写真:ozoraの展示ブース

 2025年6月4日から6日にかけて、千葉・幕張メッセで開催された日本最大級のドローン展示会「Japan Drone 2025」において、ドローンによる空撮事業を手がけるベンチャー企業ozoraは、プロ向けドローンシミュレーター「GlobeXplore Pro」を展示した。

21歳CEOが率いるドローンベンチャー「ozora」の挑戦

 ozoraは、2022年12月に設立された新進気鋭のスタートアップ企業である。創業メンバーは、通信制高校で同級生だった若者たちで構成されており、現在CEOを務める高橋 元氏はわずか21歳。ドローンによる空撮業務のほか、レース用のFPV(First Person View)ドローンの製作なども手がけている。

 同社は創業翌年の2023年5月に、ゲームソフトとして「GlobeXplore」をリリースした。このソフトは、Google Earthの地理データを活用し、世界中の都市や名所旧跡の上空を、あたかもドローンで飛行しているかのように体験できるシミュレーターとなっている。実際には法規制などで飛行が難しいエリアも、仮想空間で自由に飛ぶことが可能だ。

写真:「GlobeXplore Pro」で再現された上空視点の東京の夕日
「GlobeXplore Pro」の画面。東京上空の夕日など精密に再現されている。

世界を飛ぶドローンシミュレーター「GlobeXplore」で業務支援

「GlobeXplore」はゲーマーの間で一定の人気を博したが、一方でドローン業務に従事する事業者からは、「これを使えば実際の撮影ポイントを事前に確認できるのでは」といった声が寄せられていた。そうした要望を受け、ozoraは2025年2月、業務用途向けに機能を強化した「GlobeXplore Pro」を正式にリリースした。

 この「Pro」バージョンでは、Google Earthの地形データに加え、CADデータなど建築物の詳細データも読み込むことが可能。これにより、都市部や複雑な構造物の上空飛行を、よりリアルに再現できる。

 さらに、次のような高度なシミュレーション機能が備わっている。

  • 時間帯の指定:日の出・日の入り時間に応じた光の加減を確認可能。
  • 天候の設定:天候条件による視界や光線変化を再現。
  • 使用機種の選択:DJI製ドローンをはじめとする機種を選択し、実際の画角を確認。
  • 第三者視点モード:ドローンの視点だけでなく、周囲の障害物などを外部視点で確認可能。

 こうした機能により、撮影前のリハーサルやロケ地の選定、飛行計画の策定など、従来は現地に行かないと判断できなかった工程を、すべてPC上でシミュレートできるようになる。

必要なだけ使える!プロユースにも対応した料金体系

「GlobeXplore Pro」には2種類の料金プランが用意されている:

  • スタンダードプラン(月額制):税込4万9,500円/月
  • ライトプラン(従量制):税込5,500円/72時間

 プロの映像制作会社や測量会社など、継続的に利用するユーザーにはサブスクリプションが、スポット利用の個人ユーザーには従量制プランが選ばれている。

何度も試せる試験飛行、“飛ばずに見える”次世代のドローン運用

 ozoraのCEO・高橋氏は次のように語る。

写真:高橋氏
同社CEOの高橋 元氏。

「日本ではドローンに関する規制が年々厳しくなっており、とくに都市部では、撮影前にリハーサル飛行を繰り返すことが難しくなっています。GlobeXplore Proを使えば、実際に飛ばさなくても飛行コースや光の加減、画角などを詳細に確認できます。多くのドローンユーザーにとって、これが“標準的なツール”になっていけたらと考えています」

 ドローンの法規制が厳しさを増す中、「仮想空間でのリアルな事前確認」というアプローチは、多くの映像制作・測量・建設現場において新しい標準となる可能性を秘めており、ドローンに問われている安全な運用にもつながる。若き起業家とその仲間たちが生み出したこのツールが、今後どのように進化し、業界を変えていくのか注目が集まる。

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