2022年7月22日、ソフトバンクは、東京工業大学工学院 藤井輝也研究室(以下、東京工業大学)、双葉電子工業(以下、双葉電子)と共同で開発した「有線給電ドローン無線中継システム」の運用を、2022年7月より開始したことを発表した。

 同システムは災害発生時に携帯電話のサービスエリアを迅速に復旧させるためのもので、まずは関東エリアのソフトバンクのネットワークセンターに配備し、順次全国の拠点に配備していくとしている。

 今後、現地到着後30分以内に構築でき短期間の利用に適した同システムと、すでに全国の主要なネットワークセンターに配備している、1カ月以上の長期間の利用に適した「係留気球無線中継システム」を併用することで、自然災害などで支障が生じたサービスエリアの迅速な復旧と安定した通信サービスの提供を目指す。

有線給電ドローン無線中継システム

 双葉電子のドローンをベースに、ソフトバンクと東京工業大学、双葉電子が共同で有線給電対応に改造し、ソフトバンクと東京工業大学が共同開発した無線中継装置と有線給電システムを搭載している。

 地上に設置した無線中継装置(親機)と、ドローンに搭載した無線中継装置(子機)で構成されており、親機と子機間の通信は、無線信号を光信号に強度変調して光ファイバーで伝送するRoF(Radio on Fiber)技術を用いる。親機に接続した基地局無線装置とモバイルネットワークの接続は基本的に衛星通信経由で行うため、基地局などの地上設備の被災の影響を受けずに、迅速に臨時のサービスエリアを構築できるという。

 また、同システムの装置は小型化・軽量化されており、必要な装置一式を1台のワンボックスカーで運搬できるほか、設置準備が容易なため、現地到着後30分以内に利用を開始し、ユーザーが通信できるようになる。ドローンと無線中継装置(子機)に必要な電力は地上から有線給電するため、連続100時間(4日間)以上の利用が可能である。

 同システムは、ドローンを地上100mに停留飛行させることで、郊外では半径3km以上、見通しの良いエリアでは半径5km以上のサービスエリアを確保可能。通信方式は3GおよびLTE(2.1GHz帯)に対応しており、通信速度は下り最大150Mbpsとなる。

 無線中継装置(子機)を搭載したドローンは自律飛行を基本とするが、急な天候の変化などに対応するため、ソフトバンクと東京工業大学が共同開発した、遠隔地から手動で操縦可能な「ケータイドローン飛行制御システム」を利用できるほか、無線中継装置の運用・監視やシステムの制御も、携帯端末を介して遠隔で行うことが可能である。

 同システムは、2020年6月22日の電波法関係審査基準の改正によって、ドローンに無線中継システムを搭載可能になったことで実現したもので、改正された電波法関係審査基準に準拠している。