NTTドコモ(以下、ドコモ)は、世界農業遺産に認定されている新潟県佐渡市において、棚田の水稲での減農薬栽培、無農薬・無化学肥料栽培を推進するために設立された「世界農業遺産と朱鷺の島スマート農業コンソーシアム」に参画し、ドローン空撮や水田除草ロボットおよび高度水管理システムの活用・検証などを行う実証を、2022年4月20日から開始する。

 2022~2023年度の2年間にわたり、新潟県佐渡市の丸山営農組合の水田(46.7ha)において「スマート農業技術による環境保全・省力化・収量維持の実現」「作業集約とシェアリング」「棚田の高度水管理システムによる効果」について実証を行う。なお同実証は、農業・食品産業技術総合研究機構の「スマート農業産地形成実証」に採択されたもの。

 朱鷺の放鳥とともに生き物のための生息環境を作り出している新潟県佐渡市は、農薬や化学肥料の使用を削減した米の栽培を推進し、2011年には「世界農業遺産(GIAHS)」に認定されている。人にも生き物にも優しい農業を広げるため、無農薬、無化学肥料栽培の取り組み面積の拡大を目指している。
 しかし、市内には平野部の水田に加えて棚田も多く、管理に労力を要するため、減農薬栽培や無農薬・無化学肥料栽培に取り組むことが困難な状況である。

実証を行う圃場の風景
佐渡市に生息するトキ

 同実証では、棚田地域で導入可能なさまざまなタイプの畦畔(※1)草刈機、水田除草ロボット、ICTを活用した高度水管理システムなどを導入することにより、減農薬栽培、無農薬・無化学肥料栽培の推進に向けたコスト低減、労力軽減、収益向上などを評価することを目的としている。また、実証した技術やノウハウを面的に展開することにより、スマート農機の導入コストと効果を地域で共有するためのシェアリングサービスの可能性を検証する。

 同コンソーシアムでは、同実証を通して、将来的に棚田地域も含め新潟県佐渡市における減農薬栽培、無農薬・無化学肥料栽培をさらに拡大し、農業従事者の省力化やコメの付加価値向上による所得向上を目指すとしている。

※1 水田に流入させた用水が外にもれないように、水田を囲んで作った盛土などの部分。

棚田の減農薬栽培などの推進に向けた実証

実証の全体像

【実証1】スマート農業技術による環境保全・省力化・収量維持の実現実証

(1) 畦畔草刈機、画像認識AIおよび遠隔監視機能(搭載予定)を備えた水田除草ロボット導入による省力化・軽労化について、作業時間の削減効果・作業負荷の軽減効果・総コスト・収量をパターンごとに比較、検討する。

(2) 減農薬、無農薬・無化学肥料で生育したコメの買取価格の向上に向け、「朱鷺と暮らす郷づくり認証米」(※2)の認証取得や、新潟の地域スポーツクラブと連携した情報発信、オンライン販売、また、佐渡総合高校の高校生を対象としたスマート農機による環境保全型農業に取り組む人材育成を行う。

画像認識AIを搭載した水田除草ロボット

※2 朱鷺と暮らす郷づくり認証米:佐渡市では2007年に、国の特別天然記念物・トキの餌場確保と生物多様性の米づくりを目的とした「朱鷺と暮らす郷づくり認証制度」を立ち上げ、独自農法による佐渡産コシヒカリのブランド「朱鷺と暮らす郷」を生産している。

「朱鷺と暮らす郷」認証マーク

【実証2】作業集約とシェアリング実証

(1) 急傾斜畦畔での草刈機のシェアリングと作業の集積に向け、斜面でも走行可能な草刈機2種について、棚田における最適な機械の選択手法を確立する。最適な草刈り作業の計画立案に際しては、3次元データ(面的空間情報)から斜面角度および面積を算出するためのドローン空撮を実施する。

(2) (1)の選択手法の水平展開の可能性を実証するため、(1)で作業計画を策定した場所とは異なるエリアにおいて最適な作業計画を立案・検証する。

(3) シェアリングによるビジネス化と地域展開の可能性を検証するため、草刈機のシェアが可能な面積や課題を抽出し、情報共有や貸出管理などの仕組みを構築する。

草刈機が畦畔の斜面を走行、草刈りをする様子

【実証3】棚田の高度水管理システムによる効果実証

 水田上流部における効率的、効果的な水管理の自動化システムを導入し、自動給水栓装置「田門」と水田用IoTセンサー「MIHARAS」を連携した高度水管理システムにより、見回り回数削減などの省力化や多収化を実証する。
 上流部に自動給水栓装置を導入することで水門の開閉を自動化、下流部に水田用IoTセンサーを設置することで給水状況を遠隔で確認することができる。また、高度水管理システムの共同利用手法の検討と課題についても調査する。

高度水管理システム