11月26~27日、「第2回 Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2025 in 関西」が開催された。同展示会では、協同アウトドアパワープロダクツとクエストコーポレーションがドローン用のエンジンを共同出展。バッテリーを動力源とする電動型ドローンが主流である一方で、飛行させる用途によって“エンジン駆動”の選択肢を提案した。

 協同アウトドアパワープロダクツは、船外機や建設機械の部品製造を担う協同が2024年12月に設立した子会社だ。主に農林業機械やラジコン用エンジンの製造・販売を行っている。親会社である協同は、長年にわたり模型用エンジンなどの量産開発を手がけてきた実績を持ち、純国産部材による高い品質と信頼性を強みとしてきた。2024年には、ハスクバーナゼノア社からホビーエンジンの事業譲渡を受け、近年はその技術基盤を生かしてドローン向けのハイブリッドパワーユニットの開発に力を入れている。

 展示会では、ドローン用途を想定した3種類のエンジンと、それらを搭載した試験機2機を公開。小型・軽量でありながら高出力を実現する2ストロークエンジンと、高効率な発電モータを組み合わせた動力ユニットは、独自のシリンダ薄膜クロムメッキ加工による高い耐久性と高出力・低振動を両立している点が特長だ。汎用パッケージ化されており、既存のドローン機体にも搭載できる設計となっている。

“空飛ぶ発電機”という発想──ハイブリッドパワーユニットの実力

写真:展示された2種類のハイブリッドパワーユニット
80ccの2ストロークエンジンをベースにした「HB800BPU」(写真:右)と小型軽量化された「HB320PUD」(写真:左)。

 ラインアップの中核を成すのが、80ccの強制空冷・水平対向二気筒の2ストロークガソリンエンジンをベースとした「HB800BPU」だ。最大出力は4.3kW、最大発電出力は3.9kWで、乾燥重量は5.9kg。最大ペイロードは10kg、最大離陸重量は30kgとされ、ペイロード5kg時には約2時間の飛行を可能としている。長時間飛行と一定の積載能力を両立した仕様は、物流や点検といった用途を意識したものだ。

 さらに小型軽量化を図ったモデルが「HB320PUD」で、32ccの強制空冷・単気筒の2ストロークガソリンエンジンを採用する。最大出力は2.4kW、最大発電出力は2.1kW、乾燥重量は3.8kgと軽量で、最大ペイロードは5kg、最大離陸重量は20kg。ペイロード3kg時には約2時間の飛行を可能としている。

写真:展示されたハイブリッドドローン試験機
「HB320PUD」を動力にしたハイブリッドドローンの試験機。

 会場では、この「HB320PUD」を“空飛ぶ発電機”として産業用ドローンに搭載したハイブリッドドローンの試験機が展示された。現在は試験段階にあるため、機体側の詳細なスペックは非公開だが、エンジンによる安定した電力供給を前提とした新たな運用の可能性を感じさせる内容となっていた。

山岳輸送を見据えたエンジンドローンという解

写真:展示された「G800BPU」
「G800BPU」はヘリコプター用エンジンとしてラジコン愛好者から評価されているゼノアブランド製。

 クエストコーポレーションは、チェーンソーや芝刈り機で知られるゼノア(ハスクバーナ・ゼノア)から事業譲受された協同社製ホビーエンジン「G800BPU」を搭載したドローン「QMQ1100VP-G」も公開した。

写真:可変ピッチプロペラシステムを搭載したドローン「QMQ1100VP-G」
写真:「QMQ1100VP-G」のプロペラ部分
2ストエンジンを搭載した「QMQ1100VP-G」はプロペラが自在に動く。

 今回発表された複数のドローンは、クエストコーポレーションが企画設計から製造までを一貫して行う国産の産業用ドローンであり、これらは空撮や測量、農業分野などで導入実績を持つ。機体開発の背景には、自治体からの要望として「ヘリコプターの代替えとしてドローンで山小屋に物資を届けたい」という声があったという。気象条件や飛行距離など制約の多い山岳環境でも安定した運用を実現するため、信頼性の高い協同のエンジンを採用した。

 さらに、現在開発を進めているのが、水平対向二気筒の2ストロークエンジンである「G800BPU」だ。排気量は80cc、最大出力は4.3kW。乾燥重量は11.9kgで、燃料込みの最大ペイロードは13kg、燃料タンク容量は4L、最大離陸重量は24.9kgとされている。エンジン直結の可変ピッチプロペラシステムを採用している点が特長で、飛行性能の向上を狙う。

 エンジン駆動のドローンは、バッテリーによる電動に比べて騒音が大きい点が課題とされる。しかし人の少ない山岳部での運用であれば影響は限定的で、むしろ長距離を安定して繰り返し飛行できる点が大きなメリットとなる。ガソリンエンジンであるため、寒冷地でも給油によって即座に再運用できる点も見逃せない。こうした特性を踏まえると、日本の地形やニーズにおいて、エンジン型ドローンの選択肢も検討の余地がありそうだ。

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