近年注目を集める「ドローン警備」、市場は2030年に300億円規模へ

 近年、治安の悪化や防犯意識の高まりを背景に、「ドローンを警備業務に活用したい」というニーズが高まっている。弊社(インプレス/ドローンジャーナル)が発行する「ドローンビジネス調査報告書2025」では、2024年度における防犯・警備分野でのドローン市場規模を111億円と推計しており、2030年度には300億円へと成長すると予測する。

 こうした市場の成長見通しを背景に、警備会社がドローンを活用した警備業務へ本格的に参入する動きも活発化している。その代表例が、セントラル警備保障(CSP)である。同社は、国内最大級のドローン展示会「Japan Drone 2025」において、OEM供給を受けた独自機体などを展示し、警備用ドローン事業への積極姿勢を打ち出した。

Autel Robotics「EVO MAX」をベースにセキュリティ対策、官公庁への採用を狙う

写真:展示された「CSP_EVO」
Autel Roboticsの「EVO MAX」をベースにした「CSP_EVO」。アーム展開時のサイズは562×651×147mm。最大離陸重量は1999g。

 CSPが開発を進める代表的な警備用ドローンが「CSP_EVO」だ。これは、Autel Robotics製の「EVO Max」をベースに、セキュリティ対策を大幅に強化したモデルである。官公庁など機密性の高い現場でも採用できるよう、以下のような機能を搭載している。

  • 映像データやLogデータを完全消去する機能
  • オフライン環境でのマップ確認やバージョンアップ機能
  • SDカードの暗号化

 これにより、情報漏えいなどのリスクを最小限に抑える設計となっている。

 同社の担当者は、国産ドローンに対する海外製ドローンの技術的な優位性とコストパフォーマンスの高さを認めつつも、「そのまま使用するとセキュリティ面にリスクが生じます。そこで、自社ブランドのCSPとしてセキュリティを強化し、メンテナンスも国内で完結する体制を整えることで、警備業務におけるリスクを軽減しています」と解説した。

「CSP_EVO」は、警備用ドローンとしてのスペックも非常に高い。

  • 8K対応の光学カメラ(光学10倍ズーム対応)
  • サーマルカメラ搭載
  • AIによる被写体の識別・追尾機能
  • 無風時の最大飛行時間約42分

 2025年5月30日から受注を開始しており、国土交通省のDIPS2.0システム上でも機体選択が可能になっている。こうした高性能な仕様により、夜間の監視や大規模施設の巡回警備など、さまざまなシーンでの活用が期待される。

有線給電装置「CSP_EVOテザー」で長時間監視を実現

写真:
CSP_EVOテザー。CSP_EVOの下にあるのがテザーケーブルユニットで、重量は18.5kg。家庭用電源に対応。

 また、CSP_EVOとセットで使用できる有線給電装置「CSP_EVOテザー」も展示されていた。このテザーケーブルは長さ30m未満で設計されており、航空法上の許可・承認が一部省略できる利点がある。

 CSP_EVOに接続することで長時間の定点監視が可能となり、「物見櫓」としての雑踏警備や警護、駐車場監視などへの活用を検討している。担当者は、「官公庁における業務など、重要な警備の際、バッテリー交換のために機体を降ろして監視が途切れる事態を避けなくてはいけません」と説明している。このように、業務によって有線給電の仕組みが必要不可欠な場合もある。

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テザーケーブルユニットと機体の接続状態。テザーケーブルユニットの大きさは470×365×190mm。

照明用係留型ドローン「CSP-D_Light530」も展示

 さらに、ポータブル係留型の照明用ドローン「CSP-D_Light530」も展示された。これは、サッカーコート1面以上を照射できる高出力照明を搭載し、ケーブル長30mの係留装置と一体化したモデルである。

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CSP-D_Light530。持ち運びが容易なので、照明車などが入れない場所で活用できる。

 海外の災害現場での実績もあり、消防関係からの問い合わせも寄せられている。夜間の捜索救助、災害現場の安全確保など、警備・防犯用途を超えた多用途での活用が見込まれる。

 CSP担当者は「ドローン警備が活用される時代は確実に到来すると見込んでいます。そのために先んじてドローン事業を立ち上げ、ノウハウを蓄積しています」と語る。将来的には国内メーカーとの協業によって、雨風にも強い専用ドローンの開発にも取り組む方針を示している。

 防犯・警備業界における人手不足やコスト削減、安全性向上といった課題を背景に、ドローン警備・防犯ドローンのニーズは今後ますます高まるだろう。警備業務の効率化・高度化を支える「ドローン活用」の最前線から、今後も目が離せない。

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