2025年6月17日、Terra Drone(以下、テラドローン)は、三井海洋開発とFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)の原油貯蔵タンク内部の非破壊検査を目的とした「Terra UTドローン」に関する共同研究開発契約の更新に合意したと発表した。
2024年に両社が締結した共同研究開発契約に基づき、測定精度向上・安全性強化・作業時間短縮等で成果があったことを受け、さらなる技術の実用化と運用拡大を目指す。
FPSOでは、定められた乗船人数の中で生産作業と並行して検査を行う必要があり、ドローンを活用することで新たに作業員を乗船させずに点検や検査を実施できる。
FPSOでは、20年以上の長期間にわたり原油・ガス生産を行うため、日常的な保守点検・検査が求められる。構造物の高所や閉鎖空間の人力での検査作業は、労働安全環境上の懸念事項であり、業界全体の共通課題となっている。そのため、原油貯蔵タンク内の検査作業を完全にドローンに代替することを目標として共同研究開発を進めてきた。
Terra UTドローンは、鋼製のタンク内壁の板厚を非破壊で測定するための産業用ドローン。搭載した超音波センサーからの超音波の反射波を解析することで、腐食状況や減肉を定量的に評価する。原油貯蔵タンク内壁の固着した砂等の不純物や油分などを測定前にケレンブラシで清掃して測定面を整え、検査用ジェルを塗布し、センサーをタンク内壁に接触させて測定を行う。
ブラジル沖合のFPSOにおけるTerra UTドローンを用いた検査技術の開発では、原油貯蔵タンクの板厚計測の作業時間短縮と安全性向上を達成した。
両社は、2023年度に技術連携に向けた覚書(MOU)を締結。2024年度には覚書に基づき共同研究開発契約を締結し、その成果が評価されたことを受け、2025年度に契約を更新した。
2024年度の技術成果
- 超音波センサーの改良による測定精度の向上
- ガス検知器の搭載による点検作業の安全性強化
- ケレンブラシの高性能化により、不純物や油分(ワックス)の除去効率が向上し、最大で従来の10倍以上の検査作業を同じ時間内に実現
- 有線ケーブルによる常時給電の実現により、バッテリー交換が不要となり、検査中のドローンの着陸回数を従来の10分1に削減
2025年度の開発テーマ
① 機体構造・設計の最適化
世界各地での展開を見据えた堅牢性・運用安定性の向上。
- 高解像度カメラの搭載による目視点検機能の強化
- メンテナンス性を考慮した機体設計の見直し
- 有線ケーブルの高耐久化による堅牢性向上、ケーブル延長による巨大タンクへの適応拡大
- 有線ケーブルシステムの防爆対応推進による安全性の強化
- 航空輸送に対応した機体設計によるグローバル展開の促進
② 新たな計測技術の開発
検査用ジェルを必要としない計測方式の導入を通じて作業効率を向上。
