精密小型モーターで世界的に大きなシェアを持つニデック。同社のブースでは、現在、製品としてラインナップしているモーターに加えて、開発中のESC一体型モーターや、ステーターとESCを2つ搭載して冗長性を持たせたモーターを展示。また、4月にリリースしたGaN(窒化ガリウム)パワー半導体を使用した小型ESCや、2026年1月に製品化を予定しているAIを搭載したESCもその機能を実際に動作させる形で展示していた。

中大型ドローン向けのESC一体型モーターを開発中

 ニデックのドローン用モーターは、国内ではリベラウェアの屋内挟所部点検用ドローンIBISシリーズに採用されており、海外ではSkydioのSkydio X10のモーターもニデック製であることがアナウンスされている。また、今春からオンエアされているニデックの企業CM「ニデックってなんなのさ? ドローン篇」では、Ziplineの固定翼ドローンが登場しており、同機のモーターもニデック製であることを示唆している。

写真:展示された3種類の小型ドローン用モーター
現在、製品として供給している小型ドローン用モーター。リベラウェアのIBIS用(左上)をはじめ、国内外のドローンに採用されている。

 こうしたドローンに搭載される小型のモーターだけでなく、ニデックでは中型、大型ドローン向けのモーターもラインナップしている。Japan Drone 2025の同社のブースでは、おもに中大型ドローン向けのモーターにESCを内蔵した開発中の製品を公開。モーターの筐体の中にESCを収めることで、効率よくESCとモーター間を配線できるだけでなく、効果的に放熱ができるようになるという。

写真:開放型標準モデル(ESC1枚内臓)モーターの上面、底面
内部にESCを搭載したモーター(開放型)。

 また、このESC一体型モーターは、内部のコイルが露出した開放型に加えて、防塵防滴性能を持たせた密閉型があり、密閉型については「冗長モデル」を公開。内部のステーターとESCを2組搭載することで、万が一、2組の内の1組が故障しても、モーターの出力こそ低下するものの動作を継続できるため、機体を着陸させることができるというものだ。今後、レベル4飛行のように人の頭上を飛ぶようなドローンには、高い安全性が求められるが、こうした機体への搭載を想定しているという。

写真:密閉型冗長モデル(ESC2枚内臓)、密閉型標準モデル(ESC1枚内臓)
ESCを内蔵した密閉型モーター。ESCとステーターを2組搭載した冗長モデル(左)もある。

AI内蔵ESCがみずから故障を診断する

 ESCでは4月にリリースした、次世代の半導体とされるGaN(窒化ガリウム)パワー半導体デバイスを搭載したドローン用の小型軽量ESCを展示。GaNパワー半導体は一般的なSi(シリコン)半導体に比べて電力損失が少なく、高周波特性に優れているのに加えて、動作時の発熱量が小さく、小型化や軽量化が可能。同社ではこの半導体を使うことで、従来比で3分の1という軽量化を実現している。

写真:中型ドローン用ESC
GaNパワー半導体を使った中型ドローン用ESC。重量は99g。
写真:ESC低出力モデル
100円玉程度のサイズの低出力モデル。重量は1個29g。

 さらにこのESCにはエッジAIを活用した状態推定機能を搭載。電流の変化をESCがとらえて異常を検知し、フライトコントローラーを介すことなくESC間で通信して協調するという冗長機能を持たせることができる。モーターの電流の変化から、プロペラやベアリングの破損といった異常を検知し、故障を予測することが可能だという。同社ではこのエッジAI搭載ESCを、2026年1月に製品化すると発表している。

エッジAI搭載ESCによる協調制御のデモンストレーション。左のモーターに異常が発生した場合、ESC同士が直接通信して、右のモーターの出力を上げるという制御を行う。


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