新明和工業は、10月18日~19日および11月1日~4日の間、長崎県対馬市および対馬空港の協力を得て、同社が開発した固定翼型無人航空機「XU-S(Experimental Unmanned / Utility aircraft by ShinMaywa)」を用いて、レベル3飛行(無人地帯での補助者なし目視外飛行)による海洋ごみ空撮調査の実証実験を行った。

対馬空港から離陸する「XU-S」

 今回の実験は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)が主催する「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」(以下、DRESSプロジェクト)の「地域特性・拡張性を考慮した運航管理システムの実証事業」に、共同提案自治体として対馬市、協力者として明治大学自動運転社会総合研究所(以下、MIAD)とともに採択され実施したものである。

 対馬市では少子高齢化や過疎化という課題に対し、MIAD等とともに自動運転技術活用の可能性を探っており、深刻化する海洋ごみ問題に対して無人航空機を活用することも検討している。新明和工業では、排気ガスを生じないLiPo(リチウムイオンポリマー)電池を動力源とし、長時間・長距離の飛行が可能な固定翼無人航空機を開発していることから、今回の共同応募に至ったという。

 同実験では、DRESSプロジェクトで開発されたドローン運航管理システム(UTM)と接続して飛行を実施した。XU-SとUTMとの接続インターフェースは、同社グループ会社の新明和ソフトテクノロジが開発した。

 定期航空便が就航する対馬空港を離着陸拠点として衛星通信によりXU-Sの管制・制御を行い、対馬島の西側海上においてレベル3による海岸空撮調査、および海上浮遊物の捜索飛行を複数回実施した。最大で1時間12分、約63kmの連続飛行を行った。

対馬島西海岸の空撮調査 飛行経路
対馬島西側の海上捜索 飛行経路(2経路)

 撮影内容は「海岸に漂着したごみの空撮」「海上を漂流するごみの空撮」の2つで、いずれも一般的な回転翼型ドローンでは航続時間・航続距離が短く対応できないため、長時間・長距離飛行を特長とするXU-Sを用いて複数のカメラで空撮を行った。

 同社によると、レベル3飛行での海洋ごみ空撮調査、定期航空便が就航する空港を離着陸拠点とするレベル3飛行、衛星通信により管制・制御される固定翼無人航空機とUTMとの接続は国内初だという。

空撮画像1
空撮画像2

 現状では、対馬の漂着ごみの実態調査は調査員が船で接岸・上陸し、徒歩で行っているが、漂着ごみが比較的多い西海岸に限っても範囲が数百キロメートルにも及ぶ。今回実証した固定翼型無人航空機による空撮調査が実用化されることで、漂着ごみ調査の効率化と詳細把握が期待できる。また、海上捜索により漂流ごみを早期に発見できれば、近い将来、漂着する前に船で回収することも可能となる。

 同社は、今後も観測・監視・通信など幅広い分野において、大気汚染や海洋ごみ空撮などのサービス提供ビジネスだけでなく、ユーザーが希望する運用や要望に合わせた無人航空機の設計・製造も含めたエンジニアリングビジネスを目指すとしている。

固定翼型無人航空機「XU-S」

主なスペック
サイズ全長 2.5m、全幅 6.0m、全高 0.4m
自重(電池含む)17kg
主な材料炭素繊維強化プラスチック(CFRP)
操縦系統無線操縦系統、自律操縦系統
推進系統電動・プロペラ・双発