2025年10月22日、LIFULL ArchiTechは、2025年9月26日にODCとドローンによるインスタントハウスの空輸送実験を行い、運搬・設置に成功したことを発表した。インスタントハウスは高い断熱性能を持つ居住空間であり、丸ごとドローンで運搬することで、災害発生時に土砂崩れ等で孤立した集落など陸上輸送が困難な場所に短時間で居住空間を提供することが可能になる。

写真:ドローンとローブでつながれたインスタントハウス
実証実験の様子

 LIFULL ArchiTechが提供するインスタントハウスは、テントシートを空気で膨らませながら内側から断熱材(硬質発砲ウレタン)を吹き付けるシンプルな工法で、1棟あたり3〜4時間で設置が可能。断熱性や遮音性が高く快適に過ごすことができ、耐震性や耐風性を合わせ持つことから、被災地支援でも多く活用されてきた。一方、設置には施工用トラックで運搬する必要があるため、土砂災害による孤立集落や山間地域を支援する際は、道路の復旧を待たなくてはならなかった。

 今回の実証実験では、インスタントハウスの強くて軽い特徴から、部材ではなく完成した居住空間をそのまま空中輸送した。現地で組み立てる必要がないため設置も容易で、届いたらすぐに活用できる。これにより、道路復旧に時間がかかる場合でも、迅速に必要な場所へ居住空間を届けることが可能となる。

 2025年9月28日に富山県南砺市で行われた富山県総合防災訓練では、ドローンによる空輸送デモ飛行にインスタントハウスが使用された。

写真:インスタントハウスを吊り下げて飛行するドローン
富山県総合防災訓練の様子

 LIFULL ArchiTechはこれまで、インスタントハウスを海に浮かべて船で牽引する海上輸送の実証実験や、分割してトラックで陸上配送できるパージ型の開発にも取り組んできた。今回の実証実験により、空・海・陸上経由での輸送が可能になり、災害支援だけでなく離島や山小屋、その他これまで施工用トラックが到達できなかった場所へ、状況に合わせて適した手段で輸送できるようになる。

 同社は引き続き空輸送の実用化に取り組み、インスタントハウスを全国の必要な場所へ届けることを目指すとしている。

空、海上、陸上でのインスタントハウス輸送イメージ(イラスト)

LIFULL ArchiTech 取締役CTO/名古屋工業大学共同研究員 山田義剛氏のコメント

 今回、富山県滑川市で重量運搬用ドローンを開発する株式会社ODCさんからお声がけをいただき、インスタントハウスが空を飛ぶことができました。ODCさんの「ドローンで人のためになることをしたい」という情熱が、インスタントハウスの「人に寄り添う」という信念と重なり、垣根のない素晴らしいチームでのプロジェクトとなりました。開発では、①ドローンの積載上限80kg以内にインスタントハウスを収めること、②吊り上げ時に荷崩れを起こさず安定して運搬できるバランスを実現することが最大の難題でした。重量のシュミレーションや吊り紐がずれない構造、吊り位置の検討を繰り返し、ようやく条件を満たす内容に辿り着きました。異分野の知見がぶつかり合う現場は刺激的で、試行錯誤の連続でしたが、インスタントハウスが実際に空に舞い上がった瞬間は、全員で歓声を上げるほどの感動がありました。