製品開発支援を手がけるアークは、数年前から独自に開発しているドローン用ローターブレードを出展。親会社である三井化学の炭素繊維・ポリプロピレン複合材「TAFNEX」を使ったこのブレードを、2025年中の量産開始を見据えて、開発が最終段階にあるとしている。
飛散リスクを低減するTAFNEX製ブレードの特徴と安全性
工業デザインモデル製造で70年以上の歴史があるアークは、モビリティや家電、医療機器、ロボティクスといった産業分野の開発支援を行ってきた。2020年には総合化学メーカーの三井化学の完全子会社となり、新しい事業領域のひとつとしてドローン分野を位置づけ、ドローン用ローターブレード(プロペラ)の開発に取り組んでいる。
2023年に開催されたJapan Droneにおいて、三井化学の取り組みとして発表されていたこのローターブレードは、同社が手がける炭素繊維とポリプロピレン(PP)を複合化した一方向テープ(UDテープ)「TAFNEX」を使用しているのが特徴だ。一般的なローターブレードは熱硬化性樹脂であるCFRP(炭素繊維強化プラスチック)でできている。ドローンが墜落するなどしてブレードが破損した場合、飛び散った破片は硬く断面が鋭いため、周囲の人や構造物に刺さったり貫通したりする。一方、TAFNEXは炭素繊維に熱可塑性樹脂であるポリプロピレンを含浸させたものであり、比較的柔らかく、割れるようには壊れないため、破片が飛散しにくいという。
アークではおもに中~大型の物流用ドローンなどを対象に、24.2インチ、26.2インチ、28.2インチ、30.2インチという4種類のサイズのブレードをラインナップ。ブレードの形状はより低回転で推力が得られるように設計されていて、飛行中の電力消費を抑えることで、ドローンの飛行距離や時間に貢献するコンセプトとなっている。すでに一部の機体メーカーに対しては試験的に供給しており、同社のブースではこのブレードを装着したTKKワークスやエアロジーラボ(AGL)の機体も展示してあった。
アークでは早くからこのブレードを2025年にリリースするとしており、目下「量産のための準備を進めている」(説明員)段階だという。同社では「今後VTOL機も含めてドローンが人の頭の上を飛ぶようになると、万が一それが墜落したようなときに、ブレードが飛散して人に大きな危害を及ぼすようなことを防がなければならない。アークのブレードはこうした被害を低減する安全性の高いブレードであると同時に、日本製ということで今後ますます意識されるようになるサプライチェーンリスクも低減できる」(説明員)としている。
