ソフトバンクは、南海トラフ地震などの災害時を想定して、ドローンの飛行ルートやLTEの電波環境を3次元地図上で事前にシミュレーションし、それに基づいて橋梁の被災状況をドローンで確認する実証実験を、2022年7月13日に和歌山県のすさみ町で実施した。
 なお、この実証実験は双葉電子工業(以下、双葉電子)、amuse oneself(以下、アミューズワンセルフ)、OneSky Systems, Inc.およびANSYS, Inc.(日本法人:アンシス・ジャパン)の協力のもと行った。

 この実証実験では、すさみ町の防災拠点の一つである防災センターを離着陸場所として、緊急輸送道路上にあるすさみ大橋まで往復約8kmの距離をドローンが自動飛行し、すさみ大橋を高精細カメラで撮影して破損の有無などの状況を確認した。
 ドローンの自動飛行に先立ち、ドローンの運航管理システム(UTM)などを活用し、アミューズワンセルフのレーザースキャナーによる測量で作成した高精度な3次元地図上で、飛行ルートやLTEの電波環境をシミュレーションしてルートを決定した。また、ソフトバンクの高精度測位サービス「ichimill(イチミル)」に対応した双葉電子のドローンを利用することで、設定したルートに沿って安全に自動飛行できることを確認した。

 今回の実証実験では、事前にシミュレーションを行ったことで、発災(想定)から約1時間でドローンを稼働し、その後約30分ですさみ大橋の状況を確認することができた。これにより、現地の目視確認といった危険な作業を、役場の職員などに代わってドローンが行い、速やかに被災状況を確認することが可能になる。

実証実験の概要

実証実験の流れ

1. ドローンで測量を行い、3次元地図を作成
2. 飛行ルートを設計
3. UTM上で飛行ルートをシミュレーションし、安全性を確認
4. 飛行ルート上のLTE電波環境を電波伝搬シミュレーションで確認し、飛行ルートを決定
5. 飛行ルートに沿って往復約8kmをドローンが自動飛行し、橋梁を撮影(7月13日)

ドローンの飛行ルート

実証実験の特長と結果

1. グリーンレーザー技術を活用した測量による高精度3次元地図の作成

 ソフトバンクと技術提携しているアミューズワンセルフが提供する、グリーンレーザー技術を活用したドローン向けレーザースキャナー「TDOT 3 GREEN(ティードット・スリー・グリーン)」で3次元測量を行い、高精度な3次元地図を作成した。TDOT 3 GREENは、発射レート60,000Hz/sのレーザーを照射可能なため、広範囲にわたって高密度な点群データを取得できるほか、水に吸収されにくい特性を持ったグリーンレーザーにより、これまで近赤外線では測量が困難だった雨にぬれた地面や水中の地形(水深数メートル程度)でも、正確な点群データを取得して3次元測量を行うことができる。

ドローン向けレーザースキャナー「TDOT 3 GREEN」(左)、高精度3次元地図のイメージ(右)

2. 飛行ルートやLTE電波環境のシミュレーション

 OneSky Systems, Inc.のUTMを利用して、3次元地図上で飛行ルートをシミュレーションして安全性を確認し、最適なルートを決定した。ルートの決定に当たっては、ANSYS, Inc.の電波伝搬シミュレーションシステムを利用して、3次元地図上で天候情報や上空のLTE電波強度などの環境を確認している。
 従来は現地調査や複数回のテスト飛行などで詳細を確認して飛行ルートを決定する必要があったが、今回の実証実験により、3次元地図上のシミュレーションでドローンの最適な飛行ルートを決定し、安全に自動飛行できることが確認できたため、今後のドローンの飛行準備作業の効率化が期待できる。

飛行ルートのシミュレーションのイメージ
LTE電波環境のシミュレーションのイメージ

3. ドローンの活用により被災状況を安全かつ速やかに確認

 すさみ町では、南海トラフ地震で津波が発生した場合、すさみ大橋の被災状況の確認は津波発生から半日程度経過した後に、役場の職員などが数時間かけて目視で行うことと想定されている。今回の実証実験では、事前にシミュレーションを行ったことで、発災(想定)から約1時間でドローンを稼働できたほか、防災センターを離発着場所として、すさみ大橋までの往復約8kmをドローンが自動飛行して撮影することで、ドローンの稼動から約30分ですさみ大橋の状況を確認することができた。これにより、現地の目視確認などの危険を伴う作業をドローンが代わりに行うとともに、速やかに被災状況を確認することができる。

使用機体

双葉電子製「FMC-02SB」

名称FMC-02SB(双葉電子製)
サイズ全長720×全幅720×高さ500mm
機体重量10.7kg
搭載カメラソニー製 DSC-RX02
飛行可能時間約30分
対応通信方式LTE(2.1GHz帯、900MHz帯)、920MHz帯の無線通信
その他の機能「ichimill」(RTK測位)対応