つくることで楽しむ、学ぶ、つながる“モノづくりの祭典”「Maker Faire Tokyo 2025」が東京ビッグサイトで10月4日・5日の2日間で開催された。入場料は大人1,800円(前売1,400円)、18歳以下700円(前売500円)。夕方割チケットは、閉場2時間前に入場できるチケットで大人1,000円(前売800円)。2025年の今年からインプレスが主催となった。
Maker Faire(メイカーフェア)とは、モノを生み出す“メイカー”たちが一堂に会するイベントとして2006年にアメリカ・サンフランシスコで開催されたのがはじまり。メイカーたちによる自由なモノづくりを楽しむお祭りで、企業や個人、社会人や学生などさまざまなメイカーが作品を持ち寄る。現在では、ローマやパリ、深センなど世界200都市以上で開催されるなど世界中で広まり、日本では2008年に初めて「Make: Tokyo Meeting」が行われてから、2012年より「Maker Faire Tokyo」として毎年開催されるに至っている。今年のMaker Faire Tokyo 2025は、個人から企業まで多彩なメイカーが最先端技術を取り入れたり、ユニークな視点を取り入れたりと多様な作品を持ち寄り展示し、来場者たちと交流していた。子ども向けのワークショップも豊富でファミリー連れも多く、老若男女楽しめるイベントとなっている。
作りたいから作る!多彩なジャンルで魅力あふれる作品
会場はエレクトロニクス、After Hours Maker(企業内部活)、サイエンス、キッズ・教育、デザイン・クラフト、Young Maker、モビリティ、Fab&アシスティブテクノロジー、ロボティクス、ミュージック、スポンサーと11のゾーンに分かれており、さまざまな分野で作品が展示されていた。実際に動かすことができたり、ワークショップが用意されているブースなどもあり、会場は活気にあふれていた。また、モノづくりを楽しめる電子部品や工作キット、クラフト作品の購入が可能なブースもあった。ここでは筆者の目についた展示品を簡単に紹介していくが、紹介しきれなかった展示もそれぞれのメイカー渾身の作品が揃っていた。
エレクトロニクスゾーン
Railway Fan Clubの「PLCを活用した列車自動進路制御とダイヤ運転」の展示。鉄道模型(Nゲージ)を用いて、JR西日本の大阪環状の列車運行を実物同様に再現したもので、信号機の制御は、工作機器を自動制御するための専用コンピューター(PLC)を活用し独自に開発したシステムを用いている。入力したダイヤグラムで定められた時刻通りに運行し、駅の案内表示や発車メロディも実物同様に動作する。机の下の配線が凄い!
After Hours Maker(企業内部活)
つくる~む海老名のブースで見つけたのは三角コーンに擬態するヤドカリロボット。持ち上げる、移動する、引っ込むの3つの動作が可能で、操縦はスマートフォンで行う。かわいらしい動きで足を止める人が多数いた。
Young Makerゾーン
日米学生が共同で火星探査ローバーを製作している団体のKARURAプロジェクトは、火星探査を想定した機能を有するローバーを出展。2025年に開催された世界大会決勝で実際に使用されたものだそうだ。
キッズ・教育ゾーン
ダンボールを素材に、様々な造形&デザイン&プロダクトを独自手法で作り続ける複数の作り手が集まり、それぞれがワークショップを開催したのはmake道場。子どもたちは、ダンボールに色を塗ったりその他の素材を組み合わせたりし、作り上げていく。
モビリティゾーン
勇者技術研究所の乗用車変形ヒューマノイドロボット「勇者ファイバリオン」。完全オリジナルの4輪EV乗用車からヒューマノイドロボットに変形することを目標としているとのこと。ロボットモードでは全高2.5mで、脚によって歩行したり足裏の車輪で移動したりする。ビークルモードではミニカー規格のナンバープレートをつけて公道走行できる一人乗り4輪EV車両として開発中だ。展示品は本体の腕とハンドの操縦体験を行っていた。
高橋クリスのFA_RADIO:工場自動化ポッドキャストの「【ナンバー取得済】行動走行可能なこたつ型モビリティ」。道路交通法の改正により、新設された特定小型原動機付自転車の規格で走るこたつを製作し、ナンバーまで取得したそうだ。インパクトある造形に来場者の注目を集めていた。
前田武志氏の「ハブステア電動バイク」。市販車の改造ではなくフルスクラッチ。ハブステア機構やフレームも全て自作とのこと。設計は3DCAD、切削はCNCフライス、フレームはアルミ溶接で作っている。
ロボティクスゾーン
ドロイド・ビルダーズ・ジャパンのスターウォーズレプリカドロイド「R2-D2」は会場中を歩き回っていた。大人から子どもまで大人気。
ドロイドは、木、プラスチック、アルミやグラスファイバーなど、さまざまな材料で作られているそうだ。
がおがおのオオカミ型四脚ロボット「ライカン」と飛行機。オオカミロボットは、撫でるとお手をしたり嫌がったり喜んだり、そしてお座りもできる。飛行機型も撫でると尾翼が動く。子どもが夢中で撫でていた。
ミュージックゾーン
うこの「食券機型電子楽器 “ShockAndKeys”」の展示。そば屋やラーメン屋、学校の食堂などで見かける「食券機」を魔改造して電子楽器にしてしまったとのこと。普段押しまくることのない食券機ボタンを思う存分いろいろ押すことで音が奏でられる。子どもが楽しそうに押しまくっていた。
スポンサーゾーン
Polyuseの建設用3Dプリンター「Polyuse One」のデモ。Polyuse Oneは、国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)に登録され、幅約4m級で施工実績150件以上を誇る。特長は、従来の工法では実現が難しかった複雑な形状を、デジタルデータから直接コンクリート構造物として造形できる点だ。
ドローン関係のメイカー作品もあり
ドローン関係の作品も展示されていた。Young Makerゾーンでは、OOEDO SAMURAI RoboMaster Projectが対戦型ロボット競技「RoboMaster」のために製作したオリジナル機体7台を展示。メンバーは高専・学生ロボコン出身者を中心に構成され、オンラインで活動中とのこと。
RoboMasterとはDJIが主催するロボット競技大会で、大学・高専などの学生主体で構成されたチームが、自ら設計したロボットで対戦する。年ごと・地域ごとで、ルール・機体仕様・弾の種類・フィールド構成などが変更されることもあるが、基本的にはロボットから送られる映像をもとに遠隔操作でロボットを操作し、フィールド上で自チームの基地を守りつつ相手チームの基地を攻撃し、基地を破壊または規定時間内により有利な状態にすることで勝敗が決まる。大会は中国が世界最大規模でエントリーだけで世界中から400チームほどもあるそうだ。そこから、何度か行われる審査に通ったチームが参加できるという。OOEDO SAMURAI RoboMaster Projectは、アメリカで開催されたRoboMaster North America 2025に参戦した。現状、日本はチーム数が少なく日本大会は開催されなくなったということもあり、RoboMasterの認知度をアップしたいと話してくれた。「メンバーはいつでも募集中です。プログラミングとか機械とかわからなくても大丈夫。僕たちもはじめたころはわからなかった。ロボットを作ってみたい!という気持ちがあれば。一緒にロボットを作りましょう!」と、ロボット競技への参加を呼びかけた。
スポンサーゾーンでは弊誌ドローンジャーナルのブースにて、大阪・関西万博をはじめ、全国各地で数多くのドローンショーを手掛けるレッドクリフによるデモンストレーションと、小型教育用ドローン「Hula(フラ)」を使ったドローンプログラミングの体験を子ども向けに行った。タブレットやPCを使って、アイコンや絵など視覚的なオブジェクトを組み合わせるブロックプログラミングとなっているので、子どもでも簡単に離陸・飛行・着陸を制御することができる。自分のプログラミング通りにドローンが動く楽しさを体験できるというもの。このHulaは、複雑なプログラミングも可能なので、最初は簡単な制御から、どんどん複雑なものに挑戦していくことができるそうだ。
「レッドクリフはドローンショーでよく知られているかと思いますが、プログラミング教育にも力を入れています。学校やイベントなどでもプログラミング教室を開催したりしています。子どもたちにプログラミングの楽しさを感じてほしいですし、多くの方々がドローンに触れられる機会を作っていきたい」と説明員の馬明氏が話してくれた。実際にドローンを飛ばせるスペースが用意されており、デモンストレーションが行われると子どもが興味津々でドローンを見にやってきて、そのままプログラミング体験にチャレンジする姿が多数見られた。
