。

 「ICTパイロットプロジェクト2022」(Category II)においては、「国際共同研究プログラム2021」(CategoryI)で識別された課題解決に向け、下記の施策を実施する。

・最長50kmの飛行が可能なエアロセンスのVTOL型ドローン「エアロボウイング(Aerobo Wing)」を活用し、観測可能エリアの拡大を図る (Category Iではマルチコプター型のドローンを活用)

・4K RGB画像分析に加え、ファンリードのハイパースペクトルセンサーによるスペクトル分析手法を導入し、分析能力向上を図る (観測バンド数:288(波長域:340nm~850nm)のハイパースペクトルセンサーによるデータを取得)

 同プロジェクトの実施場所は、「国際共同研究プログラム2021」(Category I)におけるサラワク州ラジャン・マングローブ国立公園での成果を他地区に展開することを視野に、同州のクチン・ウェットランド国立公園(Kuching Wetlands National Park、6,610ha)を実証フィールドとする。

 プロジェクトの遂行においては、上記実施場所を含むサラワク州の総合的保護対象エリア(TPA)の管理および生物多様性保護を担うサラワク森林公社(SFC)の全面的支援のもと進める。

APT「ICTパイロットプロジェクト2022」の概要

 マレーシアでは、2004年スマトラ沖大地震の際、半島部海岸のマングローブ林が保全されていた地域で津波被害が軽減されたことから、2005年以降全州政府とNRE(Ministry of Natural Resources & Environment)によるマングローブ保全への積極的な取り組みが行われている。

 マレーシアのマングローブの22%となる約14万ha(※)を有するサラワク州では、「海の命のゆりかご」とも言われるマングローブが形成する生態系を維持することが、地域の持続可能な漁業を実現するうえで喫緊の課題となっている。「国際共同研究プログラム2021」における実証実験(Category I)では、サラワク州ラジャン・マングローブ国立公園において以下2点の実証を行い、沿岸部に集中的に生息する重要なBAKAU種の分布状況を、AI技術により約90%の精度で検出した。

※ “Status of MANGROVES in Malaysia”(Publisher:FOREST RESEARCH INSTITUTE MALAYSIA, 2020)より。

Category I での実施内容

・ドローン空撮によるマングローブの4K RGB画像取得、オルソ画像生成

・上記生成画像からAI画像分析ツールを活用した特定樹種の自動検出方法の確立

APT「国際共同研究プログラム2021」の成果

 社会実装に向けては、マルチコプター型ドローンの限定的な観測範囲、4KRGBカメラのスペクトル分析能力不足の課題があり、今回それらの解決に向けた提案を行ったことにより「ICTパイロットプロジェクト2022」(Category II)の採択に至ったという。

 ファンリードとエアロセンスは、2021年1月〜3月にJETROクアラルンプール事務所主催「DXアクセラレーションプログラム(マレーシア)」に採択され、事業参加を契機にサンウェイ大学との交流を開始し、APT「国際共同研究プログラム2021」(Category I)、「ICTパイロットプロジェクト2022」(Category II)の共同提案へとつながった。

 今後は、サンウェイ大学とともにプロジェクト終了後の事業化に向け、SFCによるマングローブ保全事業等への参画と、政府機関や地域コミュニティ等に対し、マングローブの保全および生態系の維持に必要なデータの提供を続けることで、サラワク州におけるビジネスの展開を目指すとしている。