2022年12月28日、A.L.I.Technologies(以下、A.L.I.)は、国産ドローンメーカーのエアロジーラボ(以下、AGL)と業務提携を開始することを発表した。

 A.L.I.ではドローン版UTM(運航管理サービスシステム)の開発を行っており、2021年から独自のプロトタイプ版「C.O.S.M.O.S.」を使い新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の実証などに参画。2022年夏よりさまざまな国内ドローンメーカーの機体にC.O.S.M.O.S.の搭載を進めてきた。

 AGLは長時間飛行が可能なエンジン発電機搭載のハイブリッドドローンを独自開発しており、国土交通省が推進する中山間地域における物流ドローンの実証事業などに早期から参加。過疎地域におけるドローンの目視外飛行(レベル3)を早くから達成していたものの、他機種との空域を共有した上で安全にオペレーションを実現させる運航管理システムや、遠隔からの機体操作についてのシステム部分は未着手であったという。

 そこで両社は2022年夏よりAGL製の機体「AeroRangeQuad」にA.L.I.の運航管理サービスシステムC.O.S.M.O.S.を搭載し、共同で複数の実証事業に参画。6月に大阪での物流事業社を交えてのレベル3物流実証、8月に山梨県北杜市におけるC.O.S.M.O.S.での複数機体の制御(1対多運航)の実証、そして9月には徳島での災害救援物資輸送を見越した防災訓練を500km離れた東京から遠隔操作をする実証を実施した。

 これらの取り組みを通じて、AGL社製ドローンのAeroRangeシリーズとA.L.I.社製の航空管制システムC.O.S.M.O.S.の組み合わせによって、中山間地域や離島間などのレベル3環境下でドローンによる社会貢献が可能と立証された。これを受けて両社は業務提携を締結し、さらなる実証事業への共同参加や、A.L.I.の営業力を使い機体販売を行うこととした。

 2022年12月5日よりレベル4の解禁と、目視外飛行実現のための規制緩和のための法整備がなされたが、現状ではリチウムイオンバッテリーを用いたドローンが主流であり、実質飛行可能時間は概ね15~20分程度であることから、近距離での運用にとどまっている。

 エンジン発電機を搭載したハイブリッド型ドローンのAeroRangeシリーズは、2時間以上(最大3時間)の飛行が可能。動力源にガソリンを使用するため、平時、緊急時を問わず飛行できる。同時に内燃機関を動力源とすることで、バッテリー製ドローンが不得意としている寒冷地でのオペレーションも通常と同様に行うことが可能となる。

 海外市場においてもガソリンなどの動力を用いたハイブリッドドローンは発表されているが、海外製品は不具合が発生した場合に日本国内でアフターケアが完結できず、機体を製造国に送ることが多いという。AGLのAeroRangeシリーズは国内製造で購入後のアフターサポートが整っているほか、開発から材料の調達、生産までを国内で行っているため、情報流出などのセキュリティリスクも抑えられるとしている。

 両社は今後も同業務提携を通じて、中山間地域や離島間などの過疎地域における目視外飛行(レベル3飛行)が求められる市場を拡大していくとしている。加えて、エンジン発動機の燃料には主にガソリンとオイルの混合燃料を使用しているが、水素燃料やバイオ燃料等の代替燃料への対応も進める方針だ。

都市部で実施した実証実験において「AeroRangeQuad」が飛行する様子