天候リスクなし、省スペース演出 屋内ドローンショーの魅力

 2024年、屋外ドローンショーが各地で盛り上がり、ドローンというテクノロジーが一般層にも広く認知された年となった。大規模なイベントや祭典、花火大会などで夜空を彩る演出は、多くの人に強い印象を残した。その一方で、静かに注目度を高めているのが「屋内ドローンショー」という分野である。

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まだ珍しい屋内ドローンショーの展示ということで人目を引いた。

 屋内ドローンショーは、屋外のように広い空域を確保する必要がなく、天候の影響も受けにくいという利点がある。ドローンの飛行計画や安全管理も、屋外に比べれば導入ハードルが低く、企業イベント、結婚式、自治体の式典など、屋内会場での新しい演出手法として引き合いが増加している。

 こうした屋内ドローンショー市場に、いち早く取り組んできたのが愛知県名古屋市のドローン企業ROBOZ(ロボッツ)である。同社は、屋内ショー用ドローン「Litebee Stars」を活用したソリューションを提供し、教育分野やエンターテインメント分野での可能性も追求している。

 同社の石田代表は、「屋内ドローンショーはまだ認知が進んでいない分野です。来場者からは『屋内でこんな演出ができるのか』と驚かれることが多くあります」と語る。実際、展示会では複数の引き合いがあり、機材販売の成約にもつながったという。石田代表は「競合を増やしていくことで認知を広げ、市場全体を育てたいです」とも述べ、「現在、屋内ドローンショーで使用できる技適(技術基準適合証明)を取得した機体は、Litebee Starsとレッドクリフが提供している機体の2種類しかありません。今後、海外メーカーの参入が増え、競争が活発になることで市場が活性化していくのではないかと考えています」と期待を寄せている。

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色とりどりに発光するLitebee Stars。寸法は202×202×80.5mm。重量は188g。
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Litebee Starsの紹介パネル。使用するアプリケーションについても説明されている。

50機同時飛行の実績と教育への導入

 ROBOZの屋内ドローンショーでは、最大50機を同時に飛行させた実績もあり、全国各地でイベント演出を手がけてきた。また、Litebee Starsを用いたプログラミング教育にも注力しており、高校や大学での授業を実施している。スポット授業ではなく、5回から15回程度の継続カリキュラムとして行われるのが特徴だ。石田代表は「高校生たちは単純にプログラムを組んで飛ばすだけだとすぐに飽きてしまいますが、ドローンでアニメーションを表現できることを聞くと懸命に取り組んでくれます。柔軟な発想力は、大人よりも優れたプログラムを生み出すことがあるのです」と語り、教育分野での手応えを強調する。

災害支援を見据えた物流実証実験 夜間・目視外・危険物輸送も成功

 なお、今回の展示会では紹介されなかったが、ROBOZは高度なドローン物流(物資輸送)にも取り組んでいる。2025年5月には、岐阜県恵那市上矢作町で夜間かつ目視外飛行に加え、危険物輸送も含む「レベル3.5飛行」に日本で初めて成功したという。

 この実験では、災害時に孤立した世帯へポータブルバッテリーを届けることを想定。到着後には、ドローン事業者以外が物資を取り出せる仕組みづくりも実現した。輸送には「DJI FlyCart 30」を使用したが、ペイロード(積載重量)30kgではポータブルバッテリー1個を運ぶのが限界であり、今後は高ペイロード機の導入を検討する必要がある。また、夜間飛行時の地上視認性を確保するため、独自開発した120,000lmのLEDサーチライトを搭載したが、こうした装備が今後も必要かどうかは航空局との調整課題だという。

 さらに、通信にはLTEを活用したものの、長距離通信の安定性や航続距離の検証も引き続き必要だ。ROBOZは今後も「ソリューションとしてのドローン」にこだわり、単なるビジネス利用にとどまらない、地域課題解決や災害対応など社会的意義のある取り組みを継続していく構えである。

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