9月24日から25日の期間、「第4回ドローンサミット」が愛知県名古屋市港区の「ポートメッセなごや」で開催。PCメーカーVAIOの子会社として設立されたVFRは、ドローンおよび関連ソフトウェアの開発・製造を手がける国産メーカーだ。本社は第4回ドローンサミットの開催地である名古屋市にあり、地元・愛知に根ざしたテクノロジー企業としても知られている。

SBIR制度採択「国産ドローンポート」開発の進展

 VFRの2025年における最大のトピックは、6月に発表した「SBIRドローンポート」試作機の公開である。
 このプロジェクトは、スタートアップ企業の研究開発を国が補助金などで支援するSBIR(Small Business Innovation Research)制度の採択事業。安全性・拡張性・汎用性を兼ね備えた国産ドローンポートの標準モデルとして開発が進められている。

写真:展示されたドローン、ドローンポートの紹介パネル
開発中のドローンポートはパネルで紹介。カバーを開いた状態のサイズはW2550×D1000×H1000mm。ドローンはProdrone製。

 試作機は2025年6月、千葉県・幕張メッセで開催された「ジャパンドローン2025」で初公開され、最大400kgクラスの大型筐体が来場者の注目を集めた。現在は改良版の開発が進行中で、今回は現物展示こそなかったものの、連携先であるProdroneの機体がブースに展示され、ポートとの接続運用を想定した構成が紹介された。

災害対応ドローンポートの実績と防災応用の広がり

 VFRはこれまでも、ドローンポートの社会実装を段階的に進めてきた。
 2022年から宮城県仙台市で運用されている「津波避難広報ドローンポート」はその代表例だ。津波発生時に自動でドローンが離陸し、上空から避難を呼びかける仕組みで、ブースではその初稼働時の映像も上映された。

 会場となった愛知県を含む東海地方は、南海トラフ地震の影響による津波被害が懸念されており、沿岸自治体では5m以上の津波を想定した防災対策が急務とされ、近隣自治体では、こういった避難広報用ドローンポートの導入もひとつの手段として対応が求められている。

既製ポートとの比較展示――Autel「EVO Nest」

写真:ドローンポート「Autel EVO Nest」。ドローンがスタンバイしている。
ドローンポート「Autel EVO Nest」。機体のバッテリーを25分で急速充電できる。

 ブースでは、Autel Roboticsのドローンポート「EVO Nest」も併せて展示された。担当者によれば、「既成品として即導入可能なドローンポートを来場者に紹介する狙いで展示しました」と話し、ドラム式開閉機構を持つ独特のデザインが会場内でも一際目を引いた。

写真:カバーを閉じた「Autel EVO Nest」
Autel EVO Nestのカバーを閉じた状態。2人で持ち運びが可能なサイズ。


 VFRは、こうした既製ポートと自社開発ポートの双方を比較検証し、最適な運用・保守性の標準化を目指しているという。

愛知発「モビリティイノベーションプロジェクト」との連携

 愛知県では、次世代モビリティの社会実装を目的とした官民連携プロジェクト「あいちモビリティイノベーションプロジェクト」に取り組んでおり、その中核ビジョン「空と道がつながる愛知モデル2030」では、ドローンおよび空飛ぶクルマの開発・運用基盤整備を重点テーマに掲げている。

写真:SOTENバーチャルトレーナー
あいちモビリティイノベーションプロジェクトのブース内におけるVFRの展示。SOTENバーチャルトレーナーやLiberawareの「IBIS2」が展示された。


 VFRも同プロジェクトに参画しており、展示会ではその一画においてACSL、理経と共同開発したドローン操縦VRシミュレーター「SOTENバーチャルトレーナー」を出展した。このシステムは、ACSLの小型空撮ドローン「SOTEN」をPC上で仮想的に操縦できるパイロット訓練用のソフトウェアで、実機を使用せずに操縦訓練や操作スキルの評価が可能。教育機関や自治体職員の技能習得にも活用が期待されている。

 会場では実際にシミュレーター体験が提供され、筆者も操作を試みた。シナリオは「住宅火災の発生現場を空撮で確認する」というもの。実機で使用されるプロポ(送信機)を模したコントローラーを用い、離陸から火元上空までの飛行を操作した。微細なスティック入力にも即応し、建物2階付近まで精密な接近が可能だった一方で、画面上では認識しにくい電線に接触して墜落するケースもあり、現場では補助者との連携が不可欠であることを改めて実感させる内容だった。

 このようなリアルな訓練体験をPC上で再現できる点は、操縦者育成の効率化に大きく寄与する。特に、災害対応・公共インフラ点検など、現場再現性を重視する用途での導入が進むだろう。

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