2022年10月4日(オーストリア)、ファーウェイとオーストリアのドローンサービス事業者であるドローンテックは、リンツ市にあるワイナリーにおいて、5Gを活用したスマート農業分野における協業の進展と最新の活用事例を発表した。

 また、食料供給などの問題に対する関心が高まる中、両社は「未来の農業におけるデジタル化の役割」に関するパネルディスカッションを開催。デジタル化と農業分野の企業代表、有識者、専門家らが、5G、クラウド、AIなどの技術を活用した農業の革新と持続可能な発展を促進するために、どのようなアプローチができるかについて意見交換を行った。

 2021年より両社は5Gとドローン技術で協力するプロジェクトを開始した。高精細カメラとセンサーを搭載したドローンは、農地などの地上を撮影し、その画像やデータの処理には5Gネットワークの連携が必要となる。両社の発表によると双方の協業は第2期に入っており、ファーウェイは5Gに加えクラウドなど、リアルタイムの人工知能(AI)分析のための技術インフラを構築する。ドローンが撮影した画像とデータをリアルタイムでAI分析し、利用者が合理的な作業計画を立てるための情報を提供するという。

 農業分野ではこの技術により、害虫の発見や作物の生育状況の把握、および収穫時期の予測などが可能となり、農家は水や農薬、化学肥料の使用を最小限に抑えられるなど、農業の持続可能な発展の促進に寄与するとしている。

ワイナリーで5Gスマート農業をライブ中継する様子

 第2期プロジェクト「Digital Sky」では、ドローンサービスをシェアリングエコノミーモデルに進化させる取り組みを計画しており、将来的には企業や自治体、個人がドローンをレンタルして、農業や太陽光発電、交通、電力などの分野でインテリジェントなシナリオ分析を展開できるようになると期待されている。

 同プロジェクトについてオーストリアのAndreas Reichhardt財務次官は、「ファーウェイとドローンテックはまずアスパラガスとブドウ栽培にドローンを活用しました。リアルタイムの画像認識で作物の生育状況を分析し、収穫量と品質の向上に取り組んでいます。オーストリアはこれをデジタルトランスフォーメーションの一つの好機として捉えたいと考えています。そのためには5Gをはじめとする優れたインフラが必要不可欠です」と述べている。

 農業分野における5Gドローンの利用課題はネットワークカバレッジである。現在、5Gネットワークは主に地上または屋内の利用者向けに設計されてるが、ドローンは通常地上から50m以上の高さで飛行するため、ドローンに必要な高品質な通信ネットワークの開発はまだこれからだという。

 ファーウェイ オーストリア法人のErich Manzer副最高経営責任者は次のように述べている。「5G技術は、高帯域幅、低遅延、数百万の端末の接続を可能にする同時多接続を特長としています。ドローンを5GおよびAI技術と組み合わせることで、多くの労働力集約型分野の課題の解消に役立てます」。

 ドローンテックCEOのDavid Hopf氏は「人工知能技術を用いたドローンは、農業の未来の持続可能な発展を推進する重要な要素です。ファーウェイと共同で開発したソリューションは、農薬や肥料の使用を大幅に削減するだけでなく、農業の効率を高め、人件費を削減し、食品サプライチェーンの持続可能性を高めることができます」と話した。